kokobanashi 1話目「三面鏡」

嘘か誠かわからぬ怪談小話1話目。
ある時は作り話、ある時は本当の話。
拙い文ではありますが、どうぞお付き合いくださいませ。

【三面鏡】

私が小学2年生の頃、
父が十二指腸をやって病院へ運ばれた。
しかし、それと同タイミングで、今度は母の実家の祖父が階段から転げ落ちて危篤状態になったと連絡が入る。

母は海外の人で、どうすればと慌てていたが、「僕は大丈夫、娘は近所に住む僕の妹に預けて、お義父さんに会いに行きなさい」と言う父の言葉を信じて2週間ほど母国へ帰った。

…で、父が入院して、母が帰国している間、私は学校があるので伯母の家に暫くお世話になった。

伯母の家には古い三面鏡のドレッサーがあり、それを気に入っていた私は、よく友達を招いては美容師ごっこをしていた。

友達のYちゃんを三面鏡の前に座らせ、私はヘアゴムとヘアブラシを両手に持ち「どんな髪型にしますかー?」と尋ねる。

「ポニーテールがいいな!」
元気な返事に「かしこまりました!」と、丁寧に彼女の長い髪を梳いてゆく。

「Yちゃんの髪の毛、長くて凄く綺麗やねぇ〜!」鏡越しにYちゃんと談笑しながら何気なく言った私の一言に「ほんとに?いつもママがお手入れしてくれるんよ」と、目を輝かせこちらに振り向くYちゃん。

…ふと、異変に気付く。

こちらへ振り向いたはずのYちゃんと
まだ、鏡越しに目が合っている。

「…え」
口から漏れた声に反応したかのようにワンテンポ遅れて鏡の中のYちゃんも鏡の中の私の方へ振り返る。

「どうしたの?」
Yちゃんの言葉で我に返る。
違和感が何事も無かったかのように辺りの空気に溶け込んで消えていった。

目の錯覚だったのか、子供の頃の記憶違いか、今となっては知る由もない。

……嘘か誠かわからぬ怪談小話。
いつかお会いできたら聞いてみて。
答えを教えてあげましょう。

ありがとうございました。

執筆:koko(3期メンバー)


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