まさか、2軸フォーメーション??:浦和レッズレディース対ノジマステラ神奈川相模原(9月20日)
この9月、なんとなく欲望のままにチケットを取り続けていたらこんなことに。
9月20日:浦和レッズレディース対ノジマステラ神奈川相模原
9月22日:鹿島アントラーズ対川崎フロンターレ
9月25日:日テレベレーザ対サンフレッチェレディース
9月26日:川崎フロンターレ対湘南ベルマーレ
9月29日:川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸
10月2日:川崎フロンターレ対FC東京
気づいたら9月20日から29日までの10日間で5試合観戦(笑)。2日に1試合ずつなんて我ながらアホだ。まあ、「スポーツの秋」と言うことで(笑)。
もう22日の試合が終わってしまったが、せめて25日のWEリーグの試合の前に20日のレッズレディース対ノジマステラの試合のレビューを終わらせておきたい。
4-4-2対4-4-2
スタメンはこう。4-4-2対4-4-2。
かみ合わせるとこんな形。4-4-2同士ならではの見事なミラーゲームになる。
ただ、レッズレディースは、攻撃時は菅澤優衣香がワントップのポジションを取り、安藤梢と塩越柚歩が2シャドーを取ったり、あるいはロングボールを待つときは3人で並んで3トップになることが多い。
中盤でも、猶本光と柴田華絵、塩越がポジションを入れ替えながら崩していくので、あまりポジションは固定的ではない。
両チームとも高いラインを保ち、極めてコンパクトなフィールドで展開した試合だった。
ボール奪取でレッズレディースが圧倒
この試合のボール奪取マップを見てみよう。レッズレディースから。いずれも右から左に攻撃。つまり敵陣が左。
合計75、うち敵陣33(44%)、シュートにつながったもの7(9.3%)。いずれもJリーグの相場観から見て多い。開幕のベレーザ戦が合計72、うち敵陣27(37.5%)、シュートにつながったもの5(6.5)で、ほとんど同じ数字なので、レッズレディースはボール奪取能力の高いチームであることがわかる。
特にこの試合は、ノジマステラのロングボールのセカンドボールの奪取が多かった。また、攻め込んだ時にノジマステラがつなげずにクリアで逃げることも多く、そのボールを多く回収したことが敵陣ボール奪取数の多さに結びついている。
一方のノジマステラ。
合計で51、うち敵陣17(33%)、シュートにつながったもの3(5.9%)。レッズレディースよりも合計で20あまり少ない。しかも敵陣奪取も少ない。
スコアは2-0だったものの、それ以上にレッズレディースが一方的に支配していた試合だったことがわかる。この試合、ノジマステラはビルドアップに苦労していたが、それが明らかに示されている数字の差だ。
セカンドボールを組織的に奪取したレッズレディース
ではなぜこれほどにボール奪取数に差が出たのか。フィールド写真で見てみる。
なお、レッズレディースはビルドアップ時にはセンターハーフの栗島がアンカー的なポジションに入り、もう1人のセンターハーフの柴田が上がってインサイドハーフのポジションに入ることが多い。そうすることでロングボールのセカンドボールを回収する2列目の人数を増やしている。
また、キーパーが最終ラインのビルドアップに加わるのもレッズレディースの特徴。
ロングボールを上げる場合、アンカーポジションの栗島は飛ばされる。ロングボールを上げないパターンとして、栗島、柴田、塩越がマークを引き連れてポジションを変え、結局アンカーポジションに立っている選手がフリーになったり、ダブルボランチの形で片方がフリーになるような工夫をすることもある。その場合は中盤からのビルドアップが行われる。
これはレッズレディースがロングボールを蹴り込む場面。キーパーからのロングフィードが前線に入る。この時点で前線には最終ライン3人に対し菅澤、安藤、塩越の3人が張っている。さらに、セカンドボールを狙う位置に3人が待機している。
次はノジマステラがロングボールを上げる場面を見てみよう。
ノジマステラはキーパーがボールを持って、ロングボールの機会をうかがう。この時、レッズレディースは3人でノジマステラの2トップをマークしている。そして、2列目の位置に4人が並んでいる。この4人が、ロングボールが出た瞬間にセカンドボールを回収するためのポジショニングにつき、ボールを囲んで奪取してしまう。
この写真も同じ形だ。
この時は、ノジマステラが前線に3人おいているのに対し、レッズレディースは2人でマーク。最前線ではノジマステラが数的優位にあるが、2列目に4人いてセカンドボールを拾えるポジショニングを取ろうとしている。
このように、レッズレディースは、非常に組織だった形でセカンドボールを回収する形を用意していた。その結果、レッズレディースが中盤を支配する形になり、優位に試合を進めることになる。
もしかしてこれは「2軸フォーメーション」なのか?
試合中は気がつかなかったが、フィールド写真をセレクトしていて気になったことがある。もしかしたらこれは『フットボール批評』の最新号に出ていた2軸フォーメーションなのではないか?と。
2軸フォーメーションとは、庄司悟氏が『フットボール批評』第33号に書いた「フットボールの主旋律 Op.2」で言及していたもの。攻撃時(保持時)は、ゴールとゴールを結んだ軸でフォーメーションを考えるものの、守備時(非保持時)には、守るべき自軍ゴールとボールを結んだ線を軸としてフォーメーションを考える、というものだ。
見ていて気になった写真が以下の3枚。
ボールはノジマステラの最終ライン。それに対して、2トップが斜めの関係でパスコースを切っている。1人がサイドのスペースを埋めているものの、2列目も4人が斜めの関係で並び、最終ラインは3人でノジマステラの2トップを見る。ノジマステラのFWロペスは2人で見なければならないから、最終ラインは斜めにはならない。
もう一枚。
これもフォーメーションが斜めになっているように見える。この場合は斜めの4-1-4-1だ。
3枚目。
やはり前線2枚が斜め。1人がサイドをケアして、2列目に4人が斜めに並んでいる。
特に1枚目と3枚目から同じ原則によるポジショニングが観察できる。戦術図の形にしたものがこれだ。
ノジマステラの最終ラインがボールを持ったとき、2トップが斜めの位置関係を取る。そして、ボールサイドのサイドハーフは縦方向のボールをケアするため、ハーフスペースを抑える位置取りをする。逆のサイドハーフは高めの位置を取り、右サイドバックと合わせて斜めに4人が並ぶ位置関係を取る。そうなると最終ラインは3人になるが、これでノジマステラの前線のターゲットを抑える、と言う形だ。
こうなると、ボールを中心に、2トップと2列目の4人が同心円的な位置関係で並ぶ。同心円と言うことは、2列目の頭を越えてターゲットにボールが入ったとしても、背後を振り向けばそのままセカンドボールを奪うプレッシングを連携した形でできるということだ。
試合中何度か観察できていると言うことは、偶然ではないのだろう。これはやはり2軸フォーメーションなのではないだろうか。より詳しい人の見解を聞きたいと思う。
こうなってくると、レッズレディースの試合をもっと見たくなる。ただWEリーグのチーム数は奇数なので、今週はレッズレディースはBYEウィークで休み。来週は10/2に駒場で試合があるが、多摩川クラシコと重なるので見に行けない。2試合見て、ちょっとレッズレディースが気になるチームになってきた。