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【うたかたの日々】恋は盲目だけど目が覚めると急に世知辛い現実が迫る!

今回紹介するのは1940年代のフランス小説であるヴィアンの『うたかたの日々』です。なんといってもファンタジーな世界観が特徴的です。
「ニキビよ消えろ」と願えば消える、クロエという恋人とデートする日は雲が二人の前にやってきてパッとはじけてシナモンシュガーの香りが残ったりする。そこまで聞くとなんだか楽しいような気がするが、クロエと結婚して楽しい日々を過ごすというシーンが半分を待たずにして終わる。

残り半分で何があるかといえば、ジェットコースターな転落人生が来るだけだ。クロエは病気を発症し、私財も尽き、どん底のような人生がやってくる。殺人歯車が登場したり、だんだん狭くなっていく部屋に押しつぶされそうになったり酷いものだ。ダークファンタジーになる一方で、どんどん現実的になっていく。借金の取り立てがきたり、葬式をあげる費用でもめたり。まるで夢から覚めたときの感覚のようだ。

これはつまり恋愛の楽しい盲目期間が終わったことを意味しているのだろう。主人公のみた心象風景は実は何の色彩もないつまらない世界だった。筆者のボリス・ヴィアンは39歳のときに心臓発作で亡くなっている。もともと心臓に病気があって、あるとき自分は長く生きられないと悟ったそうだ。ヴィアンの見る風景もそのときかわったはずだ。
時間は無限だと思っていたとき、死を意識して時間が限りあるものだと知ったとき。今までの何気ない日常が急に大切なものに思えたとき、見える風景はどう変わったのか。現実やときの流れは蕩々と過ぎていくか、それをどう見るかは当人次第なのだ。

本作は何度も映画化されているが、なぜか2001年には日本版として映画化されている。ちなみにクロエはともさかりえである。

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