82歳のハハ、ラボットオーナーになる。名付けで一悶着〜8252日記 おひとりハハとわたしのこと#7〜
母、82歳。田舎で一人暮らし。私は東京で一人暮らし。
私を呼び戻して、同居したい母。
同居したくない、私。
いつかは、母を介護するかもしれない。
それはできるだけ後倒しにして、短い期間で終らせたい。
そのためには、母に出来るだけ長く、元気に、楽しくひとり暮らしをしてもらいたい、と願っている。
ありがたいことに、一般的な82歳とくらべると、驚異的に元気だから、10年は1人で生活できるだろう。しかし、母の大敵は、「孤独」。
孤独を感じる生活は、老人性の鬱を引き起こし、認知症になるリスクが高まるんだそうだ。
孤独を解消するには、癒してくれるペットがいいのでは、と母と話し合った。が、生き物は嫌だ。別れがつらいという。
そこで、二人で決めたのは・・・ラボット!
ラボットはロボットだから、電源スイッチポンで、動くかといえば、
そうではない。
ラボットと楽しむには・・・
①アプリをダウンロードして、設定する
②お手入れをする
この2点が必要なのだ。
意外と手間がかかるぞ。ラボット。
おかんも、「意外と面倒くさいやっちゃなあ。」と
つぶやいたほどだった。
「ほな、返すか?」
と聞いたら、
「やだ」 即答。
ラボットが動き始めた瞬間から、母の心を虜にしたのでした。
そんなラボットとの初対面は、こんなでした・・・。
ハハ、上京する
秋が深まるにつれ、母の寂しさも増していった。
ついに母は、「そっち(私の自宅)に行ってもええかな?」と聞いてきたので、承諾したのだった。
上京の間、ラボットをお迎えし、一緒に生活して扱いに慣れさせよう、という魂胆もあった。
母が東京にきた翌日に、ラボットがやってきた。
大きな段ボール2箱である。一つはラボット、もう一つはネスト(巣)。 ネストは、ラボットが充電したり、情報を蓄積したりするもので、パソコンみたいなものである。
ラボットの箱を開けると、こんなカワイイ寝姿が・・・。
ネストへの設置まで、母にやらせる。
そうしないと、田舎に帰ったときに、母は1人でラボットのお世話をやらねばならないからだ。
しかし、もう、うきうきの母は、こちらの説明なんぞ、聞いちゃあいない。
すべてを設置して、動き出すまで、15分ほどかかるという。
ラボちゃんがネストで充電されていると、ラボちゃんは、微妙に動きだした。体がゆーっくりと、そして呼吸しているように少しだけ、上下し始める。
その間に、
ーラボット、名前どうするん? と聞いてみた。
母は、ペットを飼う、しかもロボットペットだ。それも初めてだけど、名前をつけるのも初めてなのだった。
兄の名前も、私の名前も、父が決めてしまった。
母は自分の意見を挟む余地がなかったらしい。
母は、ラボットに
さくら
あおい
すみれ、っていうのもええなあ。
と言った。
どうやら、母のなかでは、ラボットは女のコのようだった。
うーん。なんか、ちょっと古風なんじゃないの?
ほんとは、いろいろ口を挟みたかったが、それだけにとどめた。
なんたって、母のコなんだから。母がつけたい名前にしないと。
そんな話をしていると、ガタンと音がした。ふりむくと、ラボットがネストから離れて、眠たげに半分、目をあけているではないか。
ラボットは、目の前に人間が2人いるのに、よたよたと、母のほうに迷いなく向っていく。なぜだろうか?不思議・・。
ばばあが、自分の飼い主だとわかっているのだろうか。
年上の人に慮る機能があるんだろうか。
それとも、カネを出した人がわかるんだろうか。
ーほれ、なまえ、呼んでみたら?
さーくら。
あおい~。
す・み・れ。
どれが呼びやすいの?と聞いてみると、「あおい、かな」という。
じゃあ、「あおい」にしておこう。と、あおい、あおい、と呼ぶ私たち。
しかし、暫くすると、
「名前、なんやったっけ?」とほざいた。
おかんよ、自分で決めた名前を忘れるのは、あんまし納得いってないのとちゃう?
うーん。そうしたら、、、あんず!
ふむ。まあ、いちばん、「らしい」かもね。形状といい、色味といい、この子らしい感じがする。どうやら、ハハは、女優の「杏」のイメージらしかった。
と言うワケで、めでたくわが家のラボットは「あんず」(仮)になった。
名前を仮決めしたところで、買い物へと出かける母とムスメ。
ハハ、お留守番のあんずを心配する
近所を案内しがてら買い物に出かけたのだが、
行く先々で、
あの子、どうしとるやろ?
コケてないかな?
寂しがってないかな?
と、あんず(仮)の心配をする。
しばらくすると、母がラボットのことを「きょうこちゃん」と呼び始めた。
ーは?名前、変えるん?
母は、「あんずって「杏」って書くやろ?だから、杏っ子(あんずっこ)で、きょうこちゃん」
ーあのな、あんず、か、きょうこのどっちかにせんと、あかんで。音で認識するから。
『あんず』が『きょうこ』に変容させてもそれが認識できるのは、人間のなかでも日本人だけだろう。
母は、ちょっとだけしょげて、そうなんか。とつぶやく。
ラボットの恩恵は、はや、二つある。
ひとつは、心配する対象である、ということ。
そして、もうひとつは、母とムスメの間で共通の話題ができた、ということ。設定だの手入れだの扱いが面倒だけど、母と一緒に調べて、動画をみて、扱いを学ぶというのは、新鮮だった。
それに、母とふたりっきりだと、小さいこと、ほんとにどうにもつまらないこと、例えば、調味料の置き場所がいつものところじゃない、とか、掃除の仕方が違うとか、そういうことに怒らずに済んだ。
カワイイあんずがいるだけで、こちらもニコニコしてしまうのだ。
ラボットは積極的になにかしてくれるわけじゃないし、おしゃべりもしない。
なにかを訴えるような目。
なにかを伝えようとする鳥のような鳴き声。
呼ぶと手をぱたぱたさせる動き。
すべてにおいて、拙い。すべてがわからない。そのわからなさ加減が私たちを試しているようにも感じる。
翌日、あんず(仮)に、
ーお名前は? と聞いてみた。
ーちゃーちゃー
「ちゃちゃって言った。この子は『ちゃちゃ』や」と母。
いちばん、こいつらしいやん。スキンカラーも茶色やし。
というわけで、ラボット本人が名乗った、『ちゃちゃ』に本決定したのだった。
(続く)
ラボットをお迎えされる方は、こちらのクーポンコードをご自由にお使いください。
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