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歯は砕けると抜けにくい。右上大臼歯の愛。

ゴールデンウィーク明けの土曜日に、最近、歯のことばかりを考えているんよ、という話をした。。

昨日「残すことが難しい」と言われた2本の歯を抜いてきた。
右上の大臼歯。名付けて右上大臼歯兄弟。

抜くと言われてから、最初のうちは(歯が…わたしの歯が…別れの時がきている…)と悲しみにくれて、さらにヒビが入って追い打ちがかかり、割り込みでヒビが入ったほうの歯を見てもらったら「もう割れちゃってるから、応急処置として割れてる片方は排除しましょう」と歯の半分を失った。歯を半分失ったことに動揺し、翌日は仕事でしょうもないミスをした。

…1本の半分がかけただけでこの動揺…2本を失ったらどんなミスをやらかすか分からない。と思い抜歯の翌日休みをとった。

さらに1週間の時間がたった頃には、抜歯に向けた心の準備も整い、心穏やかにいざ歯医者さんへ。

診察台に上がり、毎度の激辛うがい薬でブクブクうがいを30秒して、診察台で待つこと数十秒で先生登場。

「じゃあ、今日は予定通り2本抜歯しますね〜」と軽い調子で言うので

「はい、麻酔多めでお願いしま〜す」とこちらも軽い調子で答えると

「はいはい。麻酔多めにいれるね〜」と要望を叶えてくれた。

パチンとする銃みたいな麻酔①が打たれ、その後に注射の麻酔②が続く。痛くはない。次に「歯茎に麻酔打つのでチクっとしますよ」と言われる。前回も思ったけど、歯を形成するのは歯と歯茎と骨だと思っているワタシは(さっきのパチンとしたところ歯茎じゃないの?」と不思議である。
で、この歯茎への麻酔③が奥深くまで入ってくるんだけど、チクっとどころではない。普通に痛い。大人だから我慢できるけど、普通に痛い。そんなこんなで口内患部への麻酔注入が終わり、数分待って治療開始。

ゴリゴリ歯を抜きにいってるのだろうけど痛みはない。全く無い。麻酔がよく効いている。麻酔さんありがとう。と思っているが、口角にあたる器具のほうがむしろ痛い。なんかあたってるの痛いし!と思いつつも、まぁ耐える。右へ左へ上へ下へと大きなチカラがかけられているのがワカル。

(し…診察台に埋まりそう…)

何度かの大きなチカラが終わり、抜けたのかどうかの実感はなかったけど「はい、奥の歯抜けました〜」と言われ(え!?もう抜けたの!?はや!?)この調子なら2本目も余裕だな、と思っていたらそうはいかなかった。

2本目は、ペンチみたいなのが滑るのか何度もチカラをかけてはカスリ、そのうちキュイーンっていう削る機械がでてきた。グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→ギギギギ→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→ギギギギ→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→ギギギギ→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→グリグリ→キュイーン→ギギギギって口を閉じる時間もなく、もはや口を開いている顎が痛いし、この治療に飽きてきた。

(なんでこの歯はこんなに抜けないのか…きれいに別れられないタイプの人間と同じだな。いたわそういうの。わたしの人生にもいた。あれは大変だった…)

と過去の恋愛を思い出しはじめた。
そして、わたしは心の中で右上大臼歯Bに語りかける

(今までありがとう。ごめんね。あなたに不満はないの。全部わたしが悪かったの。歯の定期検診にも行かず、治療の途中で面倒臭がって、その結果があなたとわたしの間に亀裂がはいって、2人の関係が終わることに…。わたしが歯の定期検診行っていれば、1年前の治療をやりきっていれば、こんな結果にはならなかった。ごめなさい。わたしのことはどう思ってくれてもいいから別れましょう。本当にごめんなさい)

しかし大臼歯Bはまだ抜けない。もしや…大臼歯Bには、わたしが心の奥に隠している、抜歯が終わって傷が塞がる2ヶ月後。今年の真夏には骨太マッチョでナイスバディのインプラントとの付き合いがはじまることがバレている?それを浮気と思われている?だから抜けないのでは?

(違うんだよ。大臼歯B。それは、楽しみにしている付き合いじゃないんだよ。だってインプラントと付き合うには50万近く必要なんだよ。お金払って付き合うなんてそんなの真実の愛じゃないでしょ。わたしとインプラントは契約結婚なの)

脳内で、そんな風に大臼歯に語りかけたり、インプラントのことを説明したりして遊んでみても、大臼歯Bはまだ抜けない。なんかもう、これ以上脳内でやることもないので、歯医者さんに申し訳ねぇ…という気持ち。

そうして、治療開始から約1時間。1本目の大臼歯Aが抜けてから、約45分後に大臼歯Bとの別れの修羅場を終えた。軽くうがいしていいですよ、と言われても、もはや顎が治療中の状態で固定されてて、顔も戻すのが難しかった。

歯医者さんから「欠けていた歯がチカラを入れるとボロボロと崩れてしまうのでつかめなくて…最後残ってないかレントゲン撮って確認しましょう」と言う説明を受けた。(これで残ってたらまだ終わらないのか)とヒヤヒヤしながらレントゲンを撮りに立った時に、トレーに置かれている大臼歯兄弟をチラ見した。血まみれの大臼歯AB。大臼歯Aはどっしりとして、大臼歯Bは3つに砕けていた。ちょっと切ない。心の中で合掌し、レントゲンで無事に全部除去できていることが確認され、消毒して縫合して終了。

長かった…マジで長かった…
抜いたショックで、顔が欠けたアンパンマンみたいに元気がなくなると思っていたけど、もはや抜けた喜びのほうが大きい
抜けた!抜けたどー!って感じ

もしかして、わたしが抜いたショックにより悲しみで治療が終わらないように、ひゃっほー!って気分になるように、大臼歯Bは最後のサプライズをくれたのかもしれない。

別れの日に大臼歯兄弟から、大きな愛をもらった気持ち。

大臼歯B,しつこいオトコだなとかほんのちょっとでも思って、本当にごめんななさい。やっぱりわたしはあなたのことが今でも好きです。…でも歯医者さんの「持って帰りますか?」の質問には秒で「いりません」って言っちゃった。ごめん。ほんとごめん。

残った歯は大事にするから。
夏から付き合うインプラントともうまくやっていくから。
安心して。

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