【スプラ3】INK WAVE の統計 Part1
INK WAVE システム開発者のはく @hk30617093 です。
この度、スプラトゥーンの非公式リーグである INK WAVE に関する様々なデータを公開していくことになりました。
データは何度かに分けて公開していく予定ですので、面白いと思った方はXアカウントをフォローしてお待ちいただければと思います。
0. はじめに
本記事は公開するデータをできる限り多くの人に正しく理解していただくためのものであり、特定の思想や考えを補強したり否定したりするためのものではありません。
公開する情報はあくまでも統計的事実を表すデータとその解説にとどめる予定です。そこから読み取れる内容をどのように受け止め、何を論じるかは参加者の皆様次第ですので、お好きに解釈していただいて構いません。
また、この解析はあくまでもINK WAVE に関するものであり、特にXマッチとの直接的な関係性はありませんのでご理解ください。
データに関する疑問点などございましたら質問を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。(すべての質問への回答は保障いたしかねます。)
本題に入る前にINK WAVEに関する簡単な説明をします。
すでによく知っている読者の方は1章までスキップしてもらって問題ありません。
INK WAVE とは
INK WAVE はSplatoon 3 の非公式リーグで、チーム単位で全4週間(12日間)戦い、独自のレーティングシステムにより順位を競います。
対戦は基本的に月曜日・水曜日・金曜日の夜に行われ、21時半から23時半の間に30分区切りで4枠対戦をする時間が定められています。
各チームは好きな日の好きな枠にエントリーすることができ(エントリーしないことも可能)、1日最大4チームと対戦します。
INK WAVE では1枠ごとにシステムによって選出された相手と3ルールで対戦を行います。ルールは4つのガチルールにナワバリバトルを加えた5種類から「運営指定ルール」「自チーム選択ルール」「相手チーム選択ルール」の3つで戦います。
INK WAVE 用語
WAVE POWER (WP): INK WAVE 内で使われているレーティングシステムのレートの名称。公式のXマッチの Xパワーと同様のレートだが、数値自体は無関係。
SEASON: INK WAVE のシーズン。 SEASON0 は2023/9~2023/10、SEASON1 は2023/11~2023/12、SEASON2 は 2024/2~2024/3 に開催された。
セット: 1つの時間枠で行う3ルールでの対戦のうち、1ルールでの対戦の単位。つまり、INK WAVEでは1つの時間枠で同じ相手と3セット行うと言い換えることができる。
WAVE: INK WAVE の対戦での1枠のこと。1WAVE エントリーすると同じ相手と3セット対戦を行う。
WAVE数: あるチームが参加して戦った WAVE の数。
ランク: 順位に応じて参加チームに付与される。参加チームは上位から、クラーケン・オルカ・シャーク・モレイ・マンタ・ペンギン・ジェリーフィッシュの7つのランクに振り分けられる。
計測: 参加チームは一定のWAVE 数を戦うとWPが確認できるようになる。
計測期間: WPが確認できるようになるまでの期間。SEASON 3 現在、7 WAVEに設定されている。
規定WAVE数: 最終ランキングに掲載されるために必要な参加WAVE数。SEASON 3 現在、12WAVEに設定されている。
最終WP: そのシーズンで最後に参加したWAVEで戦った結果から算出されたWP。リーグの最終順位はこの最終WPで決定される。
1. レーティング(WAVE POWER) に関する統計
はじめに、INK WAVE で使っているレートである WAVE POWER (以下WP) の性質に関するデータをご紹介します。
レーティングに関する基礎知識は、私が以前書いた記事を参考にしていただければ幸いです。(INK WAVEで使ってるアルゴリズムとこの記事で紹介しているものが完全に同じというわけではありませんが、考え方は基本的に同じです。)
データに関する条件は以下の通りです。
調査期間:INK WAVE SEASON0 ~ SEASON2
総WAVE数:5363
総セット数:16070 セット
累計チーム数(規定WAVE数到達チームの累計):552チーム
1.1 セット取得率
初めに、WPの差ごとのセット取得率を調査しました。
WP の差:各WAVE における対戦チームとの最終WPの差
セット取得率:1セット(3セット1WAVE)単位で勝利した割合
以下は50区切りのWP差を横軸、その範囲でのセット取得率を縦軸にプロットしたグラフです。(視認性の観点から左右を一部切り取って描画)
例えば WP差が 0 の箇所のセット取得率をみてみると 0.5 となっていて、WP差が50未満の相手であれば 50%で1セット取得していると読み取れます。
もう少し拡大してみてみましょう。
赤色の〇で囲んだ点をみるとWP差が50~100 の相手に対してはセット取得率は30%となっています。またWP差が100~150であれば20%、200~250であれば10% となっています。
つまり、「対戦相手のWPが200~250高い場合は、10セットやれば1セット程度勝利が期待できそう」といったようなことが読み取れます。
1.2 セット取得割合
続いて、先ほどのセット取得率に関連して、WP差に対する「1セット以上取得した割合(以下、セット取得割合)」を調査しました。
WPの差:各WAVE における相手チームとの最終WPの差
セット取得割合:3セット中1セット以上取得した WAVE の割合
以下は50区切りのWP差を横軸、その範囲での「セット取得割合」を縦軸にプロットしたグラフです。(視認性の観点から左右を一部切り取って描画)
例えば WP差が 0 の箇所の「セット取得割合」をみてみると 0.86 程度となっていて、WP差がなければおおよそ86%で1セット取得していると読み取れます。
裏を返せば、WP差が50未満であったとしても 3-0 (0-3) のストレートの割合は 14% 程度存在しているということになります。
これには、編成相性やステージ相性、選択ルールなど様々な要因が考えられます。
また INK WAVE の各シーズン終わりに表彰している「ジャイアントキリング賞」の受賞チームはおおよそいつも 400~500 の差で受賞しており、この図の WP差が400~500 の箇所に位置している点がそれらの WAVE に該当します。
こちらも先ほどと同様にもう少し拡大してみてみましょう。
赤色の〇で囲んだ点をみるとWP差が100~150 の相手に対しては「セット取得割合」は約 50% となっています。つまり、WP100 差ある相手であったとしても 2回に1回は1本以上取得できるということになります。
また WP差が 200~250 であれば約 30%、300~350であれば約 10% となっています。
つまり、「対戦相手の WP が 200~250 高い場合でも、3~4 WAVE 対戦すれば 1回ぐらいは1セット勝利が期待できる」といったようなことが読み取れます。
この数値が高いと感じるか低いと感じるかは読者のみなさまの感性にお任せします。
2. マッチングに関する統計
続いて、INK WAVE のマッチングに関する統計データをご紹介します。
データに関する条件は以下の通りです。
調査期間:INK WAVE Season0 ~ Season2
総WAVE数:
SEASON 0 : 1147
SEASON 1: 1916
SEASON 2: 2300
チーム数(規定 WAVE 到達チーム):
SEASON 0: 129チーム
SEASON 1: 189チーム
SEASON 2: 234チーム
2.1 WAVE数 と 相手とのWP差の関係性
まず初めに、参加した WAVE の回数が増えるにつれて、どのようにマッチング相手が変化していくかを調査したデータをお見せします。
以下のグラフは SEASON 0 におけるマッチング相手との WP差を示しています。
WP差:各WAVE における対戦チームとの最終WPの差
横軸は各チームごとの何WAVE目かを表しています。例えば横軸1~7の範囲は計測期間を表しています。
縦軸はそれぞれのWP差ごとの WAVE の割合を示しています。
なお、参加 WAVE 数が大きくなるにつれ参加チーム数が次第に少なくなりデータの信頼性を担保できないため、以降の図では30チーム以上が参加したWAVE数のデータのみを表示しています。
この結果をみると SEASON 0 では各チームの初戦は WPが300以上離れたチーム同士が対戦する割合が約半数存在したことが分かります。
一方計測終了するころにはおおよそ8割以上のマッチがWP差200以内のマッチになっていることが分かります。
続いて、最終WP2000~3000 のチームのみを対象とした場合のデータをお見せします。
こちらを見ていただくと特に計測終了後でのWP差 300 以上の割合が減ったことが分かります。
実際、参加チーム数の偏りの都合で、ジェリーフィッシュ級とクラーケン級(SEASON0 では 最終WPがそれぞれ 2004未満のチームと3052以上のチーム) のマッチングでWPの近い対戦相手が見つかりづらく、自然とWP差が大きい対戦相手になってしまうという傾向がありました。
続いて、SEASON 1, SEASON 2 のデータをまとめてお見せします。
SEASON 1、SEASON 2 とも、SEASON 0 と大きく傾向は変わっていません。
全体的な傾向として、WAVE数をこなせばこなすほどWP差が小さい相手とあたる割合が増えるということが分かります。
2.2 各チームがWP差が300差以上の相手と対戦した回数
続いて、自分たちのチームと相手のパワー差が大きいマッチングは実際どの程度起こりえるのか?というところに注目してデータをお見せします。
以下のグラフは SEASON 0 において、各チームがWP差300以上の相手と何WAVEマッチングしたかを示しています。
WP差:各WAVE における対戦チームとの最終WPの差
横軸はWP差300以上の相手とマッチングしたWAVE数を表しています。
縦軸はチーム数の全体に対する割合となっています。
この図を見ると、全体の約 70% のチームはWP差300以上のチームとの対戦が1WAVE 以下であり、全体の約 95% のチームは 3WAVE 以下となっています。
また WP差300以上のチームとの対戦が 7回以上のチームはすべてジェリーフィッシュ級のチームであり、実力の近いチーム自体が少なくマッチングで選ばれる相手との実力差が必然的に大きくなってしまうことが要因と考えられます。また WP差300以上のチームとの対戦が 4 回のチームも1チームを除きペンギン級・ジェリーフィッシュ級でした。
続いて SEASON 1 の結果をお見せします。
SEASON 1 では WP差 300 以上のチームとの対戦が1WAVE 以下の割合が少し増えていますが、 3WAVE 以下の割合は0.1% であり、有意な差は見られませんでした。
また、WP差300以上のチームとの対戦が 7回以上のチームは SEASON0 と同様、すべてジェリーフィッシュ級のチームでした。5回以上のチームもすべてペンギン級・ジェリーフィッシュ級のチームでした。
次に、継続エントリーチームに絞って算出したグラフをお見せします。
この結果をみると、WP差 300 以上のチームとの対戦が1WAVE 以下の割合が全体の80%となっており、これは前シーズンのWPを考慮した引継ぎを行った影響によるものだと考えられます(※継続エントリーによるWPの引継ぎに関する詳細は現状非公開です)。
続いて SEASON 2 の結果をお見せします。
以下は SEASON 2 の全体のデータと継続チームに絞ったデータです。
SEASON 2 ではSEASON 1 と同様、継続チームに絞ったデータのほうがより、パワー差が大きいチームとマッチングする割合が低くなっています。
一方で、SEASON 1に比べるとWP差 300 以上のチームとの対戦が1WAVE 以下であるチーム数の割合が少し低く、違った傾向が見られます。
なぜこのような結果となったかは、様々な可能性・要因考えられ現在調査中のため、より詳しい解析は次回以降とさせていただきます。
また、WP差300以上のチームとの対戦が 5回以上のチームは SEASON0, SEASON1 と少し異なり、ペンギン・ジェリーフィッシュ級のチームが大半ではあるものの、マンタ級・モレイ級のチームが1チームずつ含まれていました。こちらの要因もはっきりとはわかっていませんが、参加チーム数の増加などいくつかの原因が考えられます。
3. おわりに
今回は、「INK WAVE の統計」のPART1としてWPとマッチングに関するデータをご紹介しました.
この「INK WAVE の統計」はシリーズ化する予定で、ルール別勝率やカウンタールールに関する統計データを公開していく予定です。
最後に、本記事を執筆するにあたり Splatoon 統計課(@splatoon_stat)様、Antariska*(@antariska_spl)様、むー(@mummumsan)様にデータ解析に関する議論・ご指摘などのご協力をいただきました。
この場を借りて感謝申し上げます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。