新刊のお知らせ
その時代、その国では狂気がすべてを支配し、常軌を逸した犯罪が合法的に行なわれた。たったひとりの狂った男の言葉によって。
収容所から解放された青年を待つ運命、粛清のさなかにうまく立ちまわった男のたどった人生、すべての人間性を否定する強制収容所の風景、異常な社会下で科学者が行なう戦慄の実験、混乱のさなかに究極の選択を迫られた軍人の葛藤、悪夢の戦場からの地獄のような脱出行……
2024年12月1日に最新刊、セシル・スコット・フォレスターの傑作短編集『悪夢』を刊行いたします。
「海の男/ホーンブロワー」シリーズで我が国にも海洋冒険小説のブームを巻き起こしたフォレスターですが、この『悪夢』はそうした戦記物ではなく、ナチスが政権を握り支配していた時代のドイツを舞台にした短編作品を10編収録した短編集です。
収録作品の多くは、サスペンス、あるいは恐怖小説にジャンル分けされるものです。大海原で帆船を駆る海洋冒険小説とはまた違ったテイストの作品の数々は、著者フォレスターの作家としての幅の広さを示すものでしょう。
ナチス支配下のドイツに現出した狂気の社会、それは現在でも世界のどこかの国で行なわれているものかもしれません。決してナチスだけが特異ではなかったのかもしれない。そんなことを感じさせる作品集でもあります。