夏を爽快に楽しむためのTシャツ!HOFI-017 エジプト超長綿ハイツイストTシャツ- 素材編-
さて、今回ご紹介しますのは先週発売いたしました新商品HOFI-017 エジプト超長綿 ハイツイストTシャツです。
カラーはベージュとブラックの2色、サイズはSS,S,M,L,2Lの5サイズ。価格は税込¥8,250です。
2年ほど前のこと。
うちのTシャツの生地を編んでくれている業者さんから
「残糸でめっちゃ良い糸を持ってるんですけど、良かったらこれで何か作ってみませんか?」
というお話を頂きました。
残糸というのはアパレルメーカーが商品を生産したときに残る糸で、数トンあったり数十キロだったり、生成りだったり染まっていたりと状況によって残り方は様々です。
今回は約400kg弱の生成りの糸が残っていました。その量なら自社のTシャツ企画にちょうど良いと思ったので一先ず糸を見せてもらったところ、これがほんとにめちゃくちゃ良い。
素材自体の自然な艶、シャリシャリした肌触りなのにしっとりとした柔らかさもある。長年糸屋をやっているので超長綿の強撚糸だということはすぐに分かりました。
糸が残った経緯を業者さんに聞いてみると、とある国内紡績メーカーさんの最上級ラインが廃番になり工場内に残ったものだとのことでした。
紡績メーカーさんの名前はここには書けないのですが、私自身もそのメーカーさんをよく知っていたので「これは良い出物だな」と判断して全量購入しました。
良い素材が手に入ったし、せっかくならこの素材を生かす企画をじっくり考えよう!ということでデザインのアイデアを練るところから生地の試作やTシャツの試作を繰り返しているうちに、なんと2年も経過してしまいました。笑
ということで満を持して発売しましたHOFI-017 エジプト超長綿 ハイツイストTシャツについて、相変わらずめちゃめちゃ掘り下げてご説明したいと思います。
今回は素材編
品名には「エジプト超長綿」としていますが、具体的にはギザコットンという種類になります。ギザコットンとはエジプトのギザ地方で栽培される綿花で、エジプト北部のナイル川流域に位置するギザ地方はナイル川がもたらす肥沃な土壌や湿度・気温など綿花の栽培に非常に適した土地です。
そこで収穫されるコットンの中でもエジプト綿協会によって商標使用が認められた品種が「ギザコットン」として市場で取引されます。
国際政府間団体であるICAC(国際綿花諮問委員会)によって繊維長が35mmを越えるコットンは超長綿とされており、今回使用している糸の原綿はギザコットンの中でもその超長綿を使用しています。
さて、
真にマニアックなお話はここからです。笑
ただのエジプト超長綿とかギザコットンならば世の中に山ほどありますが、この糸にはちょっと特殊な撚糸の技術が加わっています。
技術その1 ボイル糸
ボイル糸というのは左回転に紡績された糸を2本合わせてさらに左回転に撚り合わせるという撚糸方法で、撚りが左+左に足し算されて強められるので強撚糸という分類に入ります。(ちなみに品番の「ハイツイスト」というのは強撚の英語訳です。)
撚りを強く入れるほど糸は硬くなり肌触りはドライでサラサラになりますが、普通の繊維だと撚りを沢山入れることに糸が耐えられず糸自体が切れてしまいます。
ボイル糸は繊維が長く上質な超長綿という原料だからこそ出来る糸なのです。
技術その2 SS撚り
元々のボイル糸が割と細番手だったので私たちは4本撚糸して使うことにしました。と言っても4本をそのまま束ねて撚り合わせると糸は綺麗になりません。糸の断面を想像してもらえると有難いですが、4本の糸が四つ葉のクローバーみたいに均等に並ぶこともあれば、ハンドスピナーみたいに1本が中に入ってしまうこともあるからです。
糸を綺麗に仕上げるために今回はまず2本撚り合わせてその糸をさらに2本撚り合わせて合計4本にしています。わざわざ工程を2段階にすることで糸は均一に仕上がり、とても綺麗な生地を作ることが出来ます。
今回はその2段階の撚糸を両方とも右回転に撚る「SS撚り」という方法を採用しました。普通の糸なら最初を右回転にして2回目を左回転にするのが一般的ですが、ボイル糸の場合その方法だと糸が非常に硬くなってしまい、風合いを損なってしまうので今回はSS撚りを採用しています。SS撚りにすると糸全体に右回転の撚り目が入るので、糸表面が綺麗に仕上がるというメリットもあります。
ということで、手間を惜しまず2回撚る、しかもそれをSS撚りにすることによって綺麗な生地にしているわけです。
技術その3 ゼロトルク撚糸
SS撚りにするというだけではまだ不十分です。
撚るときに糸のよじれを止めることで何度洗っても型崩れしないようにしてあげなければいけません。そのために必要な技術がゼロトルク撚糸です。
ゼロトルク撚糸についてはこのnoteや東大阪繊維研究所ブログでも散々書いているのでここでは簡単に説明しますが、左回転の撚りで紡績された糸を2本以上合わせて右回転に撚り、回転によるねじれの力(トルク)を左と右で相殺してゼロにするという撚糸方法です。
SS撚りという方法で撚糸するときにももちろんこの考え方でやってます。ボイル糸の左トルクをSS撚りの1回目で半分相殺して、2回目で完全に止めるということになるのですが、書くのは簡単でもやるのはめっちゃ難しいです。
ともかく、ゼロトルク撚糸で何度洗っても型崩れの心配なし!ということだけ分かっていただければ有難いです。
この糸のさらに凄いところ。
途中サラッと書きましたが、この糸は4本撚ってちょうど良い太さにしてます。ということは元々の糸がめっちゃ細いわけですね。
そもそもボイル糸がすでに2本撚り合わさっているのをさらに2本撚り合わせてそれをまた2本撚り合わせているので、大元からいうと8本撚り合わせていることになります。
それでは元々はいったい何番手なんだ?といいますと、これが綿番手110番という極細糸なのです。
ジーパンの糸が10番くらい。タオルは20番くらい。普通のTシャツで30番、薄手のTシャツで40番あたりが良く使われています。それに対して今回の糸は110番。綿番手は数字が大きいほど糸が細くなるので、一般的なTシャツに使われる糸の3分の1くらいの細さの糸を使っています。
このnoteの初期にも書きましたが、めちゃくちゃ高品質な原綿じゃないと綿番手80番以上の糸は紡績出来ません。なので110番のこの糸は必然的に最上級の素材を使用しているということが言えます。
しかし東大阪繊維研究所としてはその素材を贅沢に味わっていただきたいので、あえて肉厚の生地にするために8本撚り合わせで使うことにしました。
なので今回の生地は8.7オンスあります。
うちの定番品に「HOFI-008 インド超長綿タック襟Tシャツ」というのがありまして、こちらが8.5オンスなのでこれよりも若干オンス数が多いです。
ただ、強撚糸を使うと生地が締まる分、厚み自体はHOFI-008よりも薄く仕上がっています。
生地のオンスというのはあくまでも単位面積当たりの重さのことなので、触った感じはそれほど分厚くないんですが、ぎゅっと詰まっている分オンス数がしっかりあって丈夫な生地に仕上がっているわけです。
ということで、「HOFI-017インド超長綿ハイツイストTシャツ」の素材の特徴をまとめます
エジプト産の超長綿「ギザコットン」の艶と柔らかさ
ボイル糸なので肌触りサラサラ
SS撚りで均一で綺麗な生地を実現
ゼロトルク撚糸で型崩れしない
8.7オンスの頑丈な生地
けれどもそれほど厚みを感じさせず涼しさもばっちり
ということで夏を爽快に楽しむTシャツ「HOFI-017エジプト超長綿ハイツイストTシャツ」の説明、素材編でした。
長々とスンマセンでした。。。
次回はデザイン編です。デザイン編の説明はこんなに長くならないです。笑