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晩秋の妄想④「髭と帽子の先に視えるもの」

●風英堂霜月記=晩秋の妄想④「髭と帽子の先に視えるもの」

秋が急に深まって寒さが身に染みるが、段々厚着になってくる。歳を取ると足裏の皮膚が薄くなると言われるが、それは確かなようで靴底のゴワゴワを感じやすくなる。身体左右の歪みを生み出していたのは、足先の細くなっている家履きのスリッパで足指を強張らせていたことがやっとわかった。

ヒゲトリマーが壊れた、もう10年間も使っていた。少数ヒゲ民族である香高堂は、30年前イベントプロデューサーから報道部に幽閉された時、取材先に覚えられるかもしれないと髭を伸ばし始めた、周りからは出世をしたくない変わり者と評されていた。顎などまで繋がるか不安だったが、1週間の休みでなんとかなった。

帽子を被ったのは多分50代後半だろう。2017年夏の旅空マルセイユ記「陰帽子?」について書いている。「帽子の中から観えるものは何であろうか。人間は影の中の自分を覗いてみようとする。邪心を抱くものはその影に怯え、陰になり日向になって他人を支えたり、陰で人を操ったりしながら生きている」。

帽子は寒暑や埃、直射日光などを防ぎ、また身なりを整えるために頭にかぶるものであるとされている。ヨーロッパでは、もしその人物が家の中に入って来て、「帽子を脱ぐようなら真の紳士」「帽子を脱がないのなら紳士のふりをしている男」「帽子をかぶっていない人物は、紳士のふりをすることさえあきらめている男」とも言われている。

帽子を被る心理は「周りの人とは一味違う魅力を出したい、差をつけたい」らしく、要は個性的になって目立ちたいという気持ちだ。さらには、本当の自分を隠して「理想の自分になろうという願望も内に秘められている」ようだ。まさにその通りで、帽子が自己表現の一部となっており、トレードマークになっているが、頭の毛が薄くなって、それを隠すためでもある。

歳を取ると身体の皮膚は薄くなるのに、人間界では政治家や官僚、財界などは偉くなる程、面の皮が厚くなる輩ばかりが増えていく。

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