国際学会体験レポート
宇都宮大学国際学部4年の大塚日花里と小濱瑠七です!
私たちは木村先生の下で言語学、特に第二言語習得を学んでいる学生です。このたび、みなと計画さまにご支援いただき、国際学会へ参加するという貴重な体験をさせていただきました。
本記事ではその体験レポートを書いていきます!
なぜ国際学会に?(大塚)
まず、なぜ国際学会に参加できることになったのかについて、これは昨年2023年の10月、ゼミ発足までさかのぼります。
私たちはゼミ一期生で、先輩も前例もない中、とりあえず研究や実験の雰囲気をつかむため、グループ研究をしてみよう!とテーマとともに先生から提案されたことが始まりです。
ゼミ生内で分担して先行研究を読んだり、実験をしてみたりする中で、せっかくだから国際学会に出してみよう!という話が上がりました。
ゼミ発足からまだ2か月ほどしか経っていませんでしたが、なんとか形にし、提出することができました。
タイトルは「A Closer Look at the Acquisition of the Present Progressive by Japanese-speaking Learners of English」で、日本語にすると「日本語を母語とする英語学習者による現在進行形の習得に関する考察」です。
英語で現在進行形 ’-ing’ は「進行」のみを表しますが、日本語で-ingとイコールに捉えられる ’-ている’ は、「進行」に加えて「結果」も表します。
例えば、「男の子が走っている」と言う際には、ある男の子が走り続けている進行状態がイメージされますが、「ドアが閉まっている」と言うと、ドアが閉じているような結果の状態がイメージされます。
このような、英語では一つ、日本語では二つの意味があるという特徴から、日本語を母語とする英語学習者は英語の現在進行形-ingを結果状態と捉えてしまうため、エラーをしやすく、またそれは特定の動詞群(到達動詞)においてしやすい、ということが先行研究で知られていました。(Gabriele, 2009)
これに対して、その動詞群の中でもより過程を持つ動詞([+process]な動詞)であれば、正確な判断をすることができ、誤りをしにくいのではないかと考え、実験を行ったのが今回の研究です。
時間がない中バタバタと提出したため、結果はそこまで期待しておらず、ただゼミ生みんなで取り組んだものが一つの成果としてまとまったことがうれしいなぁと感じていたのですが、結果はまさかの採択!
春休み中に先生から連絡が来てとても喜んだことを覚えています。
学部生のうちに国際学会に参加できるなんて機会はほとんどなく、逃したくないと感じ、代表して行きたい!と手を挙げたのが私たち大塚と小濱でした。
参考:
Gabriele, A. (2009). Transfer and transition in the SLA of aspect: A bidirectional study of learners of English and Japanese. Studies in Second Language Acquisition 31: 371–402.
参加への壁(小濱)
初めての国際学会が決定し、喜んだのも束の間、費用の問題に直面しました。
往復航空券で25万円、学会入会・参加費で4万5000円、宿泊費は、寮費は…
さらに円安でユーロが日に日に高くなっていき、1€=170円を超えたことも。
大学生にとって信じられない金額に、頭が痛くなったことを覚えています。
これに関してこのような質問をよく聞かれました。
「大学から支援あるでしょ?」
「学会からも学生に支援金あるよね?」
それが、ありませんでした。0です。
そもそも前提として学部生が学会に出ること自体、レアケースです。そのため、それを想定した制度が整えられていません。
まず、大学からの支援(厳密に言うと所属する研究室からの支援)ですが、学生二人分を負担するほどの予算はないため、もらえませんでした。
もし、理系の学部であれば予算は多く割り当てられているため、支援があったかもしれません。
実際、理系の学部の友人は自身の負担なしで学会や研修へも参加していますが、私たちは文系の学部であるため、予算は限られていました。
また、学会からの一定の支援がありますが、大学院生を対象としており、学部生の私たちは対象外となりました。
そもそも申し込みのフォームに学部生の選択肢がありませんでした。それくらい、レアであることを実感しました。
以上のような背景があり、「文系」の「学部生」には海外の学会で発表するための支援を全く得られませんでした。
そこで出会ったのが みなと計画 さんです。
以前大塚と縁があり、今回ご連絡させていただきました。
担当してくださったのは橋本さんです。
1時間ほどzoomを通じて、私たちの研究内容、なにに困っているか、どのくらいの支援が欲しいかなどの話をしました。
どの話をするときも親身になって、私たちと同じ目線で話を聞いてくださったため印象に残っています。最終的に「なんとかしてあげたい」と言っていただき、渡航費の一部をいただくことになりました。この知らせを受けたときは2人でとても喜んだことを覚えています。
このような経緯で、私たちはみなと計画さんから支援をいただきながら、国際学会の費用を賄っていきました。
いざフランスへ!(小濱)
7/1夜に羽田空港を出発し、7/2の朝6時にシャルルドゴール空港へ到着!
14時間フライトしたのに、全然時間が進んでいない…
でも初めての長時間フライトで全然寝られなかったので、時差ボケはあまり感じませんでした。
ターミナルを間違えつつ、国内線を乗り継ぎ、モンペリエ空港行の飛行機を待ちました。
待ち時間でパンを購入。念願のフランスのベーカリーで興奮しました。
モンペリエ空港に着いてからタクシーで一番の観光地であるコメディー広場へ向かいました。
車を降り立ち、街並みを見たときの感動。日本とは全く違う景色に二人で感激しながら街を歩きました。
そしてコメディー広場。目を引くのは噴水、メリーゴーランド、ヨーロッパらしいつくりの建物など、魅力がたくさんでした。(個人的にはアジア人がいないことにも異国感を覚えました笑)
まず目についた雑貨店にふらっと立ち寄り、ポストカードなどを買いました。
そしてお昼ご飯をサンドイッチ店で食べることにし、二人でBLTベーグルサンドとGreen tea(市販の加糖の紅茶の味がしました)を分けて食べました。お会計は2100円、一人一個食べてないのに😭
そしてまたタクシーに乗って寮へ。手続きを何とか済ませ、無事入室。こんな部屋でした↓
一番の衝撃と言えば、シャワー部分の床にわずかな段差しかないことです。シャワーの目の前が洗面台・トイレなので床(慣れない初日はトイレも)がびしょびしょになりました。
あとは水の勢いが弱く、トイレの流れる確率は1/3、というところでした…
それでも部屋は広いし、クーラーが無くても朝夜快適に過ごせる気温でした。湿度も低くてたくさん汗をかいた記憶がありません。
夕方ごろ、二人で近くのスーパーへ買い出しに行きました。歩いて20分の距離で、落ち着いた住宅街を歩きました。
サラダや気になったチルド食品、フルーツなど夕飯を購入しました。
美味しかったのはダークチェリーだけかな…
そんなこんなで何とか初日をクリアし、シンプルなベッドで眠りにつきました。
学会1日目(大塚)
朝8時、人生はじめてのトラム(路面電車)に乗って、モンペリエ大学へ向かいました。
1日目の午前は主に大学院生による研究発表の日でした。
自分とさほど年が変わらなく見える方々が、堂々と英語で自分の研究内容について発表している姿を見て、すごい場所に来てしまったという実感がわき、緊張のドキドキと少しのワクワクで落ち着かない気分でした。
休憩時間とお昼の時間は、用意されたおいしいパンを食べました。午後からは、教育からみた第二言語習得を研究されている様々な国の研究者たちによって、教育現場における子供たちの言語学習をテーマにディスカッションが行われました。
それらすべてのプログラムを終えたあとは、明日の自分たちの発表内容を振り返りながら、緊張をほぐしあい、励ましあって寮へと戻りました。
学会2日目、ついに発表日!(小濱)
学会2日目。この日から口頭発表やポスター発表が始まります。
私たちのポスター発表もこの日の16:00からのため、ずっと落ち着かないまま過ごしていました。
発表は全体的に英語教育に関するものが多く、特にヨーロッパの学会のため、ヨーロッパの背景における英語教育について学ぶことができました。
日本に居たら知ることがなかったことばかりなので、とても興味深かったです。
発表間の休憩では軽食や飲み物をもって、他の参加者と交流します。
ここで勇気を振り絞ってアメリカ大学院生の韓国の方に話しかけ、仲良くなりました。
お互いの研究について話をすることで、相手について知ることができるし、何より自分の研究内容をまとめることができました。
そして8つほどの口頭発表を聞いた後、私たちのポスター発表が始まりました。
ぽつぽつとポスターを見に来る人に聞かれたことを答えたり、説明したりしました。
皆さん優しく、よく頑張ったじゃん、と最後に言っていただきました。
振り返って、何とか無事終わることができた安心感と、うまく英語で答えられなかった悔しさを感じました。いくつか問題も指摘されたので、今後の研究の課題としたいです。
緊張が解け、指導教員の先生と3人で感想会をしながら、welcome receptionを待ちました。
ここで軽食とワインをいただきました。一緒に来ていた先生が多くの先生と私たちを繋げてくれて、新しいつながりを作ることができました。
その後はモンペリエのウォーキングツアーに参加しました。
散々歩き回り、おなかも空いたので、先生方にフランス料理店へ連れて行ってもらいました。
しっかりワインもいただき、最高の夕食になりました。
すっかり日も暮れ、発表や歩き回った疲れがどっとくる中、寮へ戻り、ベッドに入りました。
学会3日目(小濱)
学会3日目。自分たちの発表は終わったため、リラックスして過ごすことができました。
この日も8つほど発表を聞きました。
今までに読んできた論文でよく見る名前の先生の発表もあり、興味を持ちながら聞くことができました。
そしてこの日は発表後にconference dinnerがあり、それに参加しました。古城の前に席が準備されていて、様々な料理を楽しむことができました。
学会最終日(大塚)
学会最終日、この日もそれまでと同じく研究発表をいくつか聞いた後、閉会式が行われました。
そこで今回の学会の採択率は全体で38%、私たちが出したポスター形式の発表でも51%だったと報告があり、改めてレベルの高い学会だったのだと実感しました。
お昼ごろには閉会し、その後はExcursion(小旅行)が企画されていました。
まずはBrasserie Quotidienneというお店でお昼ご飯を食べました。自分の好みでパスタにかけてね、と言われたこの塩がとてもおいしくて…!私も小濱も先生も、スーパーで買って帰りました笑
小旅行の行き先は、サン・ギレム・ル・デゼールという歴史的な建造物が多く残るきれいな村でした。この日はあいにくの雨ではありましたが、それでも美しく、感動する景色を多く見ました。
ジェローヌ大修道院という世界遺産に登録されている修道院に入りました。私は修道院に入ること自体生まれて初めてだったので少し緊張しながら…
オルガンの演奏などに感動しました。
学会会場付近に戻った後は、またまた先生方にご飯に連れて行っていただき、大満足で学会期間を終えました。
観光日・リヨンへ!(大塚)
フランス滞在6日目であるこの日は、せっかくフランスに来たのだから!と計画していた観光の日で、朝からTGV(高速鉄道)に乗って、リヨンへと移動しました。
リヨンはフランスの中でも有名で人気な観光地のようで、落ち着いてヨーロッパの街並みを楽しめるという情報を見ていたのですが、実際に訪れてみると予想以上にすごい!
その日泊まるホテルに行くまでのタクシーから見える景色でさえ、こんな場所がフィクションじゃなく、テーマパークでもなく存在しているんだという衝撃がありました。どこを見てもきれい!
ホテルのフロントにいたお兄さんのおすすめの道を歩き、たまにお土産なども見ながら、私たちはノートルダム大聖堂へ向かいました。
ノートルダム大聖堂は山の上にあり、そこへ行くには果てしないほど多くの階段を上らなければならず…息切れしながら、もう諦めて行かなくてもいいかなと心の中で思いながら、何とかついた先には、これまた想像を超える景色が待っていました。
大聖堂内もすごい!繊細で美しい彫刻やステンドグラスが、外から入る光を浴びてキラキラと輝いていました。
大満足しつつも、くたくたになっていた私たちは、マクドナルドでフランス限定バーガーなどを買ってホテルへ戻りました。
パリ市内~帰国(小濱)
フランス滞在最終日。
フロントのお兄さんに乗せられて、ホテルの朝食を食べました。
ハム、チーズ、たくさんのパン…フランスっぽい朝食!だけど味はシンプルでした。
そしてホテルを発ち、TGVに乗ってリヨンからシャルルドゴール空港へ。移動中に見えた草原には、ときどき羊の群れが見えました。ザ・ヨーロッパ。
飛行機は夜10時発のため、それまでパリ市街を散策することにしました。
空港について荷物をいったん預け、ロワシーバスでオペラ座まで向かいました。(バス停、全然見つからずに探し回りました💦)
一時間弱乗車し、オペラ座へ到着。
一番の目当てはエッフェル塔なので、タクシーで直行。
オリンピック前だったので五輪のマークが掲げられていました!
しっかりエッフェル塔ポーズもして…
そして市街を歩くと至る所にお店が!
お土産購入
パン屋さんでクロワッサンを!
チョコレートショップでマカロンとチョコレートを購入💕
名残惜しくも、ロワシーバスに乗ってシャルルドゴール空港へ戻りました。
思ったよりも早く着き、3時間くらい待ちました。
その間にスタバで飲み物を買って、お土産を買って、小腹を満たしました。
小濱は最後に日本語につられてサーモンとクリームチーズのおにぎりを食べました。味は…
長時間フライトの要領を得て、疲れのたまっている私たちは、飛行機に乗り機内食を食べたらもうすぐに寝てしまいました。(行きよりも寝られてよかった…)
そして14時間半のフライトを経て…
羽田空港へ到着、日本帰国!
信じられない湿度の高さに驚きながら、帰国手続きを済ませ、電車で宇都宮へ帰りました。
終わりに(大塚)
以上が、私たちが国際学会への参加を通して体験し、感じたことです。
帰国後、宇都宮大学国際学部のホームページに載せていただき、国際学会への挑戦はひと段落着きました。
本日のPhoto | 宇都宮大学 国際学部 (utsunomiya-u.ac.jp)
この1週間と少しの間で、頑張ったと自分たちを褒められる部分も、まだまだ足りないと強く感じた部分もたくさんありました。
学部生のうちにこんな体験ができたことは、とても貴重で、本当に贅沢なことでした。
一方で、自分たちの発表時間はたったの1時間なのに、多くの人を巻き込んで、自分たち自身にも負荷をかけて、本当に行く必要はあるのかと何度か不安になったことも事実としてあります。
今回はみなと計画のみなさまに応援と支援をいただけたので、負担が少なく参加することができましたが、同時に、学部生に対する支援の少なさも実感する機会となりました。
これは、ただ学部生にも支援を!文系学生にもより手厚い制度を!と声を上げるだけで変わる問題ではないのだろうな、と感じています。
様々な立場で、いろいろな事情があるのだろうと思います。
「文系の学部生が国際学会に参加するための奨学金」などを仮に立ち上げても、対象者は限られているでしょう。
だからこそ、用途に問わず、何かに挑戦したい若者を応援してくれる支援がもう少しあったらいいのに、と思っていました。
その意味で、今回みなと計画という団体に、そして対応してくださった橋本さんに出会えたことは、私たちにとってとても大きな出来事でした。
費用の面での支援をしていただけたことはもちろんですが、それと同じくらい、私たちの挑戦を応援していただけたことにも感謝しています。私たちの研究内容を聞いて面白いと言ってくださったこと、なんで支援がないんだと同じ目線になって様々な方法を模索してくださったこと、せっかくの体験を文章で残してみないかとこのnoteを書く提案をしてくださったこと…
先生でも親でもないのに親身になって応援してくれる人がいるというのは大きな心の支えで、挑戦をする上での自信になりました。みなと計画のみなさま、橋本さん、本当にご支援いただきありがとうございました。
今後、小濱は東京で就職、大塚はそのまま宇都宮大学の大学院に進学する予定です。違う道に進みますが、この経験を忘れず、それぞれがその時やりたいことに精いっぱい取り組めたらと思います!忘れられなさそうで忘れたくもないから、いつまでもこの期間の話で盛り上がれたらいいな、とも!
以上で国際学会レポートを終わりにします。長い記事でしたがお読みいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?