四期生が見せたトリプルジャンプ 〜 日向坂46 四期生ライブ@日本武道館3DAYS
2024年8月27日(火)・8月28日(水)・8月29日(木)の3日間、日本武道館で行われた日向坂46 四期生ライブに参加してきました。
四期生にとって、2023年2月の「おもてなし会」、2023年11月の「新参者LIVE」、に続く三度目の単独ライブとなりました。それは、決して大げさな誇張表現でも、ネタ的なオタク構文でもなく、本当の意味で、僕にとって史上最高に楽しいライブでした。初めて参加した「4回目のひな誕祭」よりも、心から感動した「新参者LIVE」よりも、初遠征の高揚感とともに参加した「Happy Train Tour 2023」よりも、新たな輝きを纏い始めた「5回目のひな誕祭」よりも、今まで参加したどのライブと比べても、圧倒的に楽しく、その波に没入できたライブでした。
なぜそのように感じることができたのか、最強最高だった四期生の武道館ライブについて書いておきたいと思います。
「無印」の意味
恐らくほとんどの日向坂ファン、そしてともすれば日向坂メンバーにとっても全く想像だにしないタイミングで発表された四期生LIVE、しかも武道館3DAYSという舞台装置。「ひなたフェス」の一週間前というスケジュールに突如現れた新たなライブ開催の知らせにまずは喜びながらも、その意味するところに少なからず困惑したおひさまも多かったのではないでしょうか。「伝説の」と枕詞がついてまわる「武道館3DAYS」というワードに一抹の不安を覚えたところも正直ありました。
個人的には、自分自身がまったく体験していない「歴史上の」イベントである、2018年の「ひらがなけやき武道館3DAYS」ですが、当時とはその背景も文脈も全く異なっていることは理解できます。かつて先輩たちが乗り越えた「試練」を単に舞台装置だけをトレースすることで、取ってつけたようにまた四期生に負荷として課そうとしているのなら、せっかく勢いを取り戻しつつあるグループの活動に再び翳りが生じてしまうのではないかと心配もしました。
しかし、結果としてはまさに「舞台装置だけをトレースした」に他ならず、それ以外の「余計な」文脈は「幸いにして」何も提示されることはありませんでした。デビューイベントとしての「おもてなし会」、停滞した空気の中で乗り越えるべき試練として提示された「新参者LIVE」と異なり、一見、何の文脈も背景も無いところに、突然降って湧いたような「無印」のライブが、逆に功を奏したと思います。「ひなたフェス」というグループの一大イベントを直前に控え、これからグループの中核としての役割を担うべき四期生たちは、自分たちが今できるパフォーマンスを高め合い、磨き上げることに集中できたのではないでしょうか。
「ハッピー」だけがそこにあった
ライブの期間中、多くのおひさまが感じ取り、話題にしたことがありました。僕自身も1日目が終わったあと、Twitter(X)のFFさんが発言しているのを見て、あまりにも自分の無意識下の「発言」と同じに感じたため、(これ俺ももう書いたよね?)と自分のTwitterを確認したらまだ書いてませんでした。笑。それは、ライブの間、メンバーが一切の後ろ向きな発言、演出上のこととはいえMCなどで自分たちを下げる発言をしなかったことです。わかりやすい例を挙げると、日向坂のライブでは定番の『JOYFUL LOVE』のMCでは、涙ながらに自分たちの葛藤や至らなさを語ることがあります。新参者LIVEでも、他の坂道グループと比べて自分たちが劣っているのではないという不安が多く語られ、それらを踏み台にして、試練を乗り越えていくストーリーが演出されてきました。
もちろん、今回のライブ期間で、メンバーに同様の不安や葛藤がなかったはずはありません。しかし、恐らくは今回、意図的にそれを表に出すことをしないと決めていたのではないかと想像します。2日目のアンコールのMCにおいて清水理央は、このライブが発表されたときに感じた大きなプレッシャーについて語りました。しかし、そこにも今までのように弱音を感じさせる発言は続かず、自分たちは大きな責任を与えられた、という前向きな覚悟が続きました。この最後まで貫徹されたポジティブな態度が、3日間のライブを通底する純度100%のハッピーオーラ、最強最高に楽しいライブを作り得たのではないかと思っています。
以前、僕は新参者LIVEについての記事の中で、こんなことを書きました。
このときの「楽しさ」と武道館での「楽しさ」には決定的な違いがあります。前者は、試練にがむしゃらに挑み、それを乗り越えた先に演者側が感じた表現することの楽しさであり、それを受け取った観客である僕は心から感動して涙を流しました。一方、武道館での「楽しさ」は、演者である四期生が観客であるおひさまに明確にライブを通じて届けた「楽しさ」であり、プロのエンターテイナーとしての彼女たちの成果でした。
僕は「ハッピー」や「楽しさ」を感じ取ったのではない。そこにいて、ハッピーだったし、心の底から楽しかったんだ!
4期センター曲の成熟と進化
こうした期別ライブでは、普段の全体ライブではなかなか見ることの出来ない楽曲やフォーメーションを見ることも楽しみの一つとなります。しかし、今回のライブで特に感じたのは、彼女たちの「持ちネタ」とも言える四期生曲や、継続して披露してきた四期センター曲の成熟と進化でした。
正源司陽子の『シーラカンス』と小西夏菜実の『雨が降ったって』は、演出が秀逸でした。よーこは、表題センターも務めた経験を生かし、成長した表現力で魅せてくれました。『雨が降ったって』は、まさにグループとしての四期生の成長が表れていたと思います。日向坂伝統の集団芸とも言えるでしょう。本編終了時にセットを片付ける演出は、ひなあいや46時間TV、そして「大好き日向坂」で身をもって学んだバラエティスキルを体現してくれました。
平尾帆夏の『ロッククライミング』には彼女にしか出せない愛らしさが溢れていたし、最新楽曲である渡辺莉奈の『夕陽Dance』は、渾身の「ほら見たことか」でした。誰もがあの曲のライブでのポテンシャルを確信していたし、覚醒と言ってはもはや語弊しか無いりなしの実力を堪能しました。
四期生曲でなくても同じことが言えます。小西夏菜実の『月と星が踊るMidnight』には、これからの四期生の伸び代が現れていたし、そして、清水理央の『青春の馬』は、彼女の、そして四期生全員の成長と進化の証を実感するリトマス試験紙のような存在となりました。それらが凝縮されたのが、『君はハニーデュー』の四期生バージョンでした。これが実現することこそが四期生の経験と成長の証でしょう。
そして、もはや言うまでもない、いや、なんと表現していいかすらわからないレベルの「魔物」となったのが、藤嶌果歩の『見たことない魔物』でした。とにかく幸せでしたね。千秋楽のあの瞬間、あの場にいられたことが本当に嬉しかった。あの魔曲をなんとかして、グループ全体バージョンとして持ち帰れないですかね。特別版でいいので全員参加の『見たことない魔物』を味わってみたい。また、同時に挙げておきたいのが平岡海月の『誰もよりも高く跳べ!2020』です。こちらも多くのおひさまが実感、言及した、あの千秋楽の静寂の瞬間。何秒ほどの時が止まったのでしょうか。「平岡海月の◯秒」として伝説に残したい。四期生とおひさまの一体感でした。
この節の最後に、清水理央の『ブルーベリー&ラズベリー』に触れたいと思います。ライブが終盤に向かっていくにつれて、どこでブルラズが披露されるのか、気になっていました。『夕陽Dance』で本編が終わると、まさか四期曲がひとつだけ披露されないなんてことは無いよなと、刹那不安がよぎりましたが、かほりんが「じゃあ、理央ちゃん」と声をかけた瞬間、推しメンの返答を聞くまでもなくペンライトを白×白に切り替えました。四期生曲の中でも、どちらかといえば穏やかな印象のあるこの曲が、こんなにも熱く心震わせられる存在になり、この伝説のライブの大トリで使われるまでに彼女たち自身が育て守ってきたことを、本当に嬉しく思いました。
「復活」というと語弊がありますが、清水理央が新たに自ら輝く存在としてその場所に立つことを心待ちにしていられることが、大きな楽しみでもあります。
おもてなし会、新参者、武道館
もちろん、それ以外の楽曲や、メンバーについてもそれぞれの個性や持ち味を十分に発揮して楽しませてくれました。結果、蓋を開けてみれば、四期生はこの大変なスケジュールの中で、純粋に素晴らしいパフォーマンスを見せつけてくれたと思います。
『おもてなし会』でアイドルとしての萌芽を見せ(Hop)、『新参者LIVE』では、試練を乗り越えながら一人前のアイドルとしての一歩を踏み出し(Step)、そしてこの『武道館3DAYS』で、これからの日向坂の核となる存在としての大きな飛躍を遂げた(Jump)と言っていいと感じました。四期生たちが見せた見事なトリプルジャンプでした。
これからの四期生(日向坂46)
大団円として、日向坂の未来は明るい!と締めてしまいたいところですが、彼女たちのアイドルとしての本番はこれからだと思います。おそらく、今後は「日向坂四期生」として括られた活動は徐々に少なくなっていくでしょう。それはつまり、彼女たちが「日向坂46」そのものとなっていくターンに入っていくからに他なりません。
活躍の舞台も変わり、図られる指標も更に厳しくなっていくかもしれません。それでもやはり、日向坂四期生の、日向坂46の未来は明るい。願わくば、それぞれの個性や想い、そして自分を大切にできる夢や目標、活動の軸を見つけて欲しい。もし、何か行き詰まる瞬間があったとしたら、あの武道館千秋楽で目にした景色を思い出してほしいなと思います。それほどのライブでした。本当に楽しかったです。