【ゲームレビュー】Godfall【ルーター/アクション】
XBOX Oneコントローラーを使用。クリア済み。PC版のレビューとなります。
史上初のルータースラッシャーを謳う、新世代のハクスラ(ルーター系)近接アクションRPG。『ヴェイラープレート』と呼ばれる伝説の防具を身に着けた最高の騎士、最後のヴェロリア騎士となり、混沌が渦巻く世界『アペリオン』を救え。
用語について
※誤解を防ぐ為、本レビューではハクスラ系やディアブロライク(クローン)系と言う単語を『ルーター系』に、OPやPropertyもしくはAffixと呼ばれるアイテムに付与される魔法効果や特性をそのまま『特性』と言う単語で統一させていただきます。
----------------------【良い点】----------------------
次世代の表現
◆ キャラクターや鎧、武器の造形が美しいという点を抜きにしても、今作は次世代機向けに開発された事もあり、グラフィック周りの表現の出来が非常に良い。
キャラクターや草木のテクスチャ自体は高水準ではあるものの、他のAAAタイトルと比較すれば似たり寄ったりと言えるだろう。
今作で目を引くのは光、影、反射や粒子の表現方法だ。特に特定の技の発動時や敵を撃破した際に細かい粒子が空中に浮かぶ様は過去の世代のゲーム機では、全くなかったわけでは無いが、多様できなかった表現方法の一つだろう。
爽快な戦闘
◆ 実際に戦闘で使用可能なスキルや技は他のアクション系作品と比べると少ないといえるだろう。だが、必要最小限の動きで戦闘に戦略性と爽快感を与える事に成功している。
操作面の基本となる動きは概ね『弱攻撃』、『強攻撃』、『武器テクニック』、『シールドスロー』『テイクダウン』、『回避』、『ガード』、『パリィ』となっている。
ゲームに慣れ始める中盤では、それらを上手く組み合わせる事によって、敵を連続で撃破していく事が可能になっていくだろう。
余談だが、回避とガード、パリィが重要になる戦闘は何処か『ソウル』系作品を思い起こさせる。
意味のある攻撃方法
◆ 弱攻撃と強攻撃が存在している作品の多くは、特定の武器では『弱攻撃』を使用しない、もしくは『強攻撃』が使い辛い為に全く使用しなくなるという事が発生しがちだ。
今作では対策が取られており、どちらも組み合わせて使用するメリットがハッキリとしている。
弱攻撃は振りが早く、攻撃力が低い。そして、強攻撃は攻撃力が高いが、振りが遅い。ここまでは他の作品と同様の仕様だ。
今作独特のシステムが『シャッターダメージ』システムだ。
『弱攻撃』を敵にヒットさせる事で、通常のダメージと敵のHPゲージにシャッターダメージゲージが蓄積し、『強攻撃』がヒットすると強攻撃のダメージ+蓄積分のダメージが敵に発生するのだ。
他にも戦闘では『ガード』と『パリィ』はかなり重要になっている。何故ならば、今作では遠距離攻撃がほぼ存在しないからだ。
その為、戦闘では『ガード』と『パリィ』上手く使用して敵から距離を取りすぎる事は避ける方向にある。
攻撃時に敵が赤く点滅する攻撃以外は全ての攻撃がガード&パリィ可能で、パリィ成功時はこちらのスキが少なく、そのまま反撃できる場合が多い。また、この時に『弱点』と呼ばれるスキル取得していれば、敵に大ダメージを与える事も可能だ
ボス戦では敵が青く点滅する攻撃があり、この攻撃をパリィする事で敵に大きなスキが発生するという仕組みも存在する。
読者の中には『パリィ』というと、『ソウル』系でよく見かけるタイプのシビアなタイミングを要求されるモノを想像するかもしれない。だが、実際の仕様は『ジャストガード』に近く、またパリィ判定もかなり甘めに設定されている。
それでもタイミングが難しいと感じるならば、アンロック可能なパッシブスキルに『パリィの判定時間を延ばす』というスキルがあるので、そちらのスキル開放を目指すのも手の一つだ。
また、これらの戦闘要素は今作独特のビルドを作り上げる事にも貢献している。
ビルド構成
◆ ビルドとは特定のスキルや装備の組み合わせによって作り上げるキャラクター(プレイヤー)の構成、プレイスタイルの事だ。
ルーター系では様々なビルドを作り上げる事が可能だが、今作でも従来のルーター系と同様に『クリティカル』や『状態異常』系ビルド等といったビルドを組む事はもちろん可能だ。
面白いのが、上記した『パリィ』+『弱点』や『シャッターダメージ』に関連したビルド(もちろん、他にもあるが)を組む事ができる点だ。
そのなかでも『パリィを行うと~がx%回復』+『弱点攻撃を行うと~』といった効果の特性がいくつか存在する。それらの特性を持った装備を組み合わせる事で『パリィビルド』を組む事が可能だ。
このビルドはプレイヤー自身の技量が高ければ高い程、効果的になる為、アクション的にも面白く、プレイして爽快感があり、今作の可能性を感じさせてくれるビルド構成になっている。
難易度
◆ 『イージー』『ノーマル』『ハード』の三つの難易度が用意されている。『ハード』モードでは敵が強くなる代わりに入手できるアイテムの量が増える。
『Godfall』における難易度変化による最大の特徴は敵のHPと攻撃力の上昇では無く、敵の攻撃頻度そのモノの上下だ。『イージー』では攻撃頻度が少なく、『ハード』では多くなる。
これによって、アクションゲームである今作ではちょっとした面白い変化が起きる
『ハード』では、実は敵の攻撃頻度が上がる事による『恩恵』がプレイヤーにもあるのだ。これはどういう事かというとこちらが『パリィ』する機会も増えるという事だ。
その為、上記した特定のビルドでプレイ時には敵のHPの上昇がさほど気にならない程度にこちらのビルドが上手く機能するようになる。
逆に『イージー』でプレイした場合は敵の攻撃にそれ程気を使う必要が無い為、別の意味で爽快にプレイする事ができる。
個人的にはアクション性の増す『ハード』でのプレイが緊張感もあり、楽しめた。
ゲームの停滞を無くす
◆ 今作ではレベルが上昇する、もしくは特定ミッションをクリアする事でスキルポイントを取得し、それらのポイントをスキルツリーに振ることでスキルの取得やステータスを上昇していく。
ルーター系RPG作品の楽しみ、醍醐味の一つに習得するスキルや装備の厳選がある。筆者もまた、それらを厳選し、ビルド構成を考える事自体が好きなプレイヤーの一人である。
だが、これらの要素は序盤、ゲームの内容をしっかりと把握していない段階で行うと時間を取られてしまい、ゲームの『流れ』が一時的に停滞してしまう原因にもなる。
そして、今作は爽快感のあるスピィーディな戦闘を楽しむ作品でもある事から、ゲームが停滞する原因となる、システム周りの要らない部分を可能な限り削ぎ落すような思想設計がなされている。
例えば、スキルに関しては、何時でも無条件でスキルポイントを振り直す事が可能になっている。
これによって、スキルツリー全体の把握や各スキルと装備品毎のシナジーをプレイヤーが理解していない序盤は特に何も考えずに『気になったスキル』を習得する事ができる。
収集要素
◆ 装備品には『プライマリ』と『セカンダリ』と言う名称の特性が付与される。『プライマリ』は装備毎に固定で固有の特性が付与されるという、ルーター系作品としては珍しい仕様になっている。分かる人には他の作品で言うところの『レジェンダリー』装備の固有能力だ。
ただし、能力は同一でも、何らかの『~がx%上昇』というタイプの効果であった場合は、『x%』の部分はランダムとなる。
一方で『セカンダリ』は他の作品で一般的に見られるようなランダムに付与される特性になっている。
装備品には『コモン』『アンコモン』『レア』『エピック』『レジェンド』の5段階のレア度があり、レアな装備ほど『セカンダリ』の特性の数が増える。最大である『レジェンド』でプライマリ1つ + セカンダリ3つとなる。
また、武器は強化する事によって、セカンダリをもう一つ追加する事も可能だ。
『Godfall』では能力値だけでは無く、『外見の良さ』でプレイヤーが欲しくなるような装備も多く揃えられている。
意外と装備品の外見は重要だ。例えば『ディアブロ3』では、一度入手した装備品の外見を同系統の装備品であれば何時でもスワップできる仕組みが取られているほどだ。
これはどういう事かと言うと、『この装備はオレのビルドでは使わないが、外見がカッコいいから欲しい!』となるわけだ。
当然ではあるが『ルーター系』作品なのだから、プレイヤーの収集欲を煽るような構造になっている事は大事だ。
オーグメント
◆ 今作では上記の装備とスキル以外にも、スキルツリーに似た要素である『オーグメント』という装備を鎧毎に違った形状になっているツリー状の装備欄に装備する事ができる。
オーグメントには三種類の属性があり、ツリーの装備欄毎に決まった物しか装備できない仕様になっている。
こちらのオーグメントは、特にレジェンド級のモノは効果がなかなか特殊で終盤の厳選とビルド考察が捗る要因となっている。
『オーグメント』の装備可能な数はキャラクターのレベルが上昇する毎に解放されていく仕様になっている。また、上記の項目で述べたように、この仕様は序盤ての『停滞』を無くす為だと思われる。
----------------------【悪い点】----------------------
カメラ
◆ 多くのアクション作品が直面する問題の一つがカメラ周りの操作や視界確保だが、今作もまた、いくつか同様の問題を抱えている。
・敵をロックオンした際に一度ロックを解除しなくては別の敵をロックオンする事ができない。ロック中は当然だが、カメラがロックした敵固定になる為、むしろロックしない方がプレイが容易になるほどだ。
・壁際に追い込まれるとプレイヤーキャラクターが見えなくなる。
・巨大な敵に張り付いている状態だと全体の把握ができない。また、敵のHPゲージを見る事ができない場合もある。
・今後のアップデートで対応予定ではあるが、本レビュー執筆時点ではFOVを変更する事ができず、カメラの位置が主人公に近い為に対多人数戦において敵の位置把握が難しい。
・敵の攻撃が来る方向は赤い矢印状のUI(インジケーター)で確認する事が可能だが、エフェクトが多く、主人公と敵の動きが早い今作においてこの機能が上手く機能しているかどうかはかなり疑問だ。
マップ
◆ 今作は広いステージ(のレベルデザイン)がいくつか用意されているのだが、マップやミニマップにあたる機能が存在しない。その為、場所の把握や暗記が少し難しい。
ただ、これは完全に問題になるような仕様で無いという事もここに記載させてもらう。というのも、今作には宝箱や重要なオブジェクトを可視化する能力、視界にハイライトする能力を主人公が初期から使用可能だからだ。
その為、実際にマップが無いという理由で道に迷ったり、目的地が分からなくなるという事はプレイ中に一切発生しなかった。
不十分なメインストーリーとつまらないミッション
◆ 物語や設定、各装備品やコーデックスで確認可能なフレーバーテキストは興味を惹かれるし、考察が捗るので楽しめる要素になっている。
一方ではメインストーリー部分では多くが語られず、ゲームクリアまでの十数時間で主人公が会話するキャラクターの殆どが拠点にいる二体のキャラクターのみとなっている。
オマケに会話の内容も当たり障りのないモノになっている為に、物足りなさを感じられる。
主人公やライバルキャラクターが魅力的であるだけに、その魅力を十分に引き出せるようなストーリー展開が無い事が残念でならない。
また、それに伴いメインミッションもサブもすべて『~を倒せ』『~を集めろ』『~を壊せ』と変化に乏しく、ストーリーもほぼない。
この仕様自体は他のルーター系でも見られるが、ほとんどが演出やストーリーの流れによって、マンネリになる事を多少でも緩和するような努力がなされているのに対して、今作ではそれらが全くなされていない。
それがマップを探索する時に出てくるサブミッションのみであれば良かったが、メインで何度も同じことをやらせるのは流石にプレイヤーが疲れてくる。
洗練された戦闘、多様性の少ないビルド
◆ 今作ではいくつかのユニークなビルドが存在する事は確かだが、上記したようにゲームの戦闘面での技や能力のバランス調整が良く出来ている作品である為(一部装備品を除く)、逆に極端に戦闘が変化するようなスキルの取得やビルド構成を行う事ができない。
ルーター系作品では大雑把に書くと、スキル依存(重視)型と装備依存(重視)型の二種類のビルドが存在する。
他のルーター系では大抵の場合はスキル依存型のビルド構成である場合、いくつかプレイスタイルと使用するスキルが極端に異なるビルドを組む事が可能だが、今作ではほぼ必須となるスキルが多い為に似たり寄ったりな構成になりがちだ。
これに拍車をかけているのが鎧『ヴェイラープレート』毎の違いが薄い点だ。『ヴェイラープレート』毎に多少の能力の違いはあるものの、スキルツリーが異なるわけでは無い為、結局やることはほとんど同じになってしまう。
オンライン周り
◆ 現状ではオンラインマルチはフレンドのみと行う事ができ、『クイックマッチ』の様な機能は無い。その割には常時オンライン接続を強制されるという謎仕様になっている。
『バナー』と呼ばれる装備やその他の装備品、スキルの効果の中には仲間にも効果が及ぶものが沢山ある為、フレンド意外と気軽にプレイできない事は今作の様な作品にとっては大きなマイナスになっているといえるだろう。
機能の物足りなさと『古い仕様』
◆ 『ルータースラッシャー』という新しいジャンルに挑戦している弊害なのか、今作には『ルーター系』としてはいくつかの問題を抱えている。
かなりの量がある為、ざっくりと紹介する。
・装備品の外見を変更させる機能があるにもかかわらず、武器スキンのスワップ(入れ替え)ができない。加えて、ヴェイラープレート以外で外見が変化する装備は武器のみとなっている。折角の美しい装備が勿体ない。
・装備品の作成機能が無く、更に装備品に付与されている特性の一部ですら変更させる機能が無い。装備品の厳選があまりにも厳しくなる為、ケースバイケースではあるが、こちらは最近のルーター系作品では基本的には搭載されている機能の一つだ。
・装備を一括でサルベージ、分解する事ができない。また、特定のレア度の装備品を自動的にサルベージする機能も必要だろう。最低レア度の装備はドロップしたところで、エンドコンテンツをプレイ中のプレイヤーが装備する事は稀なので、自動分解機能は欲しい。
・序盤はステージのアンロックに使用する『~の印』系アイテムがほぼ何の役にも立たなくなる。上記の武器作成や特性変化で使用するような機能を搭載予定だったのかもしれない。
・ゲームの仕様、プレイスタイルに大きな変化をもたらすようなレジェンダリ装備と効果がほぼ存在しない。
・上記の明らかに良くないルーター周りの仕様であるわりに、レベルがカンストしてからは装備厳選以外に強くなる方法が用意されていない。
こちらに関しては長くなるので詳細は省くが、例えば『ディアブロ3』であれば『パラゴンレベル』、『ボーダーランズ』シリーズでは『Badass Rank』といった対策が取られている。
上記の問題点の多くは現代のルーター系作品では何らかの対策が取られている。少し語弊はあるが、極端に書くと今作のルーター周りの仕様は『ディアブロ2』時代のモノをそのまま持ってきたかのような古臭さがあるといえるだろう。
エンドコンテンツ不足
◆ ゲームクリア後のやり込み要素として特定の条件下、例えば『物理耐性50%』等といったデメリットが追加された過去にクリア済みのステージの高難易度版をプレイする事ができる。また、高難易度のタワー状のエリアも用意されている。
まず、問題となるのが上記の二種類は、特に前者に関しては、単純に難易度追加で良かったし、後者はウェープ制の敵撃破系ミッションと何ら違いが無い。
だが、最大の問題は上記の二種類しかエンドコンテンツが用意されていないという点だ。正直に言えば、ビルドの多様性が殆ど無い事も相まって、クリア後にプレイするモチベーションを保つのはなかなかに難しい。
-----------------------【総評】----------------------
『3Dアクション』と『ルーター』を組み合わせた意欲的な作品である『Godfall』はアクション面では成功しているが、残念ながらルーター系としてや、その他の多くの面で調整不足と古い仕様が目につく作品に仕上がっている。
上記の調整不足以外にも細かいバグが沢山ある事も記載しておこう。
プレイを検討されている方はアクション面を楽しみ、クリア後にいったん『間』を開けるつもりで無いのなら、アップデートによる調整が入ることを待ってもいいかもしれない。
アイデア自体は良い作品である為、今後の展開とアップデートに期待したい。
ここからは筆者の憶測になるが、今回の次世代機向けのローンチに合わせて“無理に”完成させた作品の殆どが何らかの不具合と『同作品の他の部分の完成度』と比較して可笑しな点が多く見られたことから、今作もその一つなのではないかと思っている。
今作で言えば、ルーター部分が明らかに拡張性を考慮に入れたシステムであるのに対して、『拡張』がなされていない点が不自然でならないように感じた。だからといって、今作の不足分が許されるわけでは無いが。
プレイ動画をアップしているので、気になった方はこちらを参考までにどうぞ。
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