木崎みつ子「コンジュジ」読んだよ
・あらすじ
1993年。外国人の女性と暮らしている父親を持つ小学生のせれな。
ある日彼女は、深夜の音楽番組で紹介された伝説のバンド「カップス」のボーカルであり、早世したロックスター「リアン」を知り、彼に惹かれます。
リアンの恋人となった妄想をするせれな。しかし、父親がせれなを性的に虐待するようになり…。
・感想
ネットで知った本。「辛い現実の中、幸せな妄想をする少女」というシナリオに惹かれ購入しました。
だって妄想の恋人と少女の話ってあんまりないし…。
(以下ネタバレ)
せれなのリアンへの恋はとても美しく、切ないものでした。
最初のうちは南国でのバカンスを妄想したり、リアンと愛し合う少女漫画を描いたり。余計なものが一切ないキラキラとしたものだったのが、大人になり、知らないようにしていたリアンの人生の現実(不倫やドラッグ、そして転落)を知った途端喧嘩するようになる…という、ギャップに驚かされました。
性的なもの含めた虐待シーンは読んでいて辛かったです。
小学生に○○もののAV見せて行為に及ぶ親父がひたすら気持ち悪かったし、その途中でせれながリアンとウッドデッキでデートしたり、カップスの5人目になった妄想をするのも生々しくて辛かったです。
性的な被害を受けた方は、読む際にはご注意を…。
一番印象に残っているのは、大人になったせれなが「妄想の中のリアンは家事も手伝わないし、生活費を入れることは一切ない」と気付いたシーンです。
私は二次元好きなのでこれは凄く共感しましたね。
しかし、個人的な意見ですが…せれなはリアンという心の支えと出会えたからこそ生きてこれたんじゃないかなと思います。
趣味やいわゆる推しを心の支えにして生きている人は多く、それが失われればもう死んでやる、という人は多いですよね。
リアンの人生の真実を知ったせれなが妄想のリアンに「抵抗できたはずだ」と言われたり、ある日を境にリアンとの妄想が出来なくなり代わりに父親が妄想の中に出てくる(恐らくフラッシュバックのようなもの)のを考えると、性的虐待は最悪の犯罪だなと思えてきます。
妄想の中でリアンの墓参りに行くラストシーンは人によって解釈が分かれると思います。
個人的には、現代のせれなの針谷さんや稲村さんとの日常がもう少し見たかったです。