ボールロストマップで見る2020/21大学ラグビー<5>:まとめと評価
大学選手権決勝を見たあと、「早稲田のボールの失い方が良くなかったなあ」という印象を受けたので作り始めたボールロストマップ。
作って見ると結構その試合の印象を反映したものになっているように思えた。そこで(慶応対筑波を除く)見に行った試合をすべて作ってみた。
昨日までは、いくつかの大学のシーズンを振り返りがてらマップを紹介してきたが、今日はそのまとめ。
まずはトータルデータ
最初にマップを作成した9試合の合計から。
まず、やはり勝ったチームの方がボールロストが少ない。平均値で1.6。ただ、平均値でも少ないのは確かだが、調べてみた9試合のすべてで、1つでもボールロストが少ない方が勝っているのは興味深い傾向だ。
ボールロストの場所を見ると、自陣22mラインより内側を見ると、実は勝ったチームの方のボールロストが多い。ただし、11月1日の早稲田対帝京戦で、勝った早稲田が4回ボールを失っているのが平均値を押し上げていることがあり、それを除くならばやはり勝利チームの方が少ない。
敵陣22mラインより向こう側でのボールロストは、負けたチームの方が多い。ただし、敵陣22mラインより向こう進入できなければボールロスト自体発生しないので、今回のサンプルのようにある程度力が接近しているチーム同士でなければ意味のない傾向だろう。
各大学ごとのデータ
各大学ごとにまとめてみたデータがこれだ。
帝京と慶応が敵陣22mラインより向こう側でのボールロストが多い。攻めきれなかったという印象を裏付けるデータだ。
自陣22mラインより内側でのボールロストは、多くの場合マイボールスクラムなのに押されてコラプシングを犯したときに発生するから、シーズン後半になってスクラムの課題が顕在化した早稲田に多いのも印象通り。また、この点については慶応のゼロが際立っている。
試合ごとに振り返ってみる
まずは11月1日の第一試合の早稲田対帝京。
ボールロストデータを見る限り、早稲田が大勝したのが信じられないようなデータだ。特に自陣22mラインより内側で4回もボールを失っている。
最近の早稲田対帝京戦のような点の取り合いになってくると得点力自体が重要になってくるが、ボールロストはあくまでボールを失った回数なので、これだけで試合を評価するには限界があると言うことだろう。ただそれでも、ボールロスト全体の数は早稲田の方が少ない。
第二試合の慶明戦。
この試合はロースコアの凌ぎ合いになったが、ボールロストデータを見てもそういう試合だったことが想像できる。
11月23日の早慶戦。
この試合もボールロストが少ない方が勝っている。
12月の早明戦。
ボールロストの差8というのは、今回数えた中で2番目に多い。明治の完勝ぶりがよくわかる。
大学選手権準々決勝での早稲田対慶応。
スコアは最終的には開いたけれど、いろいろな数字が拮抗したナイスゲーム。慶応の得点力不足が際立った試合でもあった。
準々決勝の明治対日大。
日大のボールロストは、次の帝京と並んで今回数えた試合の負けたチームの中で最も少ない。そのことが終盤までそんなに大きくスコアが開かなかったことの理由か。ただ、日大にとっては、自陣22mライン内側でのボールロストが失点に直結した試合でもある。
準決勝、早稲田対帝京。
合計ボールロスト数26は今回数えた試合の中で最小。見ていてストレスのない、エキサイティングな試合だったが、攻めててボールロスト、というのが少なかったのが理由だったことがわかる。
自分の見た中ではベストゲームかな(慶応対帝京、明治対帝京を見てないので・・・)。
もう一つの準決勝。明治対天理。
これもスコアほどの差を読み取ることはできないが、やはり負けた明治の方がボールロストが多い。
最後に決勝戦。
ボールロスト数の差10というのは、今回数えた中で最大。早明戦に並び、スコアの差を裏付けるデータ。
まとめ:面白いデータだと言うことはわかった
ラグビーはボールを継続していかなければ得点できない。ボールロストはどこで起こっても、自軍の得点機会を失い、相手に得点機会を与えるイベントだ。
そう考えると、ボールロスト数の差そのものが何かの因果関係を表しているとは考えにくい。けれど、早稲田が大差で負けた2試合でボールロスト数に大きな差が出ていること、また壮絶な凌ぎ合いとなった慶明戦を見てみると、完全ではないものの、データとして興味深い傾向を見せてくれていると思う。
自分としては今年のベストゲームは準決勝の早稲田対帝京だったのだが、そう感じていた理由も理解できた。ということで、トップリーグも引き続き見てみることにしたい。