残暑の中の妄想「愛妻とX」
●風英堂葉月記=残暑の中の妄想「愛妻とX」
TV画面から何回も<アイ・サイト・エックス>と言う言葉が聞こえるようになった。画面に眼をやると、どこか外国の地を車が走っている、何か旅の言葉であろうかと考える。
フランスの作家マルセル・プルーストの名言に「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことなのだ」がある。だが、<件の疫病禍>の時はその新しい目を探すことが困難になっている。さらにプルーストは「美しい女たちのことは想像力のない男たちに任せておけ」とも言っている。文字通り、誰が見ても美しい女性はつまらない、なぜなら「想像力を働かせる必要がない」との意味らしい。ならば、<品性感性知性>に美しさを感じ、<艶気や色気>に想像力を働かせることが最上の愉しみかもしれない。
男女を問わず、人間を虜にする色気は20代につくられると言われている。10代は知識を得る助走路、20代にどれだけの物事を数多く観られるか、30代はそれを如何に深化させるか、そして40代には一気に開花するかだが、一旦落ちる瞬間も待ち受けている。50代は再準備期で、60代はこれまで過ごし方が問われる。70代は分からない。
そのお呪いの様な言葉は、我が耳には<愛妻とX>と刷り込まれていた。我が家では長年<家のカミサマ>と呼んでいるので、愛があるのかどうかは分からない。ならば「X」とは何か。例えば藤沢周平の「蝉しぐれ」、高橋治の「風の盆恋歌」、打海文三の「一九七二年のレイニー・ラウ」など<忍ぶ花を愛でる心>なのであろうか。
人間の魅力は外見だけではない。外見ばかりを磨いていると、近づいてくるのは「想像力のない人間」ばかりになる。男性も女性も、外見ばかりにとらわれていると、とんだ悪女、詐欺男に引っかかるかもしれない。件の禍の世に、五輪玉が闊歩する異様な社会、自分の眼を愛で、真実の芽を見つけ出すことが求められている。
そうそう、<アイサイトエックス>は車のCMだった。スバルのアイサイトXシステムは運転者の判断を補助し、事故被害や運転負荷の軽減を目的としているようだ。だが、AIを信じてはいけない、人間の心の感情を高め、膨らませるの<あなた>であり、<貴女・貴方>である。
※準天頂衛星システム「みちびき」とGPSにより自社位置を正確に把握し、その上で3D高精度地図データと合わせて運転支援をして行くというスバルのアイサイトXは、新型レヴォーグに搭載されたことで話題となった。“ぶつからないクルマ”というキャッチーなフレーズで衝突被害軽減ブレーキに市民権を与えたスバルのアイサイト。その新世代版であるアイサイトXが2020年末にデビューした新型レヴォーグに搭載された。今のところ装着率は9割を越す盛況ぶりだ。
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