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縦式での原稿作成・入稿時の(技術面での)Tips

この記事のターゲット:
・縦式を使って小説原稿作成してる人
・同人誌として印刷所に入稿する予定がある人
・入稿データ作成時に、なんらかの技術的トラブルに遭った人

縦式ってとっても優秀なアプリなんで、原稿作成で困る事ってそうそう無い
なーんも考えなくても、文字打って適当に設定すりゃ、PDF出力できて入稿できちゃう
でも、お困りごとがある人もいると思うので、備忘録も兼ねてTipとして残しておきます
今回は、特に技術面でのお困りごとに特化した記事となります
縦式ユーザーの誰かのお役に立てれば幸いです
※随時追加していくかも


ttfフォント使うなよ!

縦式のマニュアルにも以下のように書かれています
ちょっと気づきにくいのですが

ヒント:TTFのフォントではPDFファイルへの埋め込み時のエンコーディングがビルトインやRomanになることがありますので、なるべくOTFのフォントをご利用ください。

縦式のマニュアル
https://gidget.cocolog-nifty.com/tateshiki1966/2019/10/post-df90c4.html

ttfフォントis何?

フォントファイルの形式の一つ。正式名称TrueType
雑に説明すると、otf(OpenType)より古い形式です
詳しくはフォントのプロが丁寧に書いてくれています
ありがとうデザポケさん!フォント買うときお世話になってます!!

我々は縦式を使ってPDF原稿を作成し、印刷所に入稿したい
これはいわゆるDTP(デスクトップパブリッシング)ですので、ttfファイルは適さず、otfファイルを使うべきです
もしサブスクではなくフォントを買う場合は、otf形式を購入しましょう

ttfファイルを使っちゃったらどうなる…!?

縦式マニュアルの警告を無視し、あるいは何も知らずにttfフォントを使ってしまった場合はどうなるんでしょう?
一応、縦式ではttfファイルを読み込んで使うこともできるので、試しに使ってみました!
フォントは「解星オプティ(Kaisei Opti)」
GoogleFontsで配布されてて誰でも使える、めちゃ可愛いフォントです
小説本文にはやめた方がいいですが、タイトルには向いてる

ダウンロードして解凍したら、ttfファイルが出てきますので、これを縦式の
設定画面>ユーザーフォント>「+」をタップして「Kaisei Optiミディアム」を選択してみます

縦式に「解星オプティ」ttfファイルを読み込み
縦式の本文で「解星オプティ」を使用し、出力でも同じく「解星オプティ」にしてみたところ

出力したPDFファイルを、AdobeAcrobatで開いて、プロパティを見てみます
※Acrobatのプロパティ画面は、PC(Win/Mac)からしか参照できません。iPadでは見られないのであしからず

エンコーディング「Roman」「ビルトイン」になっています

フォントのプロパティ画面で、文字が埋め込まれているのが確認できるのですが、よく見るとエンコーディングが「Roman」とか「ビルトイン」になっています
これが何を意味するのかというと、印刷段階で文字化けする可能性がある、ということです!
参考:緑陽社さんのサイト

実は、フォントが埋め込まれていて画面上の表示は正しくても、印刷の際に文字化けなどが起こる…ということも稀に発生します。

これは埋め込まれたフォントの「エンコーディング」が原因の場合が多いです。
エンコーディングが「ビルトイン」になっている場合、高い確立で印刷時に文字化けが起こります。

(2)フォントの「エンコーディング」も要チェック

え、なんでこれでダメなん…?ちゃんと表示されてるのに!と疑問に思った場合は、以下のページをご覧ください
ちょっと難しいかもしれませんが、原稿のPDF作成、フォント周り等について、知っておくべきことが記載されています

この問題は、otf形式のフォントファイルを使う場合は発生しません
本文だけじゃなく、ヘッダー・フッターでも見出しでも、縦式内のあらゆるフォント指定箇所で、ttfを選択しないようにしましょう
いっそ、縦式ではそもそもttfをユーザーフォントとして読み込まないのが、トラブル回避になると思います
緑陽社さんでも、「まれに発生する」とおっしゃってるので、ttfを使っても問題にならないこともあると思いますが、自己責任でどうぞ

※同人小説でよく使われてる源暎こぶり明朝も配布はttf形式です。自分は縦式で源暎こぶり使って入稿したことないので何とも言えんですが、大丈夫なんじゃないかなと思ってる(縦式&源暎こぶり明朝で問題になった話を聞いたことが無いんで)
ただまあ、若干のリスクはあるよってのは頭の片隅に入れておくとよいかもです

※自分が過去の記事で、何度も「有償、プロユースのフォントを使え」と述べてるのは、この辺の事情もあってのことです
今時、プロユース(本文用)有償フォントはほぼotf形式なのですが、個人制作のだとttfもまだまだある
もちろんotfならすべて解決!って話でもないのですが、ttfより新しく、より多くのことが考慮されてプロも使ってるotf形式なら、妙な問題も起きにくいだろう…という楽観的な推測もあります

余談ですが、縦式でもPDF出力せず、画像書き出し(jpgやpng)する場合は何の問題にもなりません
なぜなら、フォントを埋め込みせずに画像化してしまうからです
たとえばクリスタ他の画像編集ソフトでは、画像形式で書き出す分には、ttfだろうがotfだろうが関係ありません
入稿用に、どーーーーしてもttfの可愛いフォントを使いたい!という場合は、そこだけ画像書き出しのページにして、あとでPDFを結合する等の工夫をすればよいと思います
(それはそれで、解像度だったり画像自体のサイズだったり、付随する問題を解消しないといけないのですが)
アプリや環境の進化でいろんな事が楽になりましたが、同人原稿作成には、地味〜な知識と工夫の積み重ねが必要なんだ…
ノーミス同人原稿を作成するには、内容や本質的には、業務レベルに値する印刷知識が必要なので

縦式の禁則処理、ちゃんと設定しとけ!

直近の失敗なのですが…

あ、アワー!!! 行頭に来てはイカン文字が!! なぜ気づかなかったし…

まずは皆様、禁則処理って言葉、ご存じでしょうか?
文を書く人間には基本中の基本なのですが、
・最近文章書き始めました!
・同人誌作ってみたいけど、よく分かんなくて…
こんな方もいると思うので、まずは禁則処理の説明から(プロにお任せ)

文章の行の頭や、行の最後に来てはいけない文字というものがあり、それをアプリ側で勝手に調整しといてあげるよ!という機能が禁則処理です
んで、アプリ側で調整するにしても、どの文字を調整するかは事前に設定しておく必要がある…のですが
その設定をちゃんとやってないと、上記画像のようなことが起きるわけです…グヌヌ
このへんの禁則処理、Wordとか一太郎、InDesignでは、デフォルト設定されてたり、自在に追加・修正できます
特にInDesignは、Word・一太郎と違って組版ソフトなので、それが本業
一方、我らが縦式ですが、禁則処理はカスタムする余地がほぼなく、アプリ側でよしなにやってくれています

禁則処理をオンにしていると、色々やってくれる

設定項目はあるものの、行末句読点のぶら下げ設定くらいしかできない

普段縦式で設定している、行末ぶら下げ句読点

んで、自分は縦式が勝手にやってくれてる禁則処理におまかせにしてて、あんまりちゃんと設定してなかったんですよねぇ…
自力校正(校閲)も何周かしたのですが、人間のやることなのでどこかにミスは起こる
ということで、縦式の設定を以下のように変更しました

「々」をぶら下げに追加

上記のように設定すると、縦式のアプリ内でも以下のように、「々」がぶら下げられた状態になります(PDF出力したときもこうなる)

「々」がぶら下げられた状態

本当はぶら下げるよりは、本文自体を調整して次の行に「追い出し」するか、前の行に「追い込み」するのが望ましいのですが…
分かれちゃいけないものが分かれるよりは、ぶら下がった方が校正時に気づくか、気づかなくても最悪ちゃんと印刷はされるので
この辺の調整は、お好みでされるとよいと思います
行頭禁則文字の設定例については、以下のサイトが参考になります

Quartz問題

Windowsでは起きず、MacOS、iPadOS、iOSで起きる問題のうちの一つに、Quartzの不具合があります
Quartzは、Apple系OSでのPDF書き出しに利用される、OS自体に備わった描画系の機能(つーかコアエンジン)
なので、この機能を使ってアプリ実装している場合(大体のApple系のアプリは)、PDFはQuartzで書き出されることになるかと
Adobeみたいに自前の描画機能がある場合は違うだろうけど
あと、iPadでクリスタEXからpdf書き出しした場合は、クリスタのpdfエクスポートプラグインを使ってる旨の記述が出る
セルシスはQuartzは使わず、自前でpdf描画実装してる模様

多分、ふつーに同人誌用の原稿を作ってるときには気にもしないと思います

縦式で出力したPDFのプロパティ。Quartzで生成されたPDFであることがわかる

んですが、このQuartzには従前から「不要なオブジェクトが出る、特定のオブジェクトが消える」等の問題が起きることがあります
毎回じゃなく、特定の条件を満たすと発生する不具合です

同人印刷所からも注意喚起が出ています
・緑陽社さん

<注意>
MacOSの機能「Quartz」でプリントアウトダイアログから出力される印刷用のPDFデータ画像の場合、
お客様の意図しない変化をする場合がございます。
(テキストボックスやワードアートを使用して文字やオブジェクトを入れるなど)・あるはずの画像が無くなる
・不要なオブジェクトが出現する
・文字が表示されない

PDF原稿の確認について

・プリントオンさん

・大陽出版さん

他にも警告を出してる同人印刷所さんは結構いっぱいある…

原因はある程度わかってます
一番最初に掲載したSCREENのサイトに書いてあるのですが、以下の通り

■結論
・特定の記述パターンの不具合の修正
この透明が特定の記述パターンの場合に発生するAdobe PDF Print Engineの不具合(後述)については、現在修正方法を検討中です。進捗がありましたら、このサイトでお知らせ致します。

<2016年6月10日追記>
このAdobe PDF Print Engineの不具合については、修正が完了していますが、以下の留意事項は依然注意が必要です。

・留意事項
ただし、Office系やOS依存系のPDFデータにつきましては、この不具合の有無に関わらず、以下の様な様々な理由により、積極的な推奨はできない状況であり、その運用には十分な注意が必要です。

■原因

これらの機能を用いて出力されるPDFでは、透明を活きた状態で出力する事が可能ですが、その透明が特定の記述パターンの場合に、Adobe PDF Print Engineの不具合発生の条件に合致するケースがあることが分かりました。

IllustratorやInDesignなどだけで作成されたデータには該当する記述パターンは出力されず、問題は発生しません。

PDFMakerやQuartzのデータにその特定の記述パターンが含まれていると、透明オブジェクトに関係するオブジェクトの描画に不正が発生し、不要なオブジェクトが現れたり、必要なオブジェクトが消えたように見える問題が発生します。

この様なデータは、IllustratorやInDesignに貼っても再解釈されず、そのまま出力されるので、同様の問題が発生します。

(今回のトラブルのデータは、Adobeアプリケーションだけでは生成されないデータですが、PDFの規格上は間違った記述にはなっていないので、結果不正が出るのはRIPの不具合です)

2015年07月24日 | Office系でのPDFMakerとMac OS XのQuartzに注意

※注釈:RIPとは、Raster Image Processer(ラスターイメージプロセッサ)で、雑に言うと印刷のための画像化処理のことです

問題としては毎度起きるものではないのですが、印刷所さんはある程度印刷物に責任を負う立場なので(同人誌って完全原稿が前提だから、本質的にはユーザーの責任なんですが)、念のために警告を出されているのかなと

じゃあどうすればいいの?

前述のSCREENのサイトに、全部書いてあるのですが…

Macで原稿作成する人、縦式を使う人は、原稿作成時に以下の項目に気をつけるとよいと思います
・WindowsやAndroid環境で、PDF閲覧して確認する(ようはMac系列のOS以外で見てみる)
・ネップリなどで印刷してみる
・そもそもPDF作成時に、透明オブジェクトがある画像(psd、png等の透明オブジェクトを含んだ上で保存できる形式)を読み込まない
いっそ画像ファイル自体を使わない、というのも手。縦式で小説のPDFを出力するだけなら、挿絵やスタンプを使わなければ画像を使うことはないので、問題にならないはず
・最終的にはAdobeのソフト(AcrobatPro)でPDF出力する

自分は縦式で挿絵やスタンプを使った入稿用の原稿を作ったことが無いので、この問題に行き当たったことはないです
縦式を使って小説を刷るときの印刷所は
・ちょ古っ都製本工房様
・コミックモール様
・RED TRAIN様
にお世話になったことがありますが、縦式で作成したPDFで問題が出たことナシ、できあがりの本にも問題ナシです
※厳密に言うと、縦式で出力したPDFに、GoodNotesでQRコード画像(png)を付加してPDF保存し印刷したことはあります。もちろん無問題
漫画の同人誌を作るときは、iPad+クリスタで、これも問題が起こったことナシ
Quartzについては、印刷所のFAQではたまに目にするので、Tipsに付け加えてみました
ただ、実際にこの問題にぶち当たった人、見たことないんだよなー。正直、言うほど問題になってるとは思えないんだけど
トラブルに行き当たったのは、印刷所のオペレーターさんか、問題原稿作っちゃった人だけだろうし
詳細なトラブル体験談があればコメントほしいです

<2025/02/27追記、2025/03/01修正>クリスタEXを使ったQuartz問題回避方法

iPadのクリスタEXでPDF読み込み、書き出しを行ったら、Quartzでの出力ではなくなります
手順は以下の通りです
1. 縦式で原稿作成し、PDF出力する(この時点ではQuartz出力)
2. iPadのクリスタEXで、1で作成したPDFを開く(600dpi指定)
3. クリスタで出力形式をPDFにして保存する
4. WindowsもしくはMacのAdobe Acrobat Readerで、3で出力したPDFのプロパティを開く
5. 以下の画像のように、
 PDF変換: CLIP STUDIO PAINT EX ExportPDFX Plugin
になっていることを確認する

縦式で出力したPDFを、iPadのクリスタEXで読み込み、そのまま何も変更せずPDF書き出しを行ったときのプロパティ
「フォント」タブは空っぽになっています(フォントが画像化されたため)

クリスタを噛ませた時点で、PDFがラスタライズ(画像化)されるようです
その後、クリスタEXからPDF書き出しを行うと、フォントの埋め込みがなくなり、全ページ画像化されたPDFができあがります
画像化されているため、おそらく印刷所に入稿しても問題ないと思います

クリスタでのPDFの読み込み開始から書き出し完了まで、所要時間は12分でした
使用したiPadのスペックは、iPad Air(M2)2024年モデル
PDFは、画像のプロパティ通り530ページ
元々のPDF内では、挿絵・スタンプ・絵文字などの画像要素は使っていません

ファイルサイズは、縦式での書き出し時の7.9MBから230.75MBへと、大幅に増えていますが、Quartzでの書き出しではなくなるのはある程度メリットがあるのではないでしょうか?
530ページのPDFを開いて保存し直すのに12分程度なので、じゅうぶん実用に耐えうる気がします
ただ、iPad Air(M2)って、2025年2月末時点ではそこそこ良いスペックなので、これ以上のスペックのiPad Pro(M4)はともかく、スペックが落ちる(通常のiPad10世代とか)と所要時間が増えると思います

今試してみただけで、この形式で入稿はしたことないので、印刷所でどう判断されるかはなんとも言えませんが…
画像化されてるんで、原理的には問題ないはず
誰か、Quartz出力で警告出してる同人印刷所での入稿、試してみてくれません?
(自分でやりなよ)

もし、他にも縦式のお困りごとがあるかたがいらっしゃいましたら、お気軽にコメントください
同人小説、楽しくトラブルなく原稿作成するためのノウハウは、積み重ねて共有して損はないと思うので!

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