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NPOなヒト インタビュー:「繋ぐ」役割の大切さとは?

「NPOなヒト」第1回目のインタビューは、2023年春から札幌市議会議員として文教委員会や大都市税財政制度・DX推進調査特別委員会に所属し活躍されている、定森光(さだもりひかる)さんです。定森さんは、現在、高齢者共同生活館ほしの里(発寒)の運営や保護司としても活動中で、元北海道NPOサポートセンター職員でもあります。
北海道NPOサポートセンターに2か月間インターン生として所属した小樽商科大学2年の山本と、北海学園大学2年の奥田がお話をうかがいました。
(以下、インタビュアー:I、定森氏:S、と表記)

2024年8月27日、民主市民連合議員控室にてお話をうかがいました

I:まず、定森さんの経歴を教えてください。
S:私は北海道大学農学部に進学するために名古屋から札幌に来ました。在学中に商店街を活性化するボランティア活動をしてたんですよね。人が行き来する場所ですから社会的孤立にある人たちが集まれる場所になるのではないかということで、地域の人が集うコミュニティカフェを作る取り組みを地域の人々と法学部の先生を中心に始めました。
名古屋で就職しましたが、仕事とボランティアの両立生活を経て2012年にホームレス支援のNPOに転職しました。ホームレスの方々の事情を聞く中で、その状況は本人だけの問題ではなく、社会の様々な環境も影響していることに気づいたんです。私が入ったNPOは、生活保護や就職が決まって路上からアパート暮らしに移った人たちが仲間から離れて孤立しないような地域作りにも取り組んでいました。生活困窮者の支援活動をする中で、人々を「繋ぐ」役割の大切さを感じたんです。1人・1団体でできることには限りがあるので、いろんな方と連携することで、生活に困っている方の支援をしていました。北海道に移住をしたのをきっかけに、「繋ぐ」仕事をしたいと北海道NPOサポートセンターに就職をしました。そのような形でサポートセンターでの仕事が7年間。そして昨年、札幌市議会議員選挙に当選しました。

I:定森さんが札幌市議会議員を目指したきっかけはなんですか?
S:政治に関心をもつ大きなきっかけはNPOでホームレスの支援をしたことですね。ちょうどそのとき生活保護制度そのものへの批判が大きくなっていたんです。その結果、生活保護の受給額を引き下げるっていう動きになったことが信じられなくて。こちらが現場で頑張ってるのになぜそのような判断を下せるのだろうとどちらかというとネガティブな意味で政治に対して印象を持ったんですね。いろんな現場のNPOの皆さんの活動によって地域が成り立っているのを見て、そういったものをしっかり後押しするような、政治をしてみたいなって思って、政治家を志して、今に至ります。

I:定森さんが 特に力を入れて取り組んでいること、また取り組みたいことはなんですか?
S:政治家になっていろいろなテーマに取り組んではいますけれども、大きなことの一つに、NPOの中間支援(活動の応援)に近いことをしています。政治と行政とNPOを繋ぐような役割は政治家だからこそできたりするので、それはやっていきたいなと思っています。

◆NPOの一員としての取り組み

I:アパートで孤独を抱えている人たちにはどのように声をかけて繋ぐ活動をされていたのですか?
S:ささしまサポートセンターというNPOにいたんですけれど、彼らには路上で出会ったり、住まいが無いっていうことで相談に見えるんです。私達が生活を整える支援をして、アパートに移るときは住所を教えてもらっていました。そうすることで郵送物を送ったり、イベントに呼んだりしてきたんですよね。その積み重ねでだいたいいつも400人くらいと交流していました。

I:札幌にはどのくらいホームレスの方がいらっしゃるのですか?
S:札幌の路上生活をしているホームレスは100人もいないと聞いています。ただ難しいのが「ホームレス」には定義が二つあって、一つは「路上で暮らしている」ということで、もう一つは「安定した住まいを持っていない」ということです。日本のように法律上、路上で暮らしてる人をホームレスと言っている国もあれば、そうでない国もあります。先ほどの100人いないというのは路上生活者のことでこの数は全国どこも相当減ってきています。一方で、安定した住まいを持っていないという意味のホームレスの数は、大きく減っていないのではないかと言われています。ネットカフェや友達の家などで暮らしている人たちがいるので、具体的な数は把握できていません。私がホームレス支援していたときは安定した住まいを持っていない方からの相談が7割方でした。他に多いのは解雇されて会社の寮を出なければならない方の相談でした。

I:ホームレスの方の数は新型コロナウイルス感染拡大によって増えましたか?
S:関心があったので団体さんとも結構やり取りをしていたんですけど、ホームレスの方の数はそれほど増えてはいません。コロナが起きた直後は、ホームレス(住宅を喪失した方)からの相談件数は3割4割増えました。ですが、1年経たずして相談件数は落ち着いたとは聞いてはいます。

I:今までの経験で印象に残っていることはありますか?
S:私が過去にしていたホームレスの支援は関連する法律などがほぼない時代においてとても先駆的なものだったんです。リーマン・ショックによって現場のNPOの手に負えない状況になったことで、国が生活困窮者を支援する法律を作って、公的な相談窓口を整備していったっていうのが2015年。NPOの取り組みってすごく先駆的だけれども規模としては小さいことが多いですよね。だけれど、取り組みに社会的な必要性があれば、公的な機関がしっかりと整備をしていくってこともできるんだと学びました。

◆議員としての活動と苦労

I:生活支援等福祉系の話題は市議会でも増えているのですか?
S:そうですね、私は自分の経歴もあって関心があるので議会でも取り上げては来ました。全体の風潮としてはコロナというより物価高騰は結構話題にはなっていますね。
やっぱりいろんなものの物価が上昇しているので、生活が大変な人は増えているのではないかということは、札幌市の議会でもよく話題になりますね。結構市議会は暮らしに身近なことのやり取りが多いので、国よりももう少し親近感がわく話が多いように思います。

I:活動の中で一番大変だったことはなんですか?
S:やっぱり当選するまでが一番大変でしたかね。
準備期間は半年くらい。3月末に選挙で、前年の12月まではサポセン(北海道NPOサポートセンター)の仕事をしながら、当選に向けた準備をちょっとずつやっていました。年明けからは活動に専念していて、まずは事前にそういう準備をしていることをいろんな方に知ってもらわなきゃいけなかった。 選挙のための活動って手応えみたいなものがないので、不安はありました。
議員になってからは、議会での質問を作るのには苦労しました。初めてのことなので、どういう質問にしたら成果が出るのか、とか新人ですからその辺がよくわからなくて。あと作文が苦手なので、原稿を書くことにも苦労します。

I:市議会議員の定森さんにとって人に響く話し方はどのようなものですか?
S:議員としても難しい悩みです。
私もあまり話すのが得意な方ではないですし、書くのはもっと苦手なんですけれど、そうですね、相手は自分とは違う人だということは意識してます。私は福祉の話になると、知らず知らず専門的な話や言葉を使いがちですからね。だけど、相手は基本的に基礎的な知識だけを持っていることを前提に話すことは大切だと思っています。世代も違えばいろんな感覚も違ったりすることあると思うんですよね。そういうのにも結構気をつけなきゃいけないなとはいつも思っています。知識もそうだし経験も人それぞれ違いますからね、そこは本当に気をつけないと思っています。

I:定森さんにとってどのような演説が人々の心に響く理想的なものですか?
S:自分が力を入れてることって、特に感情がこもるじゃないですか。内容の詳細まで伝わらなくてもいいけど、何か子供のことをさっき話してたな、困窮者の話してたな、地域作りの話をしてたな、って。「この人頑張って訴えようとしてるな」って、そういうのが伝わればいいかなと思っているから、中身のある話をしようと思ってわりとたくさん話すタイプです。

◆学生へのメッセージ

I:大学生にとってどのような経験が大事だと思いますか?
S:何か特定の教科を学ぶよりかは、自分なりに自分がしたいと思う経験を積み上げていくことが大事だと思う。私は就活のためにボランティアをするとかじゃなくて、その時興味を持ったことをできたことが良かったなと感じていて、今もそのときと生き方は変わってないと思います。あとは国際協力に関心あったのでそれに関連する本をたくさん読んでました。勉強したことを今はほとんど覚えてないけれど、何か大事なことは蓄積されてるかなって気はします。大学生のうちは幅広く勉強ができるのが魅力的だし特権だと思うので、ちょっと勉強してみるといいと思いますね。

◆あとがき

今回のインタビューは現役大学生として特に興味深かったNPO関連の活動や「伝える」ということ、そして定森さんが大事に思う経験について詳しく聞かせていただきました。多様なバックグラウンドを持つ人々を「繋ぐ」こともそれぞれが互いに歩み寄ることもどちらも大切です。ほんのわずかでも私たちの興味や関心が、定森さんのように未来に繋がっていけば良いなと感じています。


左からインターン生 山本、奥田そして定森さん


記事作成:北海道NPOサポートセンターインターン生 山本(小樽商科大学)、奥田(北海学園大学)


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