グランドキャニオンでも、舌打ちしますか?
舌うちってなんだろう。
普段、めったに混んだ電車に乗らない生活をしているが、
月に1回ほど朝の通勤電車に乗ることがある。
地下鉄で降りようとしたとき、混んでいたのでちょっと
足元がもたついて男性に少し寄りかかるような形になって
しまったのである。
「・・・ちっ」
確かに聞こえた。
「あー私の嫌いなあれ、舌打ちですね」と冷静に思うとともに、
わずか数秒のうちに
「わざわざ自分が不快だということを
小さな音で表すってどういう心理なんだろう」
「きっと幸せではないんだろうな」
「ただでさえ会社に行くのが嫌なのに、
混んだ電車で寄りかかってきやがって」、なんだろうな。などなど
思いを巡らせた。
でもさ、「自分は不快だ」ってことを地味に表明して、それがなんなんだろうね。
私もとても不快になったし、それどころか舌打ちしちゃった自分も
もっと不快じゃない? 舌打ちは自分に返ってくるのにね。
その翌日、インスタライブでグランドキャニオンの動画を見て、
心が洗われた。
知らないフランス人と日本人が穏やかに会話をしていて、
そこは調和と光の世界だった。
そこでなぜか思い出したのが、”混んだ電車の舌打ち”である。
あの男性は、この壮大なグランドキャニオンでも人がぶつかってきたら
舌打ちするのだろうか。
あの男性なら、しそうだな。
要は、どんな素晴らしい場所、どんな過酷な場所にいても、
自分の世界は自分がつくっているんだな。
私も舌打ちに不快になっている場合じゃないなと思い、
あの男性の幸せを祈ったのだった。