
おかえり、こころ
わたしの''楽しい''という感情、どこへ行ってしまったのだろう。
最近、自分の心を満たせていない。
わたしの感情を取り戻すために、カメラロールを遡ってみたけれど
ぼんやりとしか楽しかった記憶を思い出せない。
鬱々とした気持ちで、ただ消化していく日々。
焦りすら感じなくなってしまった。
ある仕事終わり、わたしが今の会社に入るきっかけとなった憧れの先輩からDMが来ていた。
''h nさんアートとか好きだよね?お誘いしたいことがあって、良かったらご飯に行かない?''
え、なになに…!
先輩からメッセージが来ただけで嬉しいのに、とても興味深いお誘い。
久しぶりに心が躍る感覚。
その日は雨だった。
駅で待ち合わせ、行ってみたかった居酒屋へ。

初めは何気ない仕事の話をした。
まだ1年も働いていないので、先輩とは同じ店舗になったことがない。
それでも弾む会話が心地よい。

こういう一品を家で作れる人間を目指そう2025
最近、働くことの難しさをひしひしと感じていることを話すと
''わたしもね、役職に就いたときはたくさん泣いてたよ''
クールで文句を言わず淡々と仕事をする人、というイメージを持っていたから、意外だった。
''わたしは、自分だけ得すればいいと思っている人が嫌なんだよね''
あ、先輩もちゃんと人間だ。

仕事に対する温度感。
先輩とは合う気がした。
''早く一緒に働きたいね''
そんな風に言ってもらえるのが嬉しい。
''今日はこれに誘いたくて…''
先輩がごはんに誘ってくれたのは、
知人が開催しているという''アート教室''に行かないか?と誘うためだった。
''行きたいです!''
間髪入れずに返事をして
そこから、わたしのときめきスイッチが入った。
''クリスマスリース作りたいんです''
''ピクニックしながらお絵描きとかもしたい''
''陶芸もタフティングもしたい''
その先輩のことが、とっくに大好きになっていたわたしには
彼女とやりたいことが溢れて仕方がなかった。
先輩も
''いいね、やろうやろう!''
と、全てを受け止めてくれる。
''旅行とかも行きたいよね。わたしの実家にも来て欲しい''
えええいいんですか( ; ; )
西日本の島が実家だという先輩。
そんなの楽しいに決まっている。
''何人かでウィークリーマンションとか泊まりたいです!''
''都内のゲストハウスでもいいね!''
''ホームパーティもしましょう''
お互い(ほとんどわたしが)
思いつくままにやりたいことを言い合った。
''じゃあ○○さんに連絡しておくね''
仕事の早い先輩は、テキパキと実現に向けて動いてくれる。
あまりにも会話が弾み、2人とも帰りたくなくなってしまったので2軒目へ。

静かな店内に、雨の音が響く。
''今日が雨でよかったですね''
''ほんとだね''
ちらほらとお客さんもいたので、心に溜まった熱をそっと抑えながら、しっとりと会話を楽しんだ。
気がつけば終電などとっくになくなっていて
''そろそろ閉店なので…''
とオーナーに気を遣わせてしまう始末。
こんなに清々しく終電を逃したことはなかったし
後悔など何一つなかった。
''楽しい''
久しぶりに思い出した。
おかえり、わたしのこころ。
朝起きて、決まった流れで支度をして、人に押し潰されながら通勤する。
浮き沈みしながらも仕事をこなし、ごはんを作る気力もなく帰宅する。
増えていくコンビニ弁当の残骸。
思い描いていたより、圧倒的に彩度のない社会人生活。
わたしこのまま、20代を終えるのかな。
そんな日々に、先輩が彩りをくれた。
毎月4日ほどしか休みを取っていなかった生活を見直し、12月は少しだけ休みを増やした。
自分が心躍る方向に進むための時間。
さっそく、先輩と''ピクニックをしながら絵を描く''が実現する予定で、わくわくが止まらない。
やっぱり、出会えてよかったな〜
わたしの選択が彼女との出会いを生んでくれたし
''○○さん好きなんです!''と周囲に公言していたことも功を奏したと思うと
過去のわたしを褒めてあげたくなる。
よくやった!わたし!
こうして、彩度を取り戻す瞬間が何度でもあるから、わたしはまだ生きるのを辞められない。