良元優作の帰り道を聴いて
2023.1104島根県隠岐海士町で高校生が主催するAMAFESという音楽フェスがおこなわれました。
紙やダンボールで手作りされた装飾は、時折強くなる雨に耐えながら最後まで彼らの意思を示したメッセージを掲げていました。
高校生は、新宿ルイードのScrap Alleyを卒業して少しのルールと自由の中で活々と青春を楽しんでいるように見えます。
賑やかに盛り上がるステージが続く中、姿勢を正した良元優作がイスに座りギターを弾き始めます。
異様に強いアーティストの匂いを纏った彼は、座れ座るなと息巻いたり、ニッコリと笑ったり。
次の瞬間、鳥が風をつかむような軽やかさでギターを操り、あっという間に聴く人をを惹きつけます。
クセのあるよく響く声が心地いい。そう思った時に、待っていた帰り道をスッと歌い始めました。
いい歳をして本当に恥ずかしい話、涙が止まらなくなって困りました。
就職をせずに演劇や音楽をやってきた連中なら大抵は、結婚あるいは30歳を迎える前に夢と現実を考える節目がきます。
それなりに後ろ盾があるなら、それは些細な節目なのかもしれない。これまで生きてきた中で資格や能力を表せるものがなければ、社会は冷やかな目で審判を下します。
やはり目に見えないレールは存在していて。けれども、家族や家を持つこと、人並みの暮らしという誰かが作り出した小さな夢が、年を重ねるにつれて離れていくような気がしてしまいます。
そして社会から見れば自助努力で解決できそうな事というのは、自分にとって絶望的に続く高い壁であったりします。
ただ帰り道の先には待っている人がいる。それがなにより嬉しいこともよくわかる。
だから帰り道は温かい歌なんですね。