病める時も健やかなる時も、「きみ」がいてくれたから『#名取爆誕』
3月も気づいたら終盤、あの日の夜から帰ったら記事を書こう.…と思ってから書きたい内容をまとめたり、文字書きなんもわからん.…となってしまったりしてかなり時間が経ってしまいましたが、備忘録と共に自分なりの「名取さな」のこれまでの解釈についてまとめました。
【※ご注意】
当記事は2023年3月7日に行われたイベント『さなのばくたん。−ハロー•マイ•バースデイ−』のネタバレを含みます。まだイベントを見ていないせんせえや今回のイベントの無料枠等で「名取さな」を知った方は先にイベントのアーカイブを視聴されることをおすすめします
前提の話
「名取さな」というVtuberには二面性があります。
1つはバーチャルユーチューバーとして活動している「名取さな」
我々がよく知ってるインターネットとだじゃれが大好きな明るいナース服の女の子。
もう1つは病衣服を着たバーチャルサナトリウムに入院している患者「名取◼️奈」
名取さなの考察要素として認識されているあの子。
ここまでは毎年のようにさなのばくたん。を見たり、ラ・チッタデッラを行き来しているせんせえは既にご存知のことだと思います。
ですが今まで「あの子」については
名前が「名取さな」いうこと
年齢が「2◼️歳」だということ
2011年から「■■■■■サナトリウム」に入院している(?)ことしかわかっておらず、この時点ではまだ『考察要素』でしかなかった。名取さな(過去)としてグッズ化されたことはあるが
本来別の立場であるナースと患者が名取さなの要素として偏在してる違和感。
17歳と2■歳と年齢も雰囲気も異なる2人の名取さなは同一人物なのか?
今まで多くの考察が生まれてきました。
そして2022年の冬、配信にて開催が発表された「さなのばくたん。―ハローマイバースデイ」。そのキービジュアルには今までのばくたんのキービジュアルには描かれていなかった「あの子」の写真が立て掛けてあった。
そして配信でイベントの話題に触れた際、今回のイベントは5年間の集大成のものになると話していた。
今までの活動の集大成に「あの子」が関わってくるとなるとどんな内容になるんだろう……
期待と不安を織り交ぜながら当日を迎え、ついにその時が来てしまった。
突然のトラブル?
「私には悩んでる事があります……私、本当は………本当は“ナース”じゃないんです…。当たり前ですよね…“ナース“は患者さんに元気になってもらうために頑張れないといけないのに自分ばっかりいつも楽しんでいて……
憧れてるだけなんです……なりたいから”フリ”をしてるだけです……
誰にでも優しくて、誰とでも仲良くなれるナースになりたくて……
何年もみんなを騙しています……
だから私は此処にいる資格はないんです………。」
3月7日に開催されたお誕生日イベントの終盤、暗転から戻ったステージで見覚えのある病衣を着た少女が今にも泣きそうな声で語りかけている。
その光景を見た僕は思わず口を手で塞いだ。
いよわさんの新曲「パラレルサーチライト」やイベント恒例のカバー曲やせんせえのセンスが光る参加企画にデカ告知で盛り上がった後の突然の出来事に会場の空気が一気に変わり、僕は会場のせんせえたちと一緒に息を飲んで彼女の語りを見守り続けました。
ステージに戻って来たお馴染みのナース服を着た名取の慌てようからこれはどうやら想定外のトラブルの様子。
突然の事に戸惑う名取だったが自分の“悩み”と向き合う約束をし、ここで公開されたのが未発表の新曲「ゆびきりをつたえて」だった
新曲「ゆびきりをつたえて」と本当の”名取さな”について
「ゆびきりをつたえて」はいつもの名取と病衣服の名取(以後名取■奈と表記します)のデュエット。
3拍子のリズムと優しく包まれるようなコーラスが特徴的な前奏から始まり、先程登場した名取■奈が歌い始める。
冒頭で名取■奈が語った”悩み”に関する歌詞。
僕には名取がバーチャルナースとして活動して活動するまでや活動して間もない頃から抱いていた葛藤のようにも見えた。
憧れているからナース服に袖を通し、ナースとして活動を始め、「みんなから愛されるナースの自分」を演じ続けている
そんな自分になかなか自信が持てなくて.…
僕たちがよく知ってる配信で元気にお話してる姿とは裏腹に人からの目を気にして少しネガティブで
それが明るい自分でいるために名取がずっと目を背けてきた、僕達が知っていながらそこに触れるのが怖くて目を逸らしてきた『本当の名取さな』の姿。
サビが終わり光に包まれながらいつものナース服の姿に変わっていく………
先程までとは違うこの日までの5年間を思い返すような前向きな歌詞。活動を続けていく内にできることが増えていったり
好きなことをして楽しんでるだけでも怒ったりするせんせえ達はいなかった。
時には煽り合いでバチバチにバトったりすることもあったけどそんな関係も『個性』と捉え、それで名取のことを嫌ったり離れて行ったりする人は誰もいなかった。
「ねえ 私がどんな人になったとしても変わらずいてくれるんでしょ?優しくなれないような時でも」という歌詞からわかるように名取はそんなせんせえ達に信頼を寄せていることが伺えます。
そうしてナース服の名取のサビが終わると鏡合わせに名取■奈が現れる。
背中合わせに対話する2人の名取。
そっと振り返りナース服の名取が差し伸べた手を名取■奈は拒まなかった。
せんせえに、そして自分自身にやさしく問いかける名取。
この曲はそんな名取◼️奈としての自分もナースとしての自分も受け入れる、せんせえと名取自身との「約束(ゆびきり)」の歌だった。
僕はしばらく何もできなかった。荷物をまとめることも、退場アナウンスをしてくれたいろりちゃんとスタッフさんの声が重なって輪唱状態になってしまった退場アナウンスにも反応する事ができなかった。
そんな中、ゆびきりをつたえてのインストだけが流れ続けていた。Twitterを覗くとせんせえが一斉に「ここから早く出してくれ……」って言ってるのちょっと面白かった
名取さなのことを、彼女の思いを理解(わか)ってるような歌詞を書いてくれたnkLocalさん、
心が揺さぶられるエモい音楽を作ってくれたbermei.inazawaさん
本当にありがとうございます
5人の「名取さな」と"森羅万象検索くんのメッセージの本当の意味"
今回のばくたん。は前回のばくたん。と同じくたくさんの名取さなが登場します。
イベント冒頭で登場したヘンテコアイテム「森羅万象検索くん」によって飛ばされてしまったパラレルワールドで出会ったのは「名取さな」ではあるものの、抱えている境遇や悩みにはそれぞれ個性がある子達でした。
「汝の願いを叶えたくばまず汝と向き合うべし」
そんな森羅万象検索くんのメッセージに沿って色んな世界の名取達の悩みをナース服の名取と協力して解決し、元の世界へ戻るのが今回のお誕生日会を進行するための目的でした。
そうして無事に3人の名取の悩みを解決し、元の世界に戻って来て告知をした途端に森羅万象検索くんが再び起動し名取◼️奈が現れました。
実はこの時点でまだ悩みが解決されていない名取さながいたのです。
そう、先程まで我々と話していたナース服の
”Vtuber”としての名取さなが抱えていた悩みこそがここで現われた名取■奈の「正体」だった。
今まではせんせえ達に解決を仰いでいましたが今回はもう既に答えは見つかっていました。
今まで解決してきた名取達の悩みの答えが今の名取さなの悩みの答えとして”繋がっていた”のです。
イベントのシナリオがいわゆる「叙述トリック」のような構成になっていて僕は一つの映画の結末を見届けた後のような余韻に包まれました。
Vtuberのライブイベントのほとんどは「コンサート」のようなものが多く見られる中、今回のばくたん。は物語形式の構成となっており、前年を遥かに上回る完成度にびっくりです。
『さなのばくたん。』とこれからのわたし。
ここからは本人も言及しておらず、僕なりの推測を含む内容のため1人の名取さなのオタクの妄想として捉えていただければ幸いです。
2018年10月、突如名取さなのYouTubeチャンネルに1本の謎の動画が公開されました。
これまで何度もここで触れてきた「名取■奈」はここで突然現れました。
この動画では自身の名前が名取さなだという事、年齢は23歳で撮影日は2018年2月27日。
入院中の部屋です動画を撮っていること
「みんなを癒せるナース」に憧れていること等を話していました。
その後動画の最後に文字化けした文字が表示されます。
この「わたしの なりたかった わたしへ」という文は名取さなにおいて重要な意味を持っており、ライブ演出やオリジナル楽曲のフレーズなど今後様々な場面で耳にすることになっていきます。
2019年12月、初のソロイベント「さなのばくたん。 -バースデイ・サナトリウム- Powered by mouse」の開催が発表されましたが感染症の影響でイベントは中止に。
そんな中迎えた活動2周年目の3月16日に同じような動画が投稿されます。
こちらは名取■奈がバーチャルサナトリウムに入院し始める日の動画(?)のように感じます。
今回の動画は音声のみですがバーチャルサナトリウムで治療を受ける前に回復に意気込む名取■奈の様子が伺えます。
この2つの動画以降、名取■奈に関しては目立った進展はありませんでした。(2020年8月に発売された公式同人誌の1ページにはカルテに「職員との会話・笑顔が増えた」と描かれた挿絵があったが.…)
それと不可解なことに名取自身はこれらの動画については一切言及せず、いつも通りの活動を続けていました。(認識できていなかった?)
そして翌年、会場を我らがラ•チッタデッラ様に移し悲願のソロイベント「さなのばくたん。-ていねいなお誕生日会- Powered by mouse」の開催が決定し、2021年の3月頃は情勢も落ち着いていたため無事名取自身の初ソロイベントとして開催することができ、新曲「エッビーナースデイ」「アマカミサマ」が初公開され、イベント終盤には自身の思いを綴った手紙を読んで全せんせえの涙腺を崩壊させました。
ラストにはファンメイド曲であり自身初のオリジナル曲でもある「さなのおうた」を披露しイベントは幕を閉じた。
そう思った途端突然砂嵐と不協和音と共にノイズ交じりの名取■奈の音声が流れた。
至ってイベントは明るく大盛り上がりだったので突然の不穏な演出に正直戸惑ってた記憶があります。
月日は経ち12月、翌年に2回目のイベント「さなのばくたん。-メチャ・ハッピー・ショー-Powered by mouse」が開催が決定。僕自身初の現地参戦となったこのイベントは“ショー”を題材とした物語形式でイベントが進行されました。
パレード衣装に身を包んだ名取と今まで名取が着てきた「服」達が反逆を起こし、イベントを進行するために服達を満足させるというもの
ただ名取さなが4人に増えたというわけではなく、
それぞれ個性的な魅力の詰まった“キャラクター”になっていたのがすごく面白いところ。
このイベントでは新曲「だじゃれくりえいしょん」「モンダイナイトリッパー」を初披露。
(歌詞がだじゃれのみで構成されたオモロ曲と考察要素も含まれた曲の感情の寒暖差がすごかった)
そしてイベントの最後には名取自身が作詞を担当した新曲「メチャ•ハッピーショー」を披露。
お手紙から今度は歌へ、せんせえへの思いを伝える表現を広げていきました。
1年前のばくたん。で読み上げられたお手紙の内容や「さなのおうた」を想起させる歌詞に感慨深くなったせんせえも多いはず。
さて、ここまでは今までの「さなのばくたん。」のおさらいとなってしまいましたがここからが本題です。
今回のばくたん。を見たあと
“『さなのばくたん。』は3部作のシリーズ構成になっている”ように僕は感じました。
ていねいなお誕生日会での大喜利の「意味」
名取さなのお誕生日イベントといえば、というくらいイベント恒例企画の視聴者アンケート(大喜利)。
今回のイベントではそんな視聴者参加型の企画が大きな伏線となり、後の名取の道を照らしてくれました。
僕は2021年のばくたんでずっと引っかかっていたお題がありました。
それがこの『29歳になった名取さなの悩みは?』というお題
当時採用されたせんせえの回答のセンスが良くてワハハとなってたのですがよくよく考えると名取は何故『29歳』というやけに具体的な歳を選んだのか?
ここではじめに触れた名取■奈の年齢を思い返してみると……
2018年2月に23歳だった名取■奈は5年後のお誕生日、今年の3月7日に『29歳』になることになります
もしかしたら最初のばくたんを計画した時点で既に活動してから「5年目」という日を意識していたのかもしれません。
「服」と「名取」と“なりたかったわたし”
2回目のばくたん。と今回のばくたん。で共通しているのがたくさんの名取さなが登場すること。
今回は前回と異なり服としてではなく別世界線の名取さなとして登場したり昨年10月のハロウィンイベントでお披露目になったキョンシー衣装の名取さなも加わりました。
別世界線の名取さなはそれぞれ別人のように違った毎日を送ってる様子でした。
ちょろくて声がデカい元気な「王様」の名取さな
幽霊の友達に囲まれている「キョンシー」の名取さな
外へ出て学校に通っている「制服」の名取さな
今回のイベントに登場した名取さなは名取■奈が望んでいた「なりたいわたし」とどこか似通っていました。
前回のばくたん。で衣装にそれぞれキャラクター性を与えたことで名取さなにとって「衣装」も重要な意味を持つものとなっており、前述の「ゆびきりをつたえて」の歌詞にも服を連想させられる言葉はたくさん出てきました。
そして名取■奈が何よりも憧れていたもの、それが「ナース」。
そんなナースとしての自分を演じていく中で空回ることがずっと怖かった。
でもこの5年間で沢山の事を経験した今の名取は違います。
「叶うはずのない夢」は少しずつ叶っていった
「似合わないと思っていた服」は似合わないこともなくなっていた
5年という時間の中で芽生えた自信が背中を押し、ナースの姿の「なりたかったわたし」は悩める名取■奈に手を差し伸べた。
さなのばくたん。は名取さなが今まで自身を縛ってきた「なりたかったわたし」を”演じているだけ”という呪縛から解放し「なりたかったわたし」になれるように前へ進んでいくための物語だったのだと僕は思っています。
自分の悩みと向き合うことで名取■奈としての物語に一度ピリオドが打たれ、新しい「名取さな」の物語が始まった日
それが2023年の3月7日でした。
さいごに
僕は今年の3月7日が来るのが怖かった。名取が普段僕たちには見えない部分に抱えている物語が進むのが怖かった。
今回のイベントに対する5年間の集大成という言葉をどうしても素直に受け止めることができなかった。
名取さながVtuberとして活動してる以上永遠などなく、いつかは終わりがくる。それが怖かった。
終わりに近付くくらいなら現状維持のままでいい。ずっと明るいいつもの名取さなのままでいい。
そんな僕の杞憂とは裏腹にあの日の名取は前向きだった。
名取◼️奈としての自分と向き合って前へ進む選択をしてくれた。
名取さなの物語はずっと続いていくとあの場で約束してくれた。
ただそれが嬉しくて涙が止まらなかった。
そして「ゆびきりをつたえて」を披露した後、最初のばくたんの最後に流れたような砂嵐が流れ
今度は優しいオルゴール調の「さなのおうた」のメロディと共に、ひとつのメッセージが画面に浮かんだ。
この日、改めて胸に強く思った。
名取さなと出逢えて本当によかった。
ここまで追いかけてきて本当に良かった。
月並みな言葉だけどありったけのでっかいラブを込めて……
もしも5年前のいつかの日
インターネットで彼女を見かけ、興味を持った自分がいなかったら生きている間にこんな感情を経験できていなかったのかもしれない。
今もまだ必ず来る「いつか」の日が来ることが怖くはありますが
その時が来てもこの言葉が心の底から言えるようにこの先も精一杯応援し続け、あまりにもデカすぎる背中を追いかけ続けよう。
そう思った一夜でした。
もしかしたら名取は本当はこのまま隠し通すつもりだったのかもしれない。でも名取と僕達せんせえが出会い、笑い合ったり
お互いの事を信頼しあっているからこそ強い言葉で殴り合ったりして
イベントの時はいつも一緒に最高のお誕生日イベントを作りあげてきた
そんな5年という長い時間で固められた関係性のせんせえたちがそばいたからこそ、こうして「約束」をする事ができたのではないだろうか。
遅くなってしまったけど改めてお誕生日おめでとう。
これからもよろしくね。