自己紹介

 一人旅が好きだ。友達や家族とあれこれ計画して行く旅行も好きなのだが、一人旅の自由気ままさをとても好んでいる。誰にも気遣うことなく、したいことをしてもいいし、しなくてもいい。

 私は普段、地元の山奥にある旅館の調理場で働いている。1年の大半が繁忙期の職場で、繁忙期が明けて閑散期に入ると急に連休をもらえたりする。「星宮さん有休消化ね、明後日から3連休だから」といった具合。本当に唐突にご褒美的にもらえる連休だ。繁忙期のしんどさを超えた先にある束の間の幸せである。
 しかし旅館の閑散期なんてのは普通の人があまり泊まりに来ない、つまり旅行に行かない時期だったりする。雨のジトジト降る6月か、お盆と夏休みが明けての残暑がバリバリ厳しい9月の頭、そしてめちゃめちゃに寒い2月だ。そんな閑散期の平日、3日後、突発的に旅行なんてなると付き合ってくれる友人や家族なんてまあ捕まるはずもなく、なら一人でも旅行に行ってみよう!と思い立ったのが始まりだった。
 行ってみたらなんだかもう、全然、一人で楽しかった……元々単独行動が好きで一人遊びが好きだったのもあって、すっかり一人旅の虜になってしまった。
 それで、せっかくならその記録を旅行記みたいに何かにまとめておいて、後から読み返して、あー、ここ行った時楽しかったな……ご飯美味かったな……と振り返れたらいいなと思い、noteを始めてみたのでした。
 特に旅行先で、そこでしか食べられない美味しいものを食べた思い出や記憶というものを、個人的にとても大事にしたいと思っている。ひとまず今までの一人旅で最高に美味しかったものたちを厳選して、ここに記してみる。

 これは去年8月の終わり、湯河原に行った時に『和はな』さんにて食べた刺身・フライ定食。

刺身とフライのついたボリューム満点の定食

 このお刺身ももちろん美味しかったのだけれど、フライ……フライが本当にサクッッッサクで感動した。まるで神様がエビやアジ達に向かって「アナタ達は前世良い行いをした魚介類だったので衣を授けましょう✨」と天使の羽をお授けになったのではないかというくらい衣がサクサクだった。これを超えるフライに私は今日まで出会っていない。

 2月、松本の大変雰囲気の良い宿、『旅館スギモト』さんに泊まった時に夕飯に出てきた超早取れの蒸し筍

ホクホクの蒸し筍

 アチアチ蒸したての筍を頬張った後にキュッと冷酒を煽った瞬間、あぁ私は今、「命」をいただいたのだ……🙏と怪しげな宗教にハマった人みたいになってしまった。2月の雪のちらつく極寒の夜に春の食べ物である筍を先取りして食べるという行為がもう、なんか……お金持ちの人みたい……と貧乏人の私は寒さではなく震えましたね……

 9月、尾道の駅近くの居酒屋『呑み食い処 みち草』さんにて食べた生タコの天ぷら

揚げたての生タコの天ぷら

 尾道では他にも美味しいものをはちゃめちゃに食べたのだが、この生タコの天ぷらが一番脳の海馬に刻まれている。揚げたてアチアチでぶりんぶりんの弾力の生タコの天ぷら……これを天つゆにじゅわ…とつけて頬張った後で、冷酒をキュッと煽った時の、あの極致が忘れられない。

 こういうの、こういうのをですね、いつかしぬ時に私は鮮明に思い出したい。事切れる一瞬前に揚げたてアチアチの生タコの天ぷらをはふはふ頬張って、冷酒をキュッとした時の最高の幸せを思い出せたらいいなと心の底から思う。走馬灯は今まで食った最高に美味かったものたちの記憶で埋め尽くしたい。そして「この世には、美味しいものが多すぎた」から始まる辞世の句を読んで事切れるのを目標にしている。
 人間、本当にいつしぬかわからないし、若くてもそれまで元気でも急に病気になってしまうこともある。30代前半という若さで病気で亡くなってしまった旦那を見てきて、「美味しいものを美味しいと思えるうちにたくさん食べよう」と強く思うようになった。
 最高に美味かったもの達、今後noteに増やしていけたらいいなと思う。いつかあの世で、もしまた旦那に会えたら、この世の美味しかったものたちのことを勝手にあれこれ話して聞かせたい。

 とりあえず今からが松茸料理を目当てに団体客の沢山やってくる繁忙期なので乗り越えたい。次の閑散期では金沢に旅行に行きたいな……と、ふんわり計画しているところだ。冬の海の幸を堪能したい。海なし県生まれ育ちなので、新鮮な魚介類に果てしない憧れがある。美味しい魚をアテに酒を飲めるように今日も頑張って働いて金を稼ぐぞ……!

この記事が参加している募集