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第四の子豚

むかしむかし、あるところに子豚の四兄弟が住んでいました。街の雑踏に飽きた四兄弟は郊外の原っぱを買い取り、それぞれ家を立て、移り住むことにことにしました。この街は気温も低くてエアコン代も助かりそうです。最近は電気代もバカになりません。

長男の子豚は遊び人、原っぱに着くと買ってきたわらの束を集め、さっさと藁の家を建てました。住むには十分な家がすぐにできました。そしてさっさと遊びに出掛けます。

次男の子豚は常識人、大工を集めて木造の家を建てました。人の暖かみのある快適な家ができました。門扉も備えた立派な邸宅です。

三男の子豚は慎重派、綿密な計画を立て、レンガで重厚な家を建てました。高い外壁を備えて立派な門に守衛も配置します。「俺がエンタープライズだ」が口癖ですが要塞のような家がてきました。

末っ子の子豚はエンジニア、魔法で妖精を操ります。魔法の紙にさらさら書いて呪文をとなえると自動で家が作られます。最初のうちは窓だらけだったりドアが開かなかったりしましたが妖精がこじんまりとした家を建てました。見た目は綿菓子みたいでした。

三匹の兄は口々に「なんで家を一つ立てるのに魔法を書く必要があるんだ、バカじゃね」とか「人の手で作った暖かみがない」とか「重厚さと安心感が足りない」と末っ子を馬鹿にしました。

ある日、原っぱに狼がやってきました。

最初に狼は長男の子豚に目をつけました。長男が遊んでいるところを見つけると牙を剥いて襲い掛かります。長男は命からがら逃げ出し、自分の家に逃げ込みました。扉の裏に隠れてガタガタと震えます。

狼は長男の隠れた藁の家を見つけるとニヤリ、お腹いっぱい大きく息を吸い込むと「フゥフゥフゥのフー」と鼻息で藁の家を木っ端微塵に吹き飛ばしてしましました。長男はパックリ狼の腹の中。

狼は次男の家にやってきました。次男は長男に起きた惨劇を聞いて外門の鍵を電子ロックに取り替えて強化していました。これで扉はパスワードがわからないと開きません。

狼はりっばな彫刻のされた門の前にやって来ました。「生意気に門に電子ロックなんてつけやがって」、狼は試しに「ユーザ名:admin、パスワード:admin」と入力してみると門はギーッと空きました。施工業者任せがよくなかったのです。

狼は家の前まで来ると大きく息を吸い込んで「フゥフゥフゥのフー」木の家は木っ端微塵に吹き飛んで、次男もパックリ腹の中。

狼は三男の家にやってきました、堅牢な壁に守衛付きの門がある重厚なセキュリティを誇る家です。三男の家に入るには守衛の前を通らないといけません。

狼が守衛のところにやってくると「クライアント証明書をご提示ください」と守衛が言いました。狼は次男の家で拾ったクライアント証明書を使って守衛の前を通り抜けます。「いなくなったユーザーは消しとかないとな」狼はボソッと呟きました。

レンガの家まで来ました。さすがにこれは鼻息ではどうしようもありません。ふと見上げると煙突がついて、狼は屋根に登りました。

監視カメラで狼に気づいていた三男は煙突下の暖炉に大急ぎ。鍋いっぱいの油をグツグツ煮たたせます。

狼は屋根に上ると背中のリュックからライターを取り出しました。そして火をつけると煙突の中に投げ込みます。ドッカーン、家のなかで爆発が起きて窓もドアも吹き飛び、レンガの家は崩れ落ちました。

三男もパックリ腹の中。

狼は末っ子の家にやってきました。見た目は長男の家のような外観で外壁もあるように見えません。何故か門だけが建っていますが.......「魔法使いの住む家はよくわからん」と思いつつ狼は近づきます。

狼が近ずくと家の数が10個,20個.....100個とどんどん増えていきます。狼は少し驚きましたが冷静に大きく息を吸い込んで「フゥフゥフゥのフー」、家を38件消しとばしてしまいました。

しかし、狼が息を整えているうちに、家がどんどん生えてきて吹き飛ばす前のに倍以上に増えました。狼は肩をすくめました。

狼は少し気になっていた門の方に向かいます。門は名前を言ってはいけないネズミ王の最新サービスと連動する方式のようです。狼は勉強熱心なのですぐにわかりました。

まず、指紋認証がありましたので狼は切り取っておいた三男の腕で認証を突破しました。すると門から「ワンタイムパスワードをお送りしました」と声が帰ってきます。三男のスマートフォンを取り出して確認しているうちにアカウントがロックされてしまいました。門についた目玉が狼をじっと見つめていました。

「気づきやがった」、狼は正面から入るのを諦めました。

狼は耳をピンと逆立てて住居群の通信を聞き始めました。ほんとは疲れるからやりたくなかったのですが仕方ありません。大部分は暗号化されていましたのでどうにもなりませんでしたが次男のところで入手した証明書の束をつかって少し解析できそうです。

得られた情報から狼は家の一つを選んで入ってみることにしました。門以外の裏口があるかもしれません。狼が牙と爪を使って壁と屋根をよじ登り家の煙突から中に入り込んで見ると家の中はキラキラと輝いていました。まるでハチミツの壺の中です。

中に小豚がいたので狼は爪を一振り、あわれ小豚は「私が死んでも代わりはいるもの」と呟いてすっと、消えてしまいました。


その時です、狼は首筋に寒気を感じると「?!」と振り向きました。そこには目玉のお化けが浮かんでいたのです。目玉のお化けの目がピカッと光ると家が跡形もなくなくなっていました。地面には狼の形の大きな跡が残っています。

「イタタタ」目をやられた狼は一度森に戻ることにしました。でも、その部屋に影が縫いとめられたまま付いてきていないことに気がつきませんでした。

目玉を通して一部始終を見ていた末っ子子豚が狼の影に魔法をかけると影が一声吠えて森の方に駆け出していきました。

末っ子は「やれやれ」と言いながら長男・次男・三男をバックアップから復旧しました。

長男また藁の家を作り始めました。

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