都会を不便としか思えない話
今からもう20年近く前になると思うとちょっとびっくりだけど、
高校を卒業したばかりの僕は広島県のど田舎から繁華街も近い大阪市へとやってきた。
当時から街への憧れのようなものは特になかったけど、
広い世界を見てみたいという好奇心から都会へと出ることを決めた。
僕が住んでいたのは大阪市の中でも結構下町で、
自転車の前と後ろに子どもを乗せながらパンパンになった買い物袋を両方のハンドルにぶら下げて力強くこいでいく
『大阪のおばちゃん』
がたくさんいるような街だった。
ちょっと口が悪くて怖い雰囲気の人も多かったけど、
素で接してくれる『人情』を肌で感じて決して嫌いな街ではなかった。
ただ、大阪に出てから出会う人によく言われていたのが、
「そんな田舎から出てきたんやぁ。不便やったやろー!」
という言葉だった。
この言葉を聞くたびに僕はずっと違和感を感じていた。
だって、都会を便利と思えることが本当になかったから。
車どころか自転車を止めるためにお金がかかり、
人の多い電車に揺られ、
重い荷物を自転車にぶら下げて狭い道を人にぶつからないように走らないといけない。
なにをするにもお金がかかり、
かといって高いお金を払っても別に広い部屋に住めるわけでもない。
なんというか、
とても息苦しかった。
古いマンションの6畳ワンルームに格安の家賃5万円で住んでいたこともあるが、
(雑技団が廊下で練習してるようなマンションだった)
地元の友達が新築の広くてキレイな部屋に家賃3万円で住んでいるのを見た時は、
さすがにちょっと嫉妬した。
街に住んでいると、
『都会は便利、田舎は不便』
というのが当たり前のように語られるけど、
田舎にはやっぱり田舎にしかないよさがある。
家は広いし庭でバーベキューをしたって近所から煙が臭いなんて苦情もこない。
大きな音を出しても子どもが走り回っても誰にも文句は言われない。
安くて新鮮な食材が手に入るし有り余った豊かさをみんなで分け合う余裕がある。
まあ別に都会が悪くて田舎がいいと言うつもりもない。
ただ僕は、
田舎が好きだし田舎が合っている。
だから、
『都会は便利、田舎は不便』
でくくって欲しくないと思う。
そして僕から言わせると都会はとても不便だ。
そんな考えの人だっているのだ。
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