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段違いのキック精度:サントリーサンゴリアス対クボタスピアーズ(4月3日)<2>

今日は再びラグビートップリーグ、サントリーサンゴリアス対クボタスピアーズのマッチレビューの2回目を。

 前回見たのは、ボールロストと得点機会の数だった。得点機会こそ1回サントリーの方が多かったが、ボールロストは両軍とも少ないがサントリーの方が多い。これまで見たところ、ボールロストが少ない方が勝率が高いから、これまでの傾向とは違う結果が出たことになる。だとするとその理由を考えたい。

キックの効果比較

結論を先に書くと、その理由とは、キックだ。

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 いつものように、キックの結果どうなったかをカウントしてみた。①再確保、②再確保はできなかったがプレーエリアを前進させた、③後退させられた、④リターンキックで元の場所に戻された、⑤フェアキャッチやドロップアウトでユアボールになってしまった、という5つのパターンに分類してある。意図的なタッチキックはカウントから外してある。

 サントリー
  再確保:7
  プレーエリア前進:3
  後退:1
  リターンキック:4
  フェアキャッチ・ドロップアウト:5
 

 クボタ
  再確保:0
  プレーエリア前進:6(すべて後半)
  後退:2
  リターンキック:2

 こうしてみると、サントリーの再確保7と言う数字に気づく。この中にはキックパスも含まれているが、7というのは圧倒的な数字だ。

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 今年トップリーグを見た中で多かったのがリコー対キヤノン戦のキヤノンの4回だが、それを大きく上回る。プレーエリア前進を含めれば10回に渡って、キックで何らかの形で前進していることになる。ドロップアウトも多かったが、十分結果につながったキック戦術だったと言える。

クボタはキックのボールロストから失トライ2つ

 クボタも、プレーエリア前進6回というのは十分多い数字だ。しかもそれがすべて後半だから、後半得点を稼げたのは理解できる。

 ただし、後退の2回はボールロストマップにも載っている、自陣10m付近からのパントキックだが、実はその2回ともボールをキャッチされたあと、トライを奪われている。

 そう考えると、クボタは十分有効にキックを使えなかったと言わざるを得ない。この部分の差が、勝敗を分けたとさえ言ってもいいだろう。

ラッシュアップディフェンス対策としてのクロスフィールドのキックパス

 なお、サントリーのキックパスの中には、自陣でのクロスフィールドのキックパスが2本(ボーデン・バレット1本、中村亮土1本)がある。

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 これは2019年のラグビーワールドカップ、プール戦のニュージーランド対南アフリカ戦で、南アフリカのラッシュアップディフェンス対策としてニュージーランドが使った攻撃オプションだ。

 実はこの試合、サントリーはクボタのラッシュアップディフェンスに対して明確な対応策を用意してきた。次回は「プレー解剖」として、クボタのディフェンスに対するサントリーの対策を分析してみる。

(続く)