自由なニンジャ生成─krita-ai-diffusionを用いてTRPG用画像を作る方法─
※この記事は主に、ニンジャスレイヤーTRPGで補助的に使う様々なニンジャの画像を、AIを使って簡便に生成することについて記しています。画像生成AIとその使用に関する是非については触れず、良識ある利用を前提に書かれています。
ニンジャスレイヤーTRPGでは、原作と同様かそれ以上に、様々なニンジャが登場する。ニンジャは超常的なジツのほか、ドライまたはウェットなサイバネの埋め込みなどにより、その身体的特徴が人間から際限なく逸脱していく可能性があり、そのような超人的なプレイ・キャラクターを創造するための豊富なオプションが、実利あるステータス補正とともにプレイヤーに解放されているためである。
要するに、自由に創造したニンジャのビジュアルイメージ再現は困難を極める。もちろん、キャラクター画像なしでもこのゲームは全く問題なく遊べる。オンラインプレイであれば、ダイスbot入りDiscordサーバーのテキストチャンネルとGoogleスプレッドシートさえあれば遊ぶことができ、これは昨今のリッチなココフォリア・ルームが要求されがちなTRPGシーンとは対象的なミニマルさであり、それが長所のひとつでもある。しかしながら、一目でキャラクターの特徴を掴むことができるニンジャ画像があれば、それは確実にTRPGセッションを彩ることに繋がるだろう。
この記事では、筆者が多数のニンジャを作るために使用し、それなりにこなれてきた感のあるkrita-ai-diffusionの使い方を紹介する。なお、これはニンジャ画像を作るための簡単な実例紹介であって、ちゃんとしたハウツー記事ではない。調べれば色々出てくるので、技術的な部分については各自調べていただきたい。
筆者は下記とその関連記事を用いて環境を構築した。正直ここが一番大仕事なので、記事を読んで真似したくなったら、なんとか気合を入れてやってみてほしい。
◆krita-ai-diffusionとは◆
無料お絵かきアプリ「Krita」に画像生成AI「Stable Diffusion」を組み込むプラグインである。生成画像はStable Diffusionの規約が適用されるため、比較的自由な利用が可能であると思われる(詳細はその時々、個々人で確認しましょう)。出来ることは大まかには次の通り。
自機の処理能力を使って画像生成(インターネット接続は必要?)
自由な画像サイズで無料・無制限な画像生成
下描きを元にした画像生成
ラフ画をリアルタイムで変換するリアルタイム画像生成
4番もすごい機能なのだが、私は試せていないのでこの記事では割愛する。
まず、1番と2番について。昨今様々な画像生成AIサービスがあり、基本無料だがチケット制や機能制限ありといったものが多いようで、無制限に色々試そうとすると課金の必要が出てきがちである。筆者はケチなので無料で色々やれる方法を探した結果、これに行き着いた次第だ。とはいえ、これだけだとStable Diffusionをローカル環境に導入する他の方法と変わらない。
3番が個人的なキモである(もしかすると他サービスでも類似の機能があるのかもしれないが)。下描きを反映した生成物を得られるので、テキストのプロンプトだけで調整するよりも直感的に生成を操作できる。これは部分的な修正や、難易度の高い生成を補強する際に有用だ。
難点としては、かなり重いファイルをダウンロードする必要があり、生成時にマシンパワーを要するので、サクサク動作させようとするとそれなりのパソコンが必要になる。とはいえ、筆者の先代の廉価ゲーミングPC(2018年にお安く購入したやつ)でも使用可能だったため、動かすだけなら大体なんとかなる。とりあえず試してみるといいだろう。タダだし。
◆Case 1: すごくサイバーパンク◆
文字並べ続けても仕方ないので、実例いってみましょう。
自分で出題すると妥協箇所を設定してしまいそうなので、ニンジャスレイヤーTRPGで一緒に遊ばせてもらっている方々に協力いただき、いくつかお題をいただいてそれを再現する形式をとることにした。
フリーランスの黒人ニンジャバウンサー。
古式ボックスカラテを使う。
両腕を赤いテッコに置換している。
(以下は参考画像から読み取った追加要素)
スキンヘッドで埋め込みサイバーサングラスを着用。
鼻から下をメンポで覆う。
スーツを着用。
お題がこうで、DeepL翻訳の助けを借りつつプロンプトに変換する。
cyberpunk hitman,
a black man with a shaved head,
wearing a suit,
with both arms replaced by red robot arms,
wearing embedded cyber sunglasses,
covering the lower part of the face with a mask
こんな感じだったと思う(うろ覚え)。
白紙状態からテキストのみで生成してもそれなりにいい感じなので、何回かガチャを回してみる。
hitmanのワードが効いた雰囲気があり、イメージに近いものが出力された。両腕の赤いテッコが映える。
ほぼそのままでもいい感じだが、胸ポケットの謎発光デバイス、肩周りの謎ケーブルなどが気になるので、手動塗りで消した後、重ねて再出力する。この際、採用画像を新しいレイヤーに貼り付けた後、別レイヤーに手動塗りし、プロンプト入力窓の下にあるStrengthの値を下げ、同じプロンプトで再出力する。ちょっと何言ってるかよくわからないかもしれないが、触ったらわかると思う。
Strengthはこの記事の方法において重要なパラメータで、上げるとAIの創造性にマルナゲし、下げると参照画像とより類似した生成を行うようになる。適宜上げ下げして望むものを生成できるように調整してほしい。
いいんじゃないでしょうか。これで完成とする。
サイバーパンクの雰囲気が強いキャラクターだったため、筆者が慣れたやり方でプロンプトを記述できた。こういうパターンだと比較的生成が楽だ。
◆Case 2: 下描きでAIをわからせる◆
楽な場合の次は、苦戦した場合について触れるべきでしょう。
ペケロッパ・カルトの邪悪な女ニンジャ。
見た目はシマエナガそのものだが、屈強な人間の双腕が生えている。
ふざけてんのか(ふざけている)。
テキストプロンプトだと一向に思うものが出力されず、鳥とマッチョを別々に出力し、デジタルコラージュしたものをベースに再出力するなどの涙ぐましい努力があったが、結果は雑コラとしか言いようのないものだった。
これではダメだ。悔しかったので再チャレンジ。
色々いじった結果、プロンプト入力窓の上にあるDigital Artworkがこの生成には向いていないようで、Cinematic Photoに切り替えると比較的言うことを聞くようになった。そうは言っても、Case 1のようにテキストプロンプトのみでほとんど完成稿のようなものを出力するようなことはできそうにない。
ならばどうするか。下描きをAIに与えて指示を補強するのだ。
マウスで雑に描き、Case 1の仕上げ作業と同様に、プロンプトを入力し、Strengthを低めに調整して生成すると……
シマエナガ部分があまりにものっぺりとしているが、行けそうな雰囲気である。これを「新たな下描き」として使い、生成を重ねていく。
シマエナガ部分にリアルなディティールが追加され、腕の写実感との違和感がなくなった(全体としては違和感の塊だが)。この調子で何度かループした。すなわち、生成→新たな下描きにする→Strengthとプロンプトの調整→生成→……という流れである。
ここまでやれば及第点だろう。指はめちゃめちゃだが、冒涜的な生命体に細かいことを言っても無為である。そもそも鳥の部分がシマエナガではない気がするが、些細な問題だ。
一般的に、画像生成AIは人型から外れた非現実的な形状に対応するのが苦手なように思われる。しかし、この方法を使えば、テキストプロンプト以外の方法で、AIの苦手を人間が補助する形で生成をコントロールできる。極めて非人間的な要素の強いニンジャを作りたくなった際もごあんしんだ。
◆Case 3: 指が適当問題◆
一見して紳士的な中堅サラリマンと言った出で立ちだが、
その本質は一週間に最低10人は殺さないと強烈な飢餓感を覚えるという異常者。
モータルのサラリマン時代から「息継ぎ」として快楽殺人と強盗を繰り返しており、
「獲物」から思わぬ反撃を受けた際にニンジャとなった。
目覚めたジツはカトンだが、彼は自らの手で直接殺すことに意義を見出しており、
ジツは基本的に脅迫・拷問の補助にのみ用いる。
「証拠を残さずにモータルを殺す」という一点においては際立った才能があり、
今回の宿泊にも犠牲者から奪った金銭で訪れている。
そんな彼のインガオホーは突然に訪れた。
ソウカイヤの旅館でニンジャスレイヤーの起こす執拗な殺忍劇に巻き込まれ、
意外な健闘を見せたものの、あえなく爆発四散した。
見た目は普通のサラリマンとのことで、参考画像も踏まえつつ、適宜要素を抽出してプロンプトを書き、生成する。
炎要素が強すぎる気もするが、この方向性でいいことになった。なにより表情がよい。この画像はなるべくそのまま使いたい。
使いたい……のだが、左手がえらいことになっているのは見過ごせない。画像生成AI登場当初、「AI画像を見分けるにはまず指を見ろ」と一部で言われていた記憶がある。最新のモデルではかなり改善されていると聞くが、少なくともこの記事の方法では従来の欠点がそのまま残っているように思える。
ということで、Case 1のレタッチの応用で、他の生成画像からよく出来た左手を切り抜き、上の画像に貼り付ける。
これを下描きとして、Case 2と同様の生成ループにかける。
概ね違和感が消えたところで完成とする。
◆Case 4: むさくるしい例ばかりじゃない?◆
当然ニンジャガールもできます。ごあんしんください。
額から生える二本の角、蒼白い人外めいた肌を持つ少女ニンジャ。
胸は平坦。誉れ貴きネザーの戦士である父と、人間の母親の間に生まれたオニのハーフと自称する。
実際その小さな身体に似合わぬほどの凄まじい膂力とニンジャ耐久力を持ち、
オヒガンの冷気を自在に操る。
態度も大きく、他のニンジャやモータルを見下している節がある……ものの、
褒められると直ぐに気を許してしまうチョロさを持つ。モノにも釣られる。
その蒼白い肌は、触ると少しひんやりしている。
角が額から生えなかったが、これでいいことになった。マジに対策する場合はこれまで述べた方法を使い、頭の角を消すと同時に額に角を描いて生成ループをするといいだろう。また、nsfwがいくつか生成されたため、防ぎたい場合はネガティブプロンプトを追加するなどしましょう。
◆終わりに◆
いかがだっただろうか。誰でもカジュアルにキャラクター画像を作れるようになり、少なくとも筆者はいい時代になったと思っている。この記事が読者のTRPGライフを彩る一助になれば幸いだ。
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