私見:なぜ日本では4-3-3が定着しなかったか
岡田ジャパンの「ゼロトップ」
日本だと、4-3-3は、2010年南アフリカワールドカップの岡田ジャパンが直前で採用したフォーメーションの印象が強い。これは、杉山茂樹さんの言う「本田ゼロトップ」として記憶に残っている。あのときは本田がゼロトップに入り、左ウイングに松井大輔、右ウイングに大久保嘉人、そしてアンカーに阿部勇樹が入っていた。
このとき、攻撃時はボールの受けどころになって時間を作り、守備時には献身的にプレスをかけ続けた松井と大久保の奮闘は目に焼き付いている。
そのとき結果を出したこともあったのか、2010年大会後、いくつかのJリーグのチームも採用を試みた。フロンターレもその一つ。中村憲剛をアンカーにして4-3-3を試した時期がある。
キーとなるのはアンカーと両ウイング
結論から言うと、フロンターレを含め、そのとき試したJリーグのチームでは4-3-3は上手くいかなかった。
上手くいかなかったのには理由がある。4-3-3は、もう少し細かく書けば4-1-4-1(ワントップの場合)ないし4-1-2-3(ゼロトップの場合)になるが、このときにボール回しの肝になるのは「1」のいわゆるボランチポジションにつくアンカーになる選手。(受け手の肝は両ウイングになる)
南アフリカ大会でも、ヨーロッパサッカーでも、だいたいこのポジションの選手は「2列目」ですらなく「3列目」。マークに付く選手は攻撃の選手だから、相対的に見てマークは甘い。なのでアンカーは、守備のバランスを取るだけでなく、ボール回しの中軸となることができる。
Jリーグの特徴:FWの守備
しかしJリーグでは違う。Jリーグではワールドカップやヨーロッパサッカーと違い、FWがかなり献身的な守備をする。
Jリーグで4-3-3を採用したチームに対しては、FWが落ちてきてアンカーのマークをするため、アンカーを軸としたボール回しができなくなってしまったのだ。
これは4-3-2-1と対戦したときのアンカーへのマークのイメージ。
アンカーのところでボールを奪われてしまうと、その前には最終ラインしかいない。そうなると、ボランチ2枚の4-2-3-1の方が安全といえる。そんなことから、Jリーグでは4-3-3は主流にならず、4-2-3-1が中心になっていった。
以下は2019年ルヴァンカップ、フロンターレ対アントラーズ戦での左サイドの攻防から。(本文とは関係ありません)