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【地中海北縁の旅と生活】第4章<南仏マルセイユ生活始まる>⑤

香高堂 【地中海北縁の旅と生活】第4章<南仏マルセイユ生活始まる>⑤
 
《やっとヤドカリ生活が終わるか、ユニクロとダロワイユ》

 9月末の日曜、マルセイユの最大の観光地、旧港にてストリートジャズを聴く。ジャズはどんな街角でも心地よく響いてくるが、陽光の海辺で聴くのも清々しい。フランス語に慣れるため毎日のようにテレビを見ているが、あまり聴くことは少ない。早くコンサートやライブハウスでも行きたいと思っているのだが、生活拠点が無いと落ち着かない。
 
 9月下旬から昼間は半袖1枚で外出出来たが、朝は相当に冷え込む。10月に入って昼間まで気温が下がり、街を歩く人々はすっかりと革ジャンや冬物を着込んでいる。サラエボから持ち込んだのは夏物だけ、重ね着をすればと良いだろうと思い込んでいた。13日にはパリに行くこともあり、引越荷物は22日にならないと届かない。
 慌ててマルセイユの港の再開発地<テラス・デュ・ポール>に買い物に出た。ここは横浜のみなとみらいのような場所、出店しているユニクロの値段は多少高いようだが、品物は安心出来る。ヒートテックの下着、ダウンジャケットを購入、これで暫し寒さを凌げる。
 
 この日は陽射しがあって温かったので、午後遅めのランチを日本でも有名な<ダロワイヨ(Dalloyau)>のテラスでとる。久しぶりの外食である。羊とマグロ、マルセイユは特に美味しいというレストランは少ないようだが、やはりフランス、味付けや野菜の使い方が上手い。車なのでワインは控えめであった。
❖ウィッキペディア 『ダロワイヨ(Dalloyau)はパリを本拠とする食品会社である。家族経営の独立企業で、日本へは1982年に株式会社不二家がダロワイヨ社とライセンス契約を結び、フランス国外初のダロワイヨの一号店が東京自由が丘に開店。1989年には銀座本店が開店した』
 
 10月のある日、下見をしたアパートメントのテラスからは、マルセイユの象徴カランクと地中海が望める。祭日の10日、ゴルフ仲間とのラウンド中に不動産屋から電話があり、やっと大家の了解が取れたとの連絡あった。アパートメントが10月20日過ぎから借りられる様だが、家具無しのためベッド等の購入、サラエボに置いてある引越荷物の陸送など手配事項が沢山ある。
 
 やっと<ヤドカリ生活が終わるのか>と言う気分であるが、考えてみたら7月からずっと借宿暮らしのようなものだ。7月のヴァカンスはマルセイユでの狭いアパートメントホテル、サラエボの自宅に戻っても引越荷物の整理で不自由生活、8月末からはプラド海岸近くのホテルの小さな部屋を借宿にしてきた。都合三か月を超えた衣類、食事などのやりくり生活を終えられる。だが、10月末に検査のため日本に戻るので、また東京借宿生活になるので、12月に入らないと落ち着けないようだ。
 
 これも旅空暮らし、人生も旅と思えば、常にヤドカリ生活をしているようなもの。安住して済まされる日々は人間にはないのだろう。
そう言えば、星野哲郎作詞で小林旭の「やどかりの歌」と言うものがあった。
<岩の割れ目を 一夜の宿に 住めば うつぼが じゃまをする どこへ逃げても 苦労とやらの 重い甲羅が ついてくる>
<泣くなやどかり つらいだろうが しょせん この世は 仮の宿 ころり ころりと ころがるたびに 角もとれます まるくなる>

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