ある男の物語=紗月の空に天女と鬼女を思う事
◆ある男の物語=紗月の空に天女と鬼女を思う事
「天女は、いつまでもそのままとは限らず、鬼女になる時もある。鬼女は時には純心さ溢れる天女のように振舞う」
その男は5月のある土曜の昼下がり、世田谷の用賀から桜新町を彷徨った。それは倉庫のような建物の花屋で、心地よいヴィオラとピアノの音を聴いたせいかもしれない。40年近く前に、この辺りに住んでいた。その時、天女がいたのか思い出さない。
今の世に「天女はいるのか」「鬼女は天女になれるのか」「鬼女に溺れる身を恥じることが出来るか」「心の奥行を計ることはことが出来るか」「その奥にあるものを見つけられるか」、歩きながら様々な問いが生まれ出ていた。人世のめぐり逢いは何処で現れ、永続するのかは分からない。優しさと美しさを兼ね備えた女性を<天女>と例える。天女に連れ去られるのか、鬼女に掠め取られるのか、その男は妄想する。
天女は、天帝などに仕えているとされる女官の総称で、天上界には吉祥天女・弁財天女などがいる。崇拝に値するという意味では<女神>とも用いられるが、織姫は天女ではなく<仙女>とも言う。<鬼女>は人間の女性が宿業や怨念によって鬼と化したもので、若い女性を鬼女、老婆姿のものを鬼婆と言われる。ネットの掲示板には「既婚女性板」というものがあり、それを「鬼女板」とも言うようだ。
この鬼女板の住人は嫉妬心のようにアイドルのブログを常に監視し、あっというまに個人情報を広める恐ろしいでもあると言う。しかし、今のネット社会に必要なのは、得られる情報を分析し、実証性と精査をしながら意見を述べること。例えば、その物事に出会った時、<何ですか=WHAT>と単なる疑問を抱くのでなく、<何故なのか=WHY><どうしてそうなるの=HOW>と考え、現象や事象の背後に見え隠れするものを見抜く力が必要になっている。
5W1Hなら、その後に<When(いつ)・Where(どこで)・Who(だれが)>が付いてくる。これに<誰に=Whom どちらが=which いくら=How much= どのくらいHow many ・どうなったか(Result)>が付加される。ところで、AIが普及してくると「頭のよさ」の定義は、記憶力だとかミスをしないことでなく、創造性やリーダシップ、コミュニケーション能力の価値が上がるかもしれないと言われている。
その男はふと思った、それは自分が生きてきた時代の価値観だった。朝ドラ並みに「はて?」「はて?」と言葉を発する時代になって来た。