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「糸状菌の培養」という遊び

ヒューゲルカルチャーというものをご存じだろうか。

ヒュ-ゲル床栽培(Hügelkultur)
ドイツや東ヨーロッパで盛んにおこなわれてきた栽培床での農法で、まず下地に枯れ木、次に枯れ草を敷いてその上に土を被せて「ヒューゲル栽培床」(hugel bed)として、堆肥と水持ちを兼ねさせるやり方である。
Wikipediaより引用

「パーマカルチャー」のデザイン手法の専門家たちが、世界中で砂漠の緑化再生のためにも使われている技法だ。

パーマカルチャー
パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)の3語を組み合わせた造語。「永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法」と定義されている。

このヒューゲルカルチャーを福島県大熊町で作りたいと思ったのは、2022年の4月。ちょうど大熊町で農業を始めた頃。

大熊町では、3.11の原発事故による放射能の影響で「野焼き」が禁止されている。

そのため地域のいたるところに、伐採した丸太や剪定枝が放置されている。

この問題をみたときに自分の内側から湧き出てきたアイデアが、パーマカルチャーセンター上籾での研修中に学び、実際につくったことがあった「ヒューゲルカルチャー」だった。

まあ去年の4月に思い浮かんでからウダウダしてたら10か月以上も経っていたのだが、

偶然手元に 大量のビール粕 と 糸状菌がびっしり蔓延ったウッドチップ と 朽ちた丸太 が揃ったので。これは神様が背中を押しているッと確信し、実行することになった次第であります。

今回つくるヒューゲルカルチャーは、パーマカルチャーの人たちがつくるものとはコンセプトが違くて(たぶん)

目的はただ一つ、、

『 糸状菌の培養 』

まあアレコレいう前にウッドチップに蔓延った糸状菌たちを見てほしい。


まっっしろ!

山や森の土の下には、この菌の集まりが層になって存在している。

この層に、木や植物の根が絡む。

木や植物は、糸状菌や菌根菌が遠くから集めてきたエネルギーを吸収して成長する。

この構造を人工的に再現して栽培に利用するのがヒューゲルカルチャーだと思っている。

だから「糸状菌がハッピーに暮らせる環境」をお膳立てしてあげる。ただそれだけ。

パーマカルチャーのヒューゲルカルチャーのメソッドでは、生の葉っぱや牛糞堆肥などの窒素分もたくさん投入するけど、今回はほぼいれない。

理由はいろいろある。一つ目に、糸状菌がハッピーに暮らすための条件に窒素分はそこまで重要じゃないと思っているから。それよりも水分量や日照量のほうが大切な要素だと思っている。

二つ目に、コンポスト(牛糞堆肥)を使ってつくったヒューゲルカルチャーで栽培した葉物野菜がとてつもなく虫に食われた経験があるから。目的は「糸状菌の培養」であって、ヒューゲルカルチャー内で分解を進めて芳醇な土にしたいわけではない。不要なリスクはとりたくないので今回は炭素の比率を圧倒的に多めで構成している。

三つ目に、この時期に生草はないし、牛糞堆肥も手元にない。僕はアルモンデ教に入信している。その時その場にあったものでつくるからこそ意味があるのだ。わざわざ余計な仕事をするのは信仰に反している。

そんなこんなで今回のヒューゲルカルチャーのイメージは、麹づくりだ。

お米を餌にして、種となる麹菌を振りまいて、麹が繁殖しやすいように湿度や温度などを調整して麹を仕込む。

大熊町の地元百姓と麹づくり

朽ちた丸太とビール粕を餌にして、種となる糸状菌が蔓延ったチップを撒いて、底部の水分量が60%くらいになることを目指して丘をつくっていく。季節や環境に応じて刈草や黒マルチで表面をカバーする。

さあ、実際に作業に移っていこうじゃないか!

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まずは施工場所の全容を知るために、草や蔦を刈りながら、朽ちた丸太を引っ張り出していく。

後の工程で作業しやすいように丸太は3つのサイズに分けてまとめた。

近所のおじさんにバックホーをお借りしたので、簡単に整地した。

それぞれこれまでの経験で培った感性を信じ、安定感と美しさを意識して、太い丸太から並べていく。

適宜、チップとビール粕をふりかけて一層ずつ仕上げていく。

微調整しながら丸太を積んで、振りかけて、を繰り返す。

最後に全体にウッドチップと土をかけて、見た目を綺麗にして完成!

少し時間をおいてチップが沈んで体積が小さくなったら、状況に合わせて粘土をかけたり、刈り草で丘をカバーしたり、

少しくらいは家庭で出た生ゴミをいれてもいいかもしれない。

とにかく「糸状菌がハッピーに暮らせそうな環境」をつくることだけを意識して調整を続ける。

「糸状菌の培養」は遊びだ!!!

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このヒューゲルカルチャーにはたくさんのメリットがある。

まず炭素を大地に貯蔵できること。燃やしてしまえば全て二酸化炭素として空気中にかえってしまうところをヒューゲルカルチャーに使うことで、木々が炭酸同化作用であつめた何十年分の炭素を大地に貯蔵ができる。そしてそれを生産活動に活用することができるのだ。

次に原発被災地の資源活用の新たな可能性になること。野焼きができないから、みんな処理に困っている。それなら積極的に引き取って活用してヒューゲルカルチャーにしてしまえばいい!栽培した野菜を還元してあげたら、地域の人も自分もみんなハッピー。
とてつもないエネルギーを使ってバイオマス発電所をつくるよりよっぽど合理的かつ効果的だ。

野焼きができないなんて素晴らしいじゃないか!
まさに「Problem is solution」、パーマカルチャーの大切な理念の一つだ。

また素人でも簡単にできる栽培メソッドになりうることもメリットの一つだ。家庭菜園をしている人はとても多いけど、栽培って簡単なようでとても難しい。考えて栽培しないと人体にとってマイナス要素のある野菜ができる可能性だってある。

いわゆる一般的なやり方で家庭菜園をすれば
「いつ耕そう」「いつ肥料をあげよう」「何の肥料をあげよう」「虫が来た。どうしよう」、、、、、
いろんなことを考えたり悩んだりすることになるけど

今回のヒューゲルカルチャーはすごくシンプル。「糸状菌がハッピーに暮らせる環境づくり」だけを考えていればいいのだから。

耕す必要もないし、施肥の必要もない、大きな野菜がたくさんはできないかもしれないけど余計なものを外から入れていないから虫もあんまり来ないし、人体にとってマイナスも少ない。

家庭菜園ならこれくらいで十分じゃないか!

これから浜通りの色んな所でヒューゲルカルチャーをつくるという遊びをする人が増えればいいなと感じた、記念すべき初めてのヒューゲルカルチャーでした!

手伝ってくれたみんなありがとう!

作業風景の写真は楢葉町を中心に活動している堺くん!美しい写真をありがとう!

さあて次はどこで作ろうかなー!

それじゃあ、またね!



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