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「押し花を卒業証書に」取材レポートVol.8 日本の押し花『夢花』細野さん

こんにちは。地域おこし協力隊の松江です。
今年、東神楽町役場が改築され、診療所やホール「花音」などをあわせもつ
複合庁舎になりました。
そしてこの夏、庁舎前にフラワーガーデンがオープンします。

このフラワーガーデンの植栽は、上野ファームの上野砂由紀さんによってデザインされており、花苗の植込みは職人さんはもとより、町民の手によって植えられていきます。

「花のまち東神楽」ならではの素敵な光景になることを想像すると、ワクワクがとまりません。

このガーデンができることになった
「花のまち東神楽」のこれまでを知り
これからの「花のまち」の在り方を考えるきっかけにできればと
庁舎1階にて、「花の歴史と時の彩り展」を企画・開催しています。
(これについては、別途noteで記事にしますね。)

***

「東神楽町の小中学校の卒業証書に押し花があしらわれているのをご存知ですか。」


展示会場に在廊していたとき、おひとりの女性が来場されました。
とくに、若手の作品に目を細めてご覧の様子。

お声掛けしてみると、あふれんばかりの思いとご自身のご経歴をお話いただき、「花のまち東神楽への多大なる貢献者」ということがわかりました。

展示をするにあたり、図書館や町の蔵書をどんなに調べても、見えてこなかったことや関わった方にお会いすることができたことに感激!
すぐにインタビューを申し入れしました。

記事:東神楽町地域おこし協力隊 松江
写真:東神楽町地域おこし協力隊 野添



【30数年経っても色あせが少ない~花色を長持ちさせるための手法】

インタビューでお越しいただく際、ぜひ見てほしいとお持ちいただいた
色鮮やかな押し花が施された「卒業証書」と「メッセージカード」。

花色を長持ちさせるために、薬を使う方法があるの。
30数年前から作っているけど、(作品を指さし)平成13年の時のものもまだちょっと色が残っているでしょう。
花の色がなくなったとしても、葉っぱは緑が良く残っているでしょ。緑すごいですよね。
この卒業証書をみて。


今から28年前に製作した
人参の葉・アルストロメリア・千鳥草の押し花


細野さん:これ、何の葉っぱかわかります?
隊員AB:??
細野さん:ヒント。根っこを食べます。
隊員A:根っこ食べる?
隊員B:!人参だ!
細野さん:そう人参って、わからないでしょ。


【君の椅子】メッセージカードに気持ちをのせて

細野さん::去年からこちらにいらっしゃるということだから、古い庁舎の玄関なんてみてないのね?
隊員:はい。着任当時は仮の庁舎になっていましたから…。

旧庁舎の玄関の出入口のところに、
「君の椅子とメッセージカード」が展示されていたんです。
そのメッセージカードにも押し花を施しているけれども、たぶん普通の人は「印刷じゃないか」と思うと思う。
ゴミがはいったりするので、裏表にフィルムをかけて加工してあるから
見ても、ここにほんものの「押し花」がついてるとわからないでしょ。
そして、メッセージカードは額に入った状態でわたされるから、もらった人も触れてみることはないとおもう。
だから、見ただけでは押し花が入っているとはわからないと思うわね。

「生まれてきてくれてありがとう」の思いから、誕生した子どもに椅子を贈る「君の椅子」プロジェクト。

旭川市立大学HPより引用:「君の椅子」プロジェクトとは (asahikawa-u.ac.jp)
右の現在のメッセージカードは、男の子・女の子どちらでも使えるよう
赤と青のロベリアを並べている


【どうしてヒガシカグラで押し花】

30数年前に、師匠である宮崎に押し花を学んでいたとき、NTTで「押し花電報」というのがあって。
ちょうどその時、東神楽町が「花のまち」ということで花を栽培していて。
出荷のための”乾燥させる=「押し花にする」”っていう工程を依頼したいと、当時押し花の師匠の宮崎に声がかかったの。

はじめは旭川から東神楽町へ通ってきていたかなぁ。
旭川からここへ通ってくるのは大変だからっていうんで
東神楽町へ会社も自宅も引っ越をしてきたの。


(いつ頃のことですか)

どれくらいだろう。ん~年齢が40歳の時だから30年ちょっと前かな。昭和から平成になるころかな。

上記は現代の卒業証書


今年卒業生に渡された卒業証書。これ二人分なんだけど、1ページに左右1枚ずつ2名分にクローバーをつけて、フィルムをかけて。
こんな感じで作っているの。花本来の色に戻してあげる特殊な薬があって。

(作業はおひとりでされているんですか?)

細かい作業は私一人。「押し花工房 夢花里」も私一人。
押し花「夢花」ってのも一人でやってて。
師匠の宮崎は、だいぶ前に観光客へ向けた「押し花体験」をおこなうために中富良野にいったの。こっちでは、その体験用の準備段取りをして、押し花用の花を送ったりしているの。

【一年をかけての押花づくり】
私の大きな仕事は卒業証書をつくって学校へもっていくまで。

(3月の卒業式をめざして作業するのは一大ミッションですね)

ちょうど今くらいの時期から、天気がよいときに花を手入れして摘んだり、家の周りを歩きながら四葉のクローバーなんかを探して摘んで
・・今日みたいな雨の日はできないから。

自宅の4畳ほどのスペースが作業場。

【押し花づくりと卒業証書完成まで】

≪春≫自宅庭や散歩中に花を摘んで、押し花にする作業を秋まで続けていく。
夏≫日中暑いから体力を奪われるので、少し暗くなってくる頃に作業をする。
≪秋≫~冬の初めには、できた押し花を薬などで処理作業しておく。

≪冬≫12月~1月に台紙になる卒業証書の用紙を教育推進課からいただいたら、そこから作業がはじまるの。押し花を証書に貼付して、卒業生分を制作して納品。それと並行して、その次の年の卒業証書に使うものを加工しやすく処理する作業がすぐはじまる。

(材料がそろった状態で一枚しあげるのにどれくらい時間がかかる?)

じっくりやっても30分かからないかな、15分くらいかな。
今年は300名分くらい仕上げたの。

【ふるさと納税返礼品】

返礼品ワイングラスは、グラスの底の湾曲した部分に押し花をいれる工程が難しいのよ。


【制作活動について】

好きだからできること。
でもストレスがたまって、作業の合間にはつい甘いものを食べてしまうけどね。

年をとって、手が痺れたり、膝が痛くてしゃがむことが難しかったりするけれども、あと4年くらいはがんばってやらなきゃと。

作品を手に取りながら、これまで「押し花」に傾けてきた情熱を、
笑顔と穏やかな口調でとお話くださいました。

「お話しできて楽しい時間だったわ。」と細野さん。
私も同じくです。お会いできて光栄です。
これも、展示会場に足をお運びいただけたからこそです。
本当にありがとうございました。























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