展示記録_for
文化服装学院 文化祭2024
美術部にて有志で展示を行いました。
あのころ、わたしの救いとなってくれた彼女へ。
いま、救ってくれている、彼女へ。
あのころ感じとった温度と、光を。
廊下、冷気が首筋に触れる。
窓外からの光、高い空、燦めく画面。
思わず目を細めてしまったことを覚えている。
指先を掌で包む、触れる。
乾ききっていない絵具が残るパレットにオイルを載せる。
青色が溶け出し、突き刺さるような匂いがした。
思わず、少しふらついた。
さっきまで聞こえなかった声が、イヤホンの外から聞こえてくる。
すこし荒いギターの音越しにそれを聞いていた。
軽く手を拭ってイヤホンを付け直した。
オイルは空気に溶けてのぼっていった。
撓る筆をクリーナーにつけて、ボロ雑巾で拭う。
まだちょっと汚れてたと思う。まあいいか、とツナギの裾で適当に拭いた。
たしか、そうだった。
油壺の蓋を閉める。
固まった絵の具がついて綺麗に閉まらなかった。
冷たい水道で手を洗った。
麻痺した指先の感覚を、自動販売機のオレンジ色のボタンに押し当てる。蓋は開けないで、掌で転がしていた。赤くなった指はうまくプルタブを起こせなかった。
大きな油絵の画面にいる女の子は、目を合わせてくれなかった。
わたしとは違う制服を着て、同じ着崩れ方をしていた。
ありふれた日常だった。
でも、もう、あんまりおぼえてない。
輪郭からゆるやかにわたしのなかにとけていく。
はっきりと残っていない、どこかで見たことはあるけれど、朧気な、青色の記憶。
あの頃あんなに鮮明だった記憶は、少しずつ、ぼやけて、滲んでいく。
それでも彼女は、わたしの救いだった。