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ひとりで分譲マンションを買ったあとの話

【2年前に分譲マンションを買った「あと」のことについて話しているだけの雑文】

 2年前、ひとり暮らしで分譲マンションを買った。
 1LDKである。分譲にしては小さめだが、ひとりで暮らすには充分な広さである。

 マンションを買うに至るまでの話はよく聞くし私もよく読んだが、買ったあとの話は、そういえばあまり聞かない。高揚感が薄れ、新生活が生活になってしまうせいだろうか。

 あれから、季節がふた巡り。
 この家での生活も、もうすぐ丸2年。
 今の時点で思うあれやこれやを、書き残しておこうと思う。もしかしたら10年後の私と家が、面白がって読んでくれるかもしれないのだし。

・お金への意識が高まった
 最大の変化はこれだと思う。
 今までだって、毎月家賃を払っていた。それが、住宅ローンの返済と名前を変えただけだ。なんなら、金額も大して変わっていない。そうなるようにローンを組んだからである。
 けれど現在、私は都合8桁の借金を抱えているわけである。やっていることは変わらなくても、この事実は大きい。
 この大金を、何十年もかけて返していかなくてはならない。決して無理な予定を組んでいるわけではないが、そうはいっても、将来なにが起こるかはわからないのだから、備えは大切である。
 毎月決まった金額をこつこつと返す。それとは別に、管理費相当の額も積み立てておいて、まとまった金額になったら繰り上げ返済する。
 節約できるものは節約して、買ったものは大事にする。
 楽しいことにはぱーっとお金を使うけれど、無駄遣いはしない。
 もともとそういう性格ではあったのだが、その傾向が「住宅ローン」という縛りで強まったように思う。

・固定資産税は悲しい
 買ったときに不動産取得税払ったじゃないか!
 と、毎年咆哮している。義務だと解ってはいるのだが、心情としては理不尽である。せめてどちらかにしてほしい。

・快適
 暮らしてみると、シンプルに快適である。
 これは条件にもよると思うのだが、例えば月々10万円の支払いとしたとき、賃貸よりも分譲のほうが快適な家に住める――と思う。設備が良いとか、壁が厚いとか、断熱性が高いとか。
 私の場合、前の家が築30年を超えるアパートだったというのも大きかった。隣の部屋の洗濯機の音とか、咳の声とか、場合によってはトイレを流す音まで聞こえる生活だったわけである。
 今の家は、静かである。窓を閉めていると、雨が降り出したことに気づかず困ってしまうほどである。隣の人の生活音など聞こえたことがない。
 エントランスは立派だし、共用設備も適度に整っている。私はもう、宅配ボックスのない生活には戻れないと思う。

・掃除をよくするようになった
 私が買ったのは新築マンションである。つまり、私がこの家の最初の住人だ。埃ひとつない、ぴかぴかの家。
 一方、前の家には10年住んだ。旅立つときにはもう随分くたびれていて、あちこちが汚れていた。もともと古いアパートだったのだから尚更である。
 決して、日々の掃除を疎かにしていたわけではない。ただ、初めてひとりで住んだ家だったので、どうやったら汚れを予防できるかとか、どういう場所が傷みやすいのかとか、そういうことをまるで考えずに住んでいた。
 10年住むと、家はどういう汚れかたをするのか。私は前の家でしっかり学んでしまったわけである。
 私は誓った。このぴかぴかの家を、なんとかこのまま維持しようと。
 入居の日、私が真っ先にしたことは、家中の換気口にフィルターを貼り、水回りの隙間に汚れよけのマスキングテープを貼ることだった。
 引っ越して以来、毎朝クイックルワイパーを掛けている。飽きるまでは続けようと思って気軽に始めたのだが、飽きることなく2年経った。
 恥ずかしながらこれまでベランダ掃除などしたことがなかったのだが、今ではせっせと手すりを拭き、排水溝まで掃除している。
 今のところ、そこそこ清潔な家を保っている、と思う。
 なお、多少の散らかりはご愛敬である。

・インテリアに興味を持つようになった
 名実ともに、ここは私の城である。
 であるならば、快適に過ごしたい。居心地の良い空間にしたい。
 これまであまりインテリアというものに興味を持ってこなかった。皆無というほどではなかったと思うが、少なくとも、素敵な部屋をつくろうという意欲は薄かった。狭い家だったし、いつ引っ越すかもわからない仮住まい、という気持ちが大きかったのだ。
 今は違う。私はこの家で生きていくつもりである。
 ひょんなことから、YouTubeの某インテリア情報チャンネルに夢中になった。動画を参考に部屋を片付けたり、飾ったり、友人にチャンネルを勧めたりした。
 この家が、ますます好きになった。

・家に友人を招くようになった
 振り返ってみると、前の家に友人を呼んだことはほとんどなかった。狭い家だし、特に人を招く理由もない。
「引っ越したから、ぜひ遊びにきてね!」
 引越直後の誘い文句は、2年経った今でも、社交辞令ではなく文字通りに機能している。せっかく綺麗にしているのだから見にきてほしい、という、ちょっとした自慢の気持ちがあることは否定しない。
 なにより、定期的に人を呼ぶと、定期的にしっかりと掃除をすることになる。家を綺麗に保つには人を招くのが良いというのは本当なのだなと、身をもって実感している。
 あいにく料理の腕はからっきしなので、気の利いたパーティメニューなどは出せない。なのでピザやお寿司を頼む機会が増えた。友人たちがお菓子やお酒を持ち寄ってくれるので、各地のおいしいものに出会う機会が増えた。
 気の置けない友人たちと、おいしいものを囲んで、気兼ねのないお喋り。公共の場ではないので、秘密の話も堂々とできる。
 休日の楽しみが増えた。

 この快適な家が自分のものである、という満足感と安心感。それに尽きると思う。
 もちろん、100点満点ではない。もう少し広ければ良かったかなと思うこともあるし、もう少し窓が大きければなと思うこともある。けれど、隅々まで掃除が行き届くし、部屋の中が眩しくないのも都合が良い。私は眩しさに弱いのだ。

 ここは私の城だから、よほどのことがなければ追い出されることはない。
 ここは私の所有物だから、大抵のことは自由にできる。

 だから、家を買って良かった。

 もうすぐ2年。まだまだ2年。
 これからも、この家と一緒に暮らしていくつもりである。

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