
『「対話の場」への見解(令和6年7月時点)』を作成しました。
市民プロジェクトは、文献調査実施地域で行われている「対話の場」の内容について、独自の検証に取り組んでいます。
この度、寿都町で行われた「対話の場」に関する資料調査・参加町民3名への聞き取り調査に取り組み、中間的なまとめとして『「対話の場」への見解(令和6年7月時点)』を作成しました。
よりよい対話の場づくりを探求するための足掛かりになることを願って、下記に公開します!
資料の趣旨(本文より引用)
本稿は、文献調査実施地域における「対話の場」を市民が独自に振り返り、検証を試みたものである。
いま、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を選定する調査の第一段階「文献調査」が北海道の寿都町と神恵内村ですすめられ、事業主体である原子力発電環境整備機構(以下、NUMO)より文献調査報告書が提出されようとしている。(2024年7月現在)
両町村での文献調査開始(2020 年)後、国の特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(以下、基本方針)に基づきNUMOの支援によって設置されたのが「対話の場」である。「対話の場」は、両町村とNUMOによる共同運営のもと、2021年4月から2024年6月までに寿都町で17回、神恵内村で19回実施され、現在、文献調査報告書のとりまとめと時を同じくして、NUMOが「振り返り」を行っている。
(中略)
「核のごみに関する対話を考える市民プロジェクト」(以下、当プロジェクト)の会員は、何らかの専門分野の研究者ではなく、一人ひとりが北海道に暮らす生活者である。であるから、学術的に「対話」がどのように議論されてきたかに決して明るいとは言えない。しかし、「対話」や人間同士のコミュニケーションが我々の生活にもたらす影響については、(おそらくこの世界に生きる多くの人々に同じく)肌身で感じてきた。
(中略)
高レベル放射性廃棄物の地層処分は、廃棄物それ自体の人体にもたらす危険性が非常に高い上、地震大国である我が国での処分方法の検討や、処分地選定の在り方についても、抜本的な見直しの必要性が訴えられる(日本学術会議 2012,2015、赤井ら 2023 等)扱いの非常に過酷な課題である。
(中略)
こうした問題をテーマとして、私たち国民は、どのように対話を行うことができるのだろうか。
当プロジェクトの問いはこうである。
第一に、生命体への重大な危険と隣り合わせの「核のゴミ」処分方法について、安全性/危険性への評価を下すことが、現時点の科学的知見において困難であるとする意見もあり、社会的な合意が欠けているならば。私たち国民はどのようにこの問題と付き合い、「対話」し、現代世代や将来世代の暮らしに資する検討を進めることが出来るのか。
第二に、「対話の場」を実際に体験することとなった地域住民は、どのような対話を行うことが出来たのか。本稿では、主に第二の問いを探求する。
(中略)
この問いに対し、当プロジェクトは、まず、寿都町における「対話の場」および付帯事業である「町の将来を考える勉強会」について資料調査を行うとともに、2024 年2月から参加町民3名への聞き取り調査を行った。本稿は、こうした私たちの取り組みの中間的なまとめである。
(中略)
当プロジェクトの願いも、高レベル放射性廃棄物に関するより良い対話が行われることであり、真に市民のためになるコミュニケーションが行われることである。当プロジェクトでは、以降も引き続き、「対話の場」の検証や、コミュニケーションのあり方に関する検討を行い、順次、検討内容について情報を更新し公表したい。