大きなまちづくりについての考察その4
小さな島ではあらゆる分野で人手不足となり、一人ひとりの力が意識されます。人が減ると供給されなくなるものがあります。
たとえば、医療受診は隣の島へ船で渡らなければならないかもしれません。直行便のフェリーは島に着かなくなるかもしれません。今の社会インフラを維持するために人口は一つの基準になります。
供給が途絶えれば、減少は急加速して10年後に3〜4割減ということもあるかもしれません。また、人口構成は団塊の世代がボリュームゾーンであるため、働ける人の数はたとえ高齢化率が下がっても5年前と5年後ではまったく異なる状況になっていそうです。
この先、デジタル化が進んだとして、離島ではどの程度労働力が減らせるのでしょうか。不便な場所になればなるほど、デジタル化で解決できる問題はそう多くありません。
人口を維持するためには、移住者を増やすことが最大の打ち手とされています。沢山の人に住んでもらえれば地域社会は維持される。
しかし日本全体が少子化による人口減少、中央一極集中により地方はどこも移住者の誘致に力を入れており売り手市場です。
移住を望む人たちはどのような欲求をもっているのでしょうか?自治体は誘致をする側としてその欲求を理解できているのでしょうか?
都市部で暮らしてきた人たちが地方移住をする場合に
・地域コニュニティでうまくやっていけるかどうか
・希望の収入が得られるか
の2点が最も心配だと思います。
これまで、沢山の人が移住し、そして離れていきました。それぞれの事情や想いがあるなかで去っていく人たち。
「田舎はゆっくりのんびり暮らせる住みやすい場所ではない。」
という前提条件を提示して移住者の受入れをしている。
しかし「自然の中でゆっくり暮らすこと」と、「田舎のコミュニティで辛抱すること」
一方を追求するともう一方を犠牲にしなければならないという、二律背反のトレードオフで成り立つような「辛抱することはしかたがないこと」にして移住者誘致をしているのかもしれません。
移住者の住みにくさに繋がる問題は非常に見えにくく、これまで「個々の問題」にとどめて取り上げられることがありませんでした。しかし、多くの移住者はこの島よりも快適便利な住みやすい場所からやってきます。
都会よりも厳しい文化的生活やジェンダーギャップ、田舎のしきたりの全てを前提条件にしてしまうと、田舎暮らしに適応できる人、辛抱強い人だけが生きていける場所であることを宣言しているだけになってしまいます。
これらの問題は田舎だからこそ強く感じることですが、日本社会全体を覆っている問題である場合も少なくありません。
そう考えると、定住対策に関していえば、地域課題ではなく社会課題を解決していくことが、その場所で暮らす価値を高める大きな要因になることがわかります。
当たり前のことを言っている様に聞こえるかもしれませんが、行政に声として届かないまま埋もれてしまっていることは、大なり小なりあります。
その声の中身は、すでに移住をした人とこれから移住する人に共通する問題である場合が多いのです。
住みにくさにつながる問題が顕在化すれば、その問題を解決するための方法を考えることができます。
自治体の掲げる地域課題がコモディティ化する中、定住対策において「自然の中でゆっくり暮らすこと」と「田舎のコミュニティを尊重しつつ負担なく暮らせること」のバランスを取るために、それらを両立させる環境をどのようにして作るか?
それがこれからの地方に求められているように感じます。