AIエージェントを用いたクエリ作成とワークフロー最適化
Elasticが仕掛けるセキュリティ分析の新時代──LangChainとのパートナーシップで実現した「Elastic AI Assistant」
どういうAIエージェント?
Elastic AIアシスタントは、主にセキュリティアナリストの業務を支援するために設計されたAIエージェントで、以下のような機能を提供します。
アラート要約と推奨プレイブックの提示
ワークフローガイド
クエリ生成と変換
エージェント連携アドバイス
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Elasticとは
リアルタイムのSearch AIを提供する企業で、データの活用と個人情報保護を両立させながら、インフラの最適化やスマートなアプリケーションの構築を支援しています
Elasticは、AIと検索技術を組み合わせることで、膨大な構造化・非構造化データから価値あるインサイトを抽出するソリューションを提供しています。
そんなElasticが、LangChain と LangSmith を活用して新たに生み出したのが「Elastic AI Assistant」。
ここでは、その仕組みや開発背景、さらなる可能性を中心に解説します。
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なぜElasticがAIアシスタントを投入したのか
Elasticは検索・セキュリティ・オブザーバビリティ(可観測性)といった領域でクラウドサービスを展開しており、従来から大規模データを迅速に分析する強みを持っていました。しかし、セキュリティアナリストの作業負担は依然として大きく、異なるSIEM(Security Information and Event Management)からのクエリ移行やアラートへの対応などには時間と専門知識が求められていました。
そこで誕生したのが「Elastic AI Assistant」。エンタープライズ向けのプレミアム機能として、以下のようなタスクを大幅に効率化してくれます。
アラート要約と推奨プレイブックの提示
なぜアラートが発生したかを短時間で把握し、組織に合わせた手順(ランブック)を自動生成。ワークフローガイド
例外ルール追加やカスタムダッシュボード作成など、操作手順をガイド。クエリ生成と変換
他社SIEMのクエリや自然言語で書かれた問い合わせをElastic用のクエリ(特に新開発の ES|QL)に自動変換。エージェント連携アドバイス
最適なデータ取り込み方法などを自動で提案し、運用効率を向上。
これらの機能により、セキュリティアナリストのMTTR(Mean Time To Respond)を大幅に削減し、クエリや検知ルールの作成もスピードアップ。多忙を極めるセキュリティチームに「時間を取り戻す」体験をもたらしています。
LangChain × Elasticによる柔軟かつ拡張性の高いAI設計
Elastic AI Assistantは初期設計から「ユーザーが自分で選んだLLMを使える」ことを重視しており、OpenAI、Azure OpenAI、Amazon Bedrockなど、さまざまなベンダーのモデルに対応しています。
LangChainがもたらすメリット
LLMの切り替えを容易に
LangChainは複数モデルを抽象化して扱えるため、Elastic側で特定ベンダーに依存せず、ユーザーにも柔軟性を提供。RAG(Retrieval Augmented Generation)の標準装備
必要な情報を事前に検索・抽出し、その結果をLLMに提示するフローが作りやすい。セキュリティ関連のドキュメントやルールを参照して、ES|QLクエリを生成。Elasticのベクトルデータベースとの親和性
すでにLangChainがElasticとの連携モジュールを備えていたため、最低限のエンジニアリングで素早く実装できた。
LangSmithでトレース・モニタリングを強化
トークン使用量や処理時間を可視化
どのようなプロンプトがモデルに送られ、何トークン使われたかをトレースしやすい。コストやパフォーマンス面の調整に役立つ。異なるモデル間の比較を容易に
たとえばOpenAIとAzure OpenAIでの出力品質やコスト差を簡単にテストし、均質なユーザー体験を目指すことが可能。回帰(品質の後退)防止
新機能や修正を行うたび、LangSmithで出力の変化を追えるため、デグレードを発見して本番稼働前に防止できる。
実装例:ES|QLクエリ生成・Automatic Importを支えるLangGraph
Elasticが独自に開発した新しいクエリ言語 ES|QL をユーザーに使ってもらうため、AIアシスタントが自然言語や他システムのクエリを ES|QL に自動変換します。この背後で活躍しているのが、LangChain と並んで使われる LangGraph。
LangGraphでワークフローを可視化・制御
セキュリティアナリストの要求に対し、複数ステップを並列や条件分岐で処理し、最適なクエリ生成やアドバイスを行う。自動インポート(Automatic Import)
サンプルデータからインテグレーション設定を自動生成する機能。LangGraphで状態管理と分岐処理を整理し、わずらわしい設定作業を大幅に削減。
下記のように、LangSmithのトレース機能を使うことでクエリ生成やデータインポートの各ステップを可視化し、開発チームは問題発生時に素早く原因を特定できます。
セキュリティを意識した実装:データマスキングとRBAC
Elasticのユーザーはセキュリティ専門家が多く、機密データの扱いには慎重です。そのため、アプリケーションレベルで以下のような配慮が施されています。
データマスキング
機密性の高い情報をLLMに送る前に伏字化し、情報漏洩のリスクを低減。トークン使用量の可視化
アプリ上でトークン数をリアルタイムに確認できる機能を提供し、利用状況を透明化。Role Based Access Control(RBAC)との統合
管理者がユーザーごとにAIアシスタントの利用範囲を設定し、不要・過剰なアクセスを制限。
これにより、セキュリティ意識の高い企業でも安心してAI機能を利用できるように設計されています。
今後の展望:LangChainエージェントフレームワークの活用へ
Elastic AI Assistantは「知識アシスト」からさらに一歩進んだ領域へ向かう計画です。
次のステップとして、LangChainのエージェントフレームワークを活用し、ユーザー承認のもと、自動でタスクを実行できるようにする構想が進行中。
これが実現すれば、セキュリティアナリストは日常的なタスクをさらに大幅に削減でき、より高度な脅威検知や戦略的業務に注力できるでしょう。
コミュニティへの貢献:実装コードの公開
Elasticはオープンソースの精神を大切にしており、今回のAIアシスタントを支える一部のコードを オープンに公開 しています。また「Elastic Search Labs」でML関連の教育コンテンツを提供するなど、多くの開発者やユーザーが学び・共有できる場を拡充中です。
まとめ
Elastic AI Assistantは、セキュリティ運用におけるクエリ生成やアラート対応、ワークフロー管理を包括的に支
LangChain、LangGraph、LangSmithとの連携によって、多様なLLMを扱いながら、柔軟かつスピーディな開発・運用を実現。
さらにセキュリティ面でも高い配慮を施し、エンタープライズ向けとして十分な信頼性を備えています。
こういったAIエージェントの事例や実装方法を整理していますので、興味がある方はXをフォローいただけると役立つかなと思います。