【地中海の北縁の旅と生活】第3章 サラエボ生活3年記⑥
【地中海の北縁の旅と生活】第3章 サラエボ生活3年記⑥《また旅猫、サラエボから南仏マルセイユに》
皆さん、こんにちは、あれ?こんばんはかしら。マレーシア生まれのグリと呼ばれていますが、本名は「GRIS」というフランス語なのよ。どうやら私は8月28日から南仏のマルセイユで生活することになったみたい。
マルセイユのあるプロヴァンス地方の冬は季節風のミストラルが吹き、風が強いみたいだけど暖かく、私にとっては栄養となる陽光の差し込む明るい土地と聞いたわ。このサラエボのように風が無く、スモッグが覆う高原と違って環境は良いみたいでひと安心。そうそう、私も17歳を過ぎて、人間ならば90歳を超えているから、まあ、温かい心のふるさとに帰るようなものね。
マルセイユの治安は以前に比べてだいぶ良くなったみたいで、エクサンプロヴァンスやアヴィニョン、アルル、ニームまで近いし、ニース、カンヌまで2時間みたい。フランスはペットを大事にしてくれるから、今度はドライブにも連れて行ってくれるかもね。人間が汚れ始めた日本より「南仏プロヴァンスに死す」ということもいいのかもしれないわ。
私は1999年生まれ、マレーシアのゴルフ場で拾われて4年半の間に東京を数度往復。その後はセネガルのダカールで3年暮らし、狭いけどやっと東京暮らしに慣れたと思ったら、2013年には旧東欧のサラエボまで来てしまったわ。ここは階段も多く、年寄りには辛かったけど、結構足腰は丈夫になったみたい。
夏のサラエボは空気が乾燥し、緑の壁に囲まれて庭のデッキに座らせられ、青空を見ていると本当に気持ちが良かったわ。でも冬はスモッグに覆いつくされ、身体を蝕むのではないかと心配してじっとお布団の中でお休み。
どんな場所にも良いところと悪いところがあるけど、相性というものもあるみたい。人間って大変な生き物だとつくづく思うわ。常に自分の知恵や智恵を広げていかないと、狭い価値観の中でしか思考や判断が出来なくなるようね。淡々とやり過ごせたらどんなに良いかと思うのですが。
香高堂は最後まで私の物を含めて、様々なものを断捨離していたようね。でも一人で「これまで<残してきたもの>が良かったのでなく、無意識のうちにも<捨ててきたもの>が良かったのでは無いかと思う」、なんてブツブツ呟いているわ。
私は美味しい空気と広い家、清潔な部屋があれば良いわ。
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