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夏にて、宇宙で一番きれいな女の子

これまで出会ったなかで一番かわいくてきれいな女の子は、中学からの友人のあの子。

自分でもだいぶ気持ち悪いことはわかっているけど、どうしようもないこの一方的な気持ちをここで吐き出させてもらうよ。


フィクションだと思って読んでください。私が浮かばれるので。








13歳、見つけた光

あの子と出会ったのは中学入ってすぐの勉強合宿だった。

夕食のためにホール前の廊下に集まったとき、その子を見つけた。

2つに結んだ色素の薄い髪と透き通った肌が本当に眩しくて、愛の種類は置いといて、ほぼひとめぼれだった。


女の子同士のかわいいと褒め合う時間が来たとき、案の定多くの子から「本当にかわいいよね~」と言われていた。

もちろん私も混ざって言った。

その子は言われなれているような様子で、少し否定しながらえへへとにこにこ笑っていた。

笑うと目が細くなってそれが本当にかわいかった。


仲良くなりたいな、と思いつつそれ以降話しかけられないまま合宿は終わった。





4月も終わりそうなとき、部活を決めるタイミングになった。

私は絵を描くことが好きだったのと、オタク的趣味を抱えてたため美術部に入部した。
合宿で仲良くなった友達二人も入部するようで安心していた。

入部決めは体育館に全生徒が集まり、入りたい部活のラインに並ぶ形式だ。

並んで座っていると後ろに人の気配を感じて振り返った。


あの子がそこにいた。



あまりのかわいさで声を震わせながらよろしくね、と声をかけたのを覚えている。

なんて言われたかは覚えていない。





これで仲良くなれるぞ!と喜んだのも束の間、会話が苦手なため、話しかけてもいまいち弾まなかった。

なんだかなあ、と考え込んでいたある日、あの子が背負った学校指定のかばんにダンガンロンパのモノクマがぶら下がっていた。

当時ダンガンロンパの絶望編、未来編が放送されて、V3が発売されたくらいの時期である。私もはまりかけていた。

これはチャンスだ!と思い美術室に向かうあの子を呼び止め、ダンロン好きなの?と話しかけてみた。

少し戸惑った様子でうん!と答えてくれたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

そこから趣味が合うことが判明し、少しずつ仲良くなることができた。

私が崇拝する歌い手、めありーも好きだとわかったときは運命だと思った。

めありーの歌を聴くと今でもその子のことで頭がいっぱいになってしまう。

歌詞の「君」を無意識に全部その子に置き換えてしまう。

本当に気色悪い。








14歳、夏を巡る

1年後にはふざけあえるくらいの仲になっていた。

当時は、間違いなくお互いが一番の仲良しだったと思う。

あの子は綺麗な髪を肩くらいの長さに切っていた。

あの子は風景画でもポスター制作でも、画用紙を青く塗った。

ただひたすら青かった。

14歳の夏が人生の最盛期だった。





夏休みに入ってすぐ、部活で日帰りの研修が行われた。

私はあの子と同じ、一眼レフカメラのコースを選んだ。

何より行き帰りのバス移動が楽しみで、行きの車内では留まることなく私たちはしゃべり続けた。


研修が始まって、二人組で写真を撮り合うことになった。

あの子とペアを組み、川へ行った。

水面に反射する太陽の光が私たちを照らす。

私はそんなあの子の姿を目に焼き付けた。


短い髪をちょこんと一つに結び、こちらにまっすぐとカメラを構える姿が本当に美しくて。

何の装飾もない夏服が華奢な体を引き立たせていて、消えてしまいそうな透明なのに、強さをもった茶色の瞳に吸い込まれそうで、もうどうしようもなかった。

この瞬間が永遠に続いてほしいような、でも早く現実に帰してほしいような気分だった。



あの子は賢い人だった。

勉強面でもそうだが、知的好奇心が旺盛で、自分の芯がぶれない人。

私の成績はその子に到底及ばないし、八方美人で自分の軸がない生き方だ。


そんなぐらぐらした私の奥底を見透かすような視線が苦しかった。

でもそれと同じくらい綺麗で、あの子に見つめられることが癒しでもあった。


当時はこんな言語化はできず、ただただうらやましいな、と思っていた。

それ以上に、そんなところに強く憧れを抱いていて、本当に大好きだった。



この時撮った写真を加工して現像する、という過程までが研修であった。
私は見えた世界の通り、少し彩度を下げて青を足した。

私が提出した写真を見た講師は、

「美少女コンテストとかに出せそうな写真だね~」

と言った。

そんな軽薄な場にあの子を差し出してたまるか、と少し苛立ったが、まあそのくらい美しい子だという気持ちはよくわかる。
あの子の美貌は誰の目で見ても明らかだった。



帰りのバスの中、隣に座り、疲れも相まって私たちはぽつぽつと話をした。


話題も尽きてきた頃、お互いの第一印象の話になって、あの子は私の目を見て

「なんかかわいい子いるな~て思ってた」

と言ってくれた。

お世辞だとわかっていても、嬉しくて舞い上がった。

「私もすごくかわいい子いると思ってた!!」

とまっすぐ伝えてしまった。


この気持ちは恋愛感情ではない、と確信していたが、なぜか悟られてはいけないものだと強く思っていた。ので、焦って小突いてごまかした。

そこからは、お互い軽く眠りについて、気づいたらいつもの学校だった。




夏休みはまだ続き、秋の文化祭に向けて準備をし始めた。

私とあの子は楽器隊に入り、あの子はトランペット、私はキーボードを担った。

楽器隊は全員で六人。このメンバーでほとんど残りの夏休みを過ごした。

この出来事をきっかけに私は初めて彼氏ができた。

あの子と彼氏と私とで、夏期講習期間の学校、スマホの持ち込みがばれないように空き教室の端っこに固まって、昨日投稿されためありーの「少女レイ」を聞いた。

その日は入道雲が大きくて、田舎の校舎の三階から見た空はありきたりなくらい青くて広かった。





文化祭練習の放課後、電車に乗ってあの子の住んでいる町に行った。

河川敷とコスモス畑が綺麗な町だ。


2人して大きなアコースティックギターを背負って、河川敷で歌った。

曲はAimerのカタオモイ。

風が強くて録画した動画は雑音だらけで、2人で笑った。



昼間の快晴と、帰りの見事な夕暮れ。

橙色に染まるあの子の睫毛。

中学生、感傷的になるのは少し恥ずかしい、みたいなあどけなさがあったから

「めっちゃきれい!」

と少しふざけながら話した。



あの子の名前には「夏」が入る。

本当に夏が似合う女の子。

だから私は夏が近づくと








最低な

文化祭を終えて次期部長、副部長を決めるのだが、私は出席回数が多い、なんかちょうどよさそう、というよくわからない理由で部長に選ばれた。

あの子は頭の回転が速い、賢い、という理由で副部長になった。

あの子と一緒に部活を引っ張っていけることが純粋に嬉しかった。



ところが、この頃からあの子はあまり学校に来なくなってしまった。

自分の信念がある、強く賢い人だが、空気に敏感な子だった。

綺麗な容姿や異性からの目を妬んだ人から、直接的な攻撃はなくとも、良く思われていない状況だった。

気持ちが不安定になっていたのだろう。



私はもう、最低な性格で、その子の弱い部分もたまらなくかわいかった。



そんな時、耐えられなくなったのだろうか、他の友人に泣きついているあの子を見て、私はまだ頼ってもらえる仲じゃなかったんだ、と自分勝手に失望した。

私は嫉妬して、頼られていた子に

「あの子、どうしたのかな」

と聞いた。

そっとしておかなければいけないこと、と察しはついていたのに。

「少し大変みたいだね」

と返ってきた。


その返答から、確かにこの子は信頼できる子だと思った。

自分本位な私とはまるで違うと、痛いほどに理解した。

こんな私の本質をあの子は見抜いていたんだね。


私はあの子と少し心の距離をとらなければ、自分を見つめなおさなければいけないと確信した。


それでも私はわがままで、あの子の隣にしがみついた。








15歳、予感

三年生ともなると、進路を考えだすようになる。

私の学校では一貫の高校にストレートで上がる人がほとんどで、理数科と普通科でクラスが分かれることになっていた。

体育などの合同授業で会えなくなったり、割と物理的な距離も離れたりする。

普通科は二年次から理転できるが、理数科に入るわけではなく普通科理系という少人数のクラスに入ることになる。
理数科にはそのような制度がなく、文転することはできない。

進路が定まっていなかった私は普通科に行くことにした。

あの子や文化祭の楽器隊メンバーは全員理数科へ。

正直めちゃくちゃ寂しかったが進路に関わることだし、あの子から少し離れなければいけないから、と無理やり納得させた。





ある日いつものように部活が終わり、駐輪場であの子と話していると、気になる人ができた、と言われた。

私以外の誰かにとって大切な存在になってしまうことが少しショックだったが、不安定で辛そうなあの子を見ていたから少しでも楽しい毎日を過ごせるのならよかった、と思った。


その人は朗らかで優しい人で、すごく応援できる恋愛だった。
当時の私の彼氏とも仲が良くて、ダブルデートしようね~なんて言い合った。

その日からは部活終わりに掲揚台の下でその人の話をきいたり、屋上で愛を叫ばせたりして私もとても楽しかった。

そしてあの子はバレンタインに告白をして、二人は付き合うことになった。


いよいよ私は、あの子の隣にいられなくなると勘づいた。

この頃には将来のことを考えだしたり、友人関係も広くなってきたことからあの子への執着は少し薄れていた。


だから、諦めはついていた。








16歳、日常に溶ける

私たちは高校生になった。

あの子はまた美術部に入った。

私はなんやかんやで彼氏にも振られ、仲のいい人とも学科が離れ、半ば自暴自棄に、やり直したいと願った。

美術部に入らず、帰宅部になった。


あの子とはほとんど喋らなくなった。


最初の方はクラスに遊びに行ったが、なんとなく以前のように話せなくなった。

お互いに自分のクラスの友達と遊ぶようになった。


あの子と関わらなくなった2年間、こぼれ落ちるように時間は過ぎていった。

あの子のいないセブンティーンに華なんてあるわけなかった。








18歳、もう一度

高校三年生になると、私は中学の時付き合っていた彼氏と復縁した。

そのことをきっかけにあの子とまた遊ぶようになった。


あの子はあの時の彼氏とまだ付き合っていた。



三年前の約束通り、何度かダブルデートをした。

彼氏と幸せそうに笑っているあの子は三年前と比べてより自然体で、ますますきれいなものだった。


ああやっぱり、どうしようもなく、美しかった。


またあの子の隣で同じ景色を見たくなった。


たまらなく、あの子に見つめて欲しかった。




夏には四人で海に行った。

中学の時、あの子と川や公園には行ったことがあったが、海には行ったことがなかった。

海が似合うんだろうな、と思っていたのですごく楽しみだった。


あの子と一緒に海に入る。


案の定きらきらした、すてきな情景。

白い肌と青い海のコントラストが絵画みたい。

あの子が描く青い絵に飛び込んだ様だった。

海風と砂浜の匂いがアクリル絵の具の匂いと少し似ていた。



その日はぐっすりと眠ることができた。





私は海での余韻に浸っていた一方、あの子は夏休みの間に某アイドルグループに応募したらしい。

私も推していたグループだ。

なんと最終的に東京に行って、最終審査直前まで通った。

正直、私は合格までいかなくてほっとした。

かわいいあの子が世間の目にさらされることが耐えられなかった。


私だけの神様でいてほしかった。


あの子の彼氏はというと、喜んで応援して、応募に送る写真を撮っていた。

ああこれが愛なのか、と納得した。



私のあの子への気持ちは恋愛感情ではなく、友愛もどこか違うと思っていた。

私はあの子のことを神様だと思っていたんだと、この時気付いた。

敬愛に近いのだろうか。

どちらにせよ分類できる愛ではない。愛ですらないのかもしれない。

でも独占欲だとは言わないでほしい。




オーディションに送られた写真は四年前の夏に私がとった写真より完璧で、まぶしい笑顔だった。

あの子が一番輝けるのは、私の隣ではないと改めて感じた。


寂しいけれど、もうそんなに悲しくなかった。







最後は雨で。

夏休みが終わると受験までより一直線。体育祭やクリスマスなんてのにかまってられずに共通テスト、二次試験に向き合った。



やっと会えたのはすべて終わった3月。お互い第一志望の大学に合格することができた。

私は九州を出て関西の大学へ、あの子とあの子の彼氏、私の彼氏は全員同じ九州の大学へ進学。

私は頻繁には帰省できないから、次に会うのは一年後、と一日中思いっきり遊んだ。



二人で着物を着てたくさん街を歩いた。

あの子はやっぱり青色の着物を選んだ。

私はあの子に染めてほしくて、白色を纏った。

悲しまないからせめて、塗りつぶしてほしかった。





写真もたくさん撮って、私は地元での日々を噛み締めた。

18年間育った街を宇宙一きれいな女の子と歩いている。


なんて幸せなんだろう。



その日は曇天で、時折雨も降った。

あの子との思い出はずっと、快晴か、大きな入道雲のある空だった。



最後の日が悪天候なのは、私の門出にぴったりだった。


もうあの子との思い出は胸にしまって、新しい環境で生きなくちゃいけない。


遠い場所でたくさん経験を重ねて、学んで、改めてあの子に会いに行きたい。


会いたいと思わせられるような、素敵な友人になって戻ってこれますように。


そう祈って、私はあの子に軽く手を振って、地元を出た。





14歳の夏、現像したあの子の写真は自室の引き出しに置いていった。









親愛なる夏へ!

大学一年の冬休み、あの子に会いに行った。

違う場所で暮らして、共通の話題もない。

久々に会うと気恥ずかしいし、なんだか話が盛り上がらなくて、やっぱり寂しさを感じた。

でもこれが成長なのだと思う。

あの子とBeRealを交換して、楽しそうに大学生活を送っているのをよく見るようになった。

髪を染めたり、友人とドライブしたり、本当に楽しそうな姿が画面越しに伝わってくる。



人は変わっていく。それは良いことだ。

寂しさは糧にできる。

だから寂しがるのも良いことだと今では思う。


私もいろいろな経験を積んでいる。

知り合いが一人もいなかったこの地で、新しい交友関係を築いている。

辛いことも楽しいことも目いっぱい焼き付けて、毎日を大切に生きている。



それでも、春も終わりそうなこの時期、ふと流れてくる夏の予感に揺さぶられて、どうしようもなく戻りたくなってしまう。


あの愛しい日々を糧にして、また新しい夏を見つけよう。


あの子が笑ってくれるような話をお土産に、今年もまた、会いに行く。







(見出しの画像は14歳の夏、カメラ研修で撮ったものです。綺麗だね)


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