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「同時代」の空気ということ(ジョン・ウィリアムズ続き)

 2002-2004年までアメリカのワシントンDCに住んでいました。ちょうどそのとき、2003年の始めに、ジョン・ウィリアムズの曲をジョン・ウィリアムズが指揮をするコンサートに行ってきました。

 昨日、五輪の開会式について書いたときにちょっとそのときのことを書いたらツイッターの方で意外に伸びたので、当時書いたブログに書いた文章を再掲することにしました(オリジナルの文章を載せたブログは現在はサービス停止)。もう20年近く前、2003年の文章です。

 国立交響楽団の映画音楽特集のコンサートを見にケネディセンターに行ってきました。
 映画音楽特集は、2003年の1月から2月にかけて2週間くらい続いたイベントで、ジョン・ウィリアムズ特集、ハリウッド映画特集、昔のヨーロッパ映画特集などが行われました。
 で、見に行ってきたのは、初日のジョン・ウィリアムズ特集。
 本来国立交響楽団の指揮はレナード・スラットキンが取るのだが、この日の指揮はジョン・ウィリアムズ自身が取った。
 ジョン・ウィリアムズは言わずと知れたスターウォーズやレイダース、ETと言った映画の作曲者。 
 つまり、アメリカ文化の中心にあるハリウッド映画の音楽を支えてきた人、と言う感じの人ですね。
 ぼくもクラシックのことなんて全然知らないけれども、こうした映画の音楽のコンサートだったら行きたい!!と言うことで切符を買ったのです。
 
 前半は小澤征爾がボストン交響楽団を離れるときに小澤征爾に贈ったというSeijiという曲を含めた5曲。
 これらは映画音楽ではなく、「現代抽象音楽」というものらしい。
 正直、聞いてて眠くなってしまった。

 そうそう。最初は現代音楽だった。多分現代美術のような現代芸術で、現代芸術同様に難しい、と言うか素人にはキビしい!と思ったのを覚えている。小澤征爾との関係はこの時に初めて知った。

それからインターミッションを挟んで、ついに映画音楽が始まった。
 
 フック
 未知との遭遇
 ジョーズ
 レイダース
 シンドラーのリスト
 ET
 
という曲目で、
 
アンコールではスターウォーズから2曲。

 スターウォーズをアンコールまで温存したのがニクい。しかも一曲目は確か帝国の逆襲のテーマで、スターウォーズの例の曲は最後。めちゃくちゃ盛り上がってスタンディングオベーションで幕を閉じた。

これをフルオーケストラで生で。
 
今まで何度かクラシックのコンサートにも行ったことはあるんだけど、そのときには(あくまでも自分には)全く感じることの出来なかった音の「深み」「濃さ」と言ったものが襲ってきて、生まれて初めて音楽を聴いて感動した。
 
ほんと、背筋がぶるぶる震える感じ。
 
(まあ、本当に音楽が好きな人はこういう経験をずっとしてきてるんでしょうけど)
 
特に心に焼き付いたのは、未知との遭遇。
未知との遭遇って、あの美しい5音階が物語のキー。
最初はすごくわずかな音から始まって、「あの」5音階をいろんな楽器で演奏していく、その美しさと迫力に全く参ってしまいました。
 
もう、言葉では表現できないほど感動できたコンサートでした。

 この時の「未知との遭遇」は今でも覚えている。CDで聴くのとでは全く違うものだった。

で、何で自分がこんなに感動したんだろう。
 
と考えてみたのです。
 
きっとそれは、こうした音楽がこれまで自分が生きてきた時代の文化だからなんだからでしょうね。
 
たとえば、クラシックの音楽って、そりゃあいい音楽だと思う音楽はいっぱいあるし、有名な作曲家、たとえばベートーベンとかモーツアルトだとかってすごい音楽家なんだろうと思う。
 
でも、彼らが生きてきた時代って言うのは自分が生きてきた時代じゃないんだよね。
 
何となく聞いていて構えてしまうし・・・。
 
ところが、ジョン・ウィリアムズの映画音楽は、まさに自分がリアルタイムで経験してきた時代、自分が吸ってきた空気の一部。
 
国立交響楽団の指揮者であるスラトキンが、コンサートの前に、 
「映画音楽はポップカルチャーということでクラシック音楽界からは見下されている。けれど昔の音楽界ではオペラこそが正当であり、バレエは幕間を埋めるためだけのものとして見下されていた。今の映画音楽のように。しかし、今ではバレエは文化的な地位を確立している。同じように、百年たてば、映画音楽こそが音楽界の正統になるだろう」
 
と言っていた。その通りだと思う。
 
スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスの作った数々の映画は、
間違いなく20世紀後半の文化のひとつとして、長く人類の歴史に受け継がれていくだろうし、だとすればそれとともにジョン・ウィリアムズの音楽も受け継がれていく。
だからこそ、その時代の空気を呼吸した一人として、自分の心の奥深くまで入り込む力がある。
 
クラシックであれば、どんなに素晴らしい音楽家のどんな傑作といえども、
作曲者自身が指揮をした音楽を今聴くことは出来ない。
でも、同時代人であるジョン・ウィリアムズの音楽は、ジョン・ウィリアムズ自身の指揮で聴くことができる。
 
これって本当に素晴らしいことではなかろうか。