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はじめて、みとめる、(2024年9月①)

神田神保町が本の街だと言って通じる世代というのは、もう限られるのかもしれないな。カレーの街と言ったほうが、もはや通りがいいのかもしれない。そんなことを考えながら地下鉄半蔵門線の駅から地上に出ると、辺りは思ったより暗くなり始めていた。スマートフォンの地図に目を落としながら、亀が泳ぐ街をふらふらと歩くと、ほんの数分で目当てのギャラリーにたどり着いた。

金村美玖 写真展『みとめる』

日向坂46のメンバー、金村美玖が「写真家」として開催したはじめての写真展である。大抵のギャラリーがそうであるように、こじんまりとしたフロアで催されているが、それでも余裕をもって観覧できるよう入場人数はコントロールされていた。そのこと一つとってみても、金村自身がこの写真展をどう捉え、見る人にどう捉えてほしいのかが伝わってきた。

展示されている作品は36点。2023冬から始まり、2024春に至る期間、彼女が旅先で撮影したセルフ・ポートレートと風景写真が並ぶ。

季節、色彩、表情、そしてその写真が撮られた時期の彼女の心情。

なるほど。これはたしかに「私」だ。風景を撮影した写真も、何も撮影されていない「作品」も、すべて金村美玖のポートレートだ。

金村美玖の「私」と「はじめて」が強く意識させられた。踏み出した一歩、表現への胸の高鳴り、自分が映されることの不安、鏡写しとなる実生活の迷い、自分と写真と向き合うことの覚悟。

「みとめる」と題した「はじめて」。会場であるギャラリーから外へ足を踏み出すのに、躊躇いが残る空間だった。まだ少し見ていたいと思える。それを振り切って外へ出るとき、また来るだろうなと思えた。この写真展にではない。はじめて、の次。この「はじめて」は2回目に続く「はじめて」だ。

2024年、日本で最も多くの「はじめて」を集めたであろう場所がある。他ならぬ、日本のひなた、宮崎だ。

歴史的大成功と言って過言ではない『ひなたフェス2024』、その価値がどこにあったのかを考えるときに、あのときあの場所にどれほどの「はじめて」があったのだろうと思いを馳せる。人の「はじめて」には本当に大きなエネルギーがある。宮崎であの規模のイベントをやるという最も根源的な「はじめて」に加え、メンバー、参加者、関係者、地域のみなさん、あらゆる人々の大小さまざまな「はじめて」が集積していた。僕も、これを読んでいるあなたも、あのときたくさんの「はじめて」を経験したのではないか。

それを生み出した、作り出した「日向坂46」を、僕は本当に大きな価値のある素晴らしいグループ、存在だとあらためて実感している。自身が「はじめて」を起こすこと、人に「はじめて」を起こさせること、どちらも大変な体験であるが、後者に至っては誰もができることではない。

であるからこそ、「はじめて」はそれ自体に価値があり、そのこと自体で大成功と評価されるのだ。

果たして、続く「ひなたフェス202X」はあるのか。そのとき、一番の「はじめて」は無くなる。それでも大成功となるか。

それを確かめるためにも、僕はまた、そこへ行きたい。

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