良いTシャツは良い糸がないと作れません。-冬にリネンを着るにはどうしたらよいか、ということを考えに考えて作ったロンT- その3.リネン素材編
新商品「HOFI-016 リネンウールモンスターオンス 長袖Tシャツ」についてひたすら説明するシリーズ、3回目は使用素材について書きたいと思います。
前回は生地についてリネンが表にウールが裏に使われていますよということを書きました。
今回はそのリネンについて書きます。
今回使用しているリネン糸にはフランスのノルマンディ地方の企業テレデラン社から供給されるフラックス原料を使用しています。
フラックスというのはリネン糸の原料になっている植物の名前で、リネンという名詞はあくまでも糸として紡績された後の状態(生地や製品など)に与えられるものです。
なので、実は「フラックスという植物でリネン糸を作る」というのが正しい言い方で、リネンという植物があるわけではないです。
しかし今回はそのあたりの細かい話は割愛します。
このフラックスを栽培しているのがフランスのテレデラン社で、これはノルマンディ地方のフラックス農家が数件集まって共同経営している企業体です。
テレデランをフランス語で表記するとTerre de Linで「リネンの大地」というような意味になります。
自分たちが育てた農作物にプライドを持っていて、それをブランディングするために共同経営会社を運営しているわけです。
私たちのTシャツにはそのテレデラン社が提供するフラックス原料の中でも一等亜麻正線(いっとうあましょうせん)という最も上質とされる部位だけを使って紡績された糸を使っています。
一等があるからには二等もありまして、二等亜麻は一等に比べて繊維が粗く、太い糸を作るための原料だと思ってもらえば良いです。
その下にはさらに繊維の粗い再用綿とか落ち綿とか呼ばれるものがあり、こちらはコットンやポリエステルとブレンドして使われることが多いです。
このようにいくつかのランクがある中で一番繊維が細くて長く質の高い原料が一等亜麻で、肌の敏感さにもよりますが一等亜麻を使えばチクチクしない糸が出来ます。
そのフラックスを中国に持ち込んでリネン糸に紡績しています。
中国製は品質が低いと想像する人もいまだにいますが、リネン糸の紡績に関して後発である中国には最新の設備を導入しているメーカーも多く、高品質なリネン糸を製造している企業が多数あります。
特に上質なリネン糸を紡績するために必要な潤紡績(ウェットスピニング)について日本国内にはもう設備がありません。(潤紡績って何?という人はこちらを読んでみて下さい。)
潤紡績(ウェットスピニング)は毛羽を抑えてリネンに光沢とドライな肌触りを与えるために必要な紡績設備です。
かつては旧帝国製麻(今の帝国繊維)が北海道に設備を保有していましたが、今は全く残っておらず、潤紡績のリネンについてはほぼ中国の独壇場のようになっています。
なので、世の中にある「フレンチリネン」のほとんどが中国で紡績されていて、一番最初に書いたルールを元に言い直せば本来は「フレンチフラックスを使用したチャイナリネンた糸」と表記すべきものだったりします。
これについても言いたいことは山ほどありますが、ここではやめときます。
それはともかく、
当社ではテレデラン社の上質な一等亜麻原料を中国の最新設備で紡績した綺麗なリネン糸を輸入し、日本国内で染色+撚糸して糸を仕上げています。
今回はその糸を2色撚り合わせた「杢撚り」という方法で糸を作っています。
この写真では少し分かりにくいかもしれませんが、グリーンの色目は実は濃いグリーンとネイビーを掛け合わせた色になっています。
赤丸で囲ったこの2色を撚り合わせています。
その他ブルー、ブラウン、グレーもそれぞれリネン自体が杢撚りになっていて、なおかつ裏に編まれている別色のウールが表側に少し出てくるので、結果的に表面には3色の要素が霜降り調に混ざり合います。
これによって深みのある色の表現が出来るのです。
そして最後にサラッと書きますが、このリネン糸はよじれを止める「ゼロトルク®撚糸」という技術で水洗いした時の製品の型崩れを防いでいます。
ということで、
今回のロンTに使用しているリネン糸についてまとめるとこんな感じです。
フランス産の一等亜麻原料を使用しています
潤紡績の糸なので毛羽が少なく光沢があります
2色の杢撚りでメランジトーンを出しています
ゼロトルク撚糸で型崩れを防ぎます
上質な原料と確かな技術で良い糸を作っているから良いTシャツが出来上がるということです。
今回はリネン糸のお話しを書きました。
次回は生地の裏側に使われているウールについて書きたいと思います。