階段話、災害や疫病の予言獣「件=くだん」
●風英堂葉月記=階段話、災害や疫病の予言獣「件=くだん」
<人偏(にんべん)に牛>と書いて「件=くだん」と呼ぶ。前に述べた事柄を、読者や聞き手がすでに承知しているものとして<さっきの、例の>意に用い、「件の如し」と使われる。さらに江戸時代から出現の記録が見られる予言獣《件=くだん》とも言う。
漢字の通り、人と牛とが一体になった姿の<妖怪>で、怪談話だ。生まれて数日の間に災害や疫病を予言し、言い終えると死んでしまい、厄除招福の護符にも使われるようだ。作物の豊凶や流行病、旱魃、戦争など重大な時に現れるようだが、昨今の疫病ではまだ予言獣を見たと言う話は聞かない。
ところで、FBでは現在の<疫病話>はニュースフィールドには出回りにくい。ならば今後は「件の事柄」とでも書いていこう。世の中からすっかり不安が無くなってしまえば、不敵な笑みを浮かべる<件のような妖怪>は活躍の場を失い、現れなくなるが、それは難しい。妖怪以上の人間の<醜悪な化け物>のような人間が跋扈しているから。
ところで、我が友人には何故か広島人が多い。90年代に広島で音楽関係の仕事があり、多くの知人を持つようになったが、その中の中心人物が広島県三次市出身だ。その三次市に伝わるのが、国学者の平田篤胤らも愛したとされる妖怪物語「稲生(いのう)物怪録」で、江戸時代の三次を舞台に創作されている。
◆広島浅野家の支藩だった三次藩の藩士稲生武太夫が、十六歳の少年で平太郎と呼ばれたころ屋敷に三十日間にわたってさまざまな化け物が出没する。平太郎少年は妖怪を次々と退け、最後は妖怪の魔王から木づちをもらう、という話。その「奇想天外」から平田篤胤によって広く流布されていただけでなく、明治以降も泉鏡花や折口信夫らによって作品化。民俗学者の谷川健一氏が現在残る「稲生物怪録絵巻」を紹介した冊子を発行する。◆
また、三次を舞台にした宇河弘樹のアニメ「朝霧の巫女」に取り上げられたことで、三次には若い観光客が増えているという。時代が変わっているようだ。
件の事柄の世の中、桑田佳祐、研ナオコの「夏をあきらめて」をどんなタイミングで聞けば良いのか、悩み多い。
♪波音が 響けば 雨雲が 近づく 二人で思い切り 遊ぶはずの On the Beach ♬