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「一歩先のことができるのが、ミニメイドなのです」

こんにちは、ハウスキーピング協会クリンネスト事務局です。
ハウスキーピング協会は2003年に設立された特定非営利活動法人で、約17万人が受講した整理収納アドバイザー資格を認定発行している協会です。
https://housekeeping.or.jp/

ハウスキーピング協会の母体になるのが、1983年に創業されたミニメイド・サービス株式会社、日本で初めて家事代行サービスを始めた会社です。
そして、この家事代行サービスで培われたお掃除のプロのノウハウをまとめたのが、「クリンネスト資格認定講座」です。ハウスキーピング協会の認定資格講座で、2級受講者は1万人以上です(※2022年末集計)。

ハウスキーピング協会クリンネスト公式noteでは、日々のお掃除が楽しくなることを願い、様々な角度からお届けします。

クリンネストの講座が、多くの方の経験や知識や熱意から構築されていることをご紹介し、クリンネスト資格のその背景を知っていただけるとうれしく思います。

代々木上原にあるミニメイド・サービス株式会社です。

今回はミニメイド・サービス株式会社に長年勤務されている、狩野好子(かのうよしこ)さんのインタビュー【前編】をお届けします。


ミニメイド・サービスの初期の頃は?

クリンネスト資格認定講座は、日本初の家事代行サービス業のパイオニア、ミニメイド・サービス株式会社で培われた理論と30年以上の経験が元になっています。
初期の頃はどうだったのか知りたくて、お話を伺ってきました。
狩野さんは1989年(平成元年)4月に、まずは現場のスタッフとして週3日パート勤務で入り、それから週5日勤務になり、直営店の店長にもなって日々お掃除の現場に行ったりスタッフをまとめたりしていたそうです。

お仕事は最初から順調でしたか?

「まだまだお客様を獲得するのは結構大変でしたね。不動産屋さんからのお仕事をもらったりもしていまし、引っ越し後だとか、男子寮のお掃除とか、何でもやっていたという感じでした。

(創業者の)山田は、働くスタッフさんが気持ちよく働けること、3Kじゃない仕事を、ということをよく言っていました。気持ちよく働いてもらいたい、ということで、ミニメイド・サービスの会社をどうしていくか、ということを考えていました。(その結論として)単発や月1回は一切やらないことにし、毎週か月2回の定期契約のみにする、私が入ったのはその切り替わりの時でしたね。(仕事がなくなることは)すごく怖かったですけど、でも捨てるものは捨てて、大事なものはきちんと残していくというほうが、やっぱりよいのだと…。うちは富裕層のトップだけを目指していく、という目的が明確になったのがその頃です。」

お客様をしぼるというのはかなりの賭けではなかったですか?

「(創業者)山田の賭けはすごかったと思います。その時のコンサルタントの先生からもアドバイスいただいて、山田のアイデアとその先生とが一緒になって、それでそうしようと。

山田は、まずアメリカの家事代行の会社を視察して、インスピレーションを受けてミニメイド・サービスを創業したんですね。それで実際に仕事を始めてみたら、スタッフが”指も爪が黒ずんで、なんだか辛そうに”なっていくんです、ものすごい油汚れで。アメリカで働いている方々はそんな風じゃなかった、どこが間違っているのか、と考えたということなんです。
それでじゃあどうしていくのかとなった時に決めたことの一つが、お客様を富裕層のトップだけを目指して、月2回以上の定期契約のみにする、ということでした。」

「家庭画報」にのってからは順調(※前回の記事)、みたいなイメージで思っていましたが、色々な現場で苦労があったことが伝わってきました。

「(お客様を富裕層の定期契約を目指す)となると、今度はサービスの品質が重要になりますよね。スタッフって色々な方がいるじゃないですか。みんな一律にはできないけど、会社として一律にできるようにする努力はしなきゃいけない。そのためにどうするか、ということを考えて、そこからまずうちの作業が分単価になったわけです。1分で何ができるっていうことです。
他では1時間とか30分とかの換算のようですが、うちは1分に換算していて、例えばお風呂をやるとすると何分かかる、トイレをやるとしたら何分、それを見本にして、だいたい誰がやっても同じようにできるようにする、ということを考えました。

このお風呂だったら基本は40分でやらなきゃダメなんですよ、40分でどこまでやらなきゃいけないんだよ、というのをマニュアル化したわけです。」

たしかにお掃除の仕事はベテランも新人も色々な方がいて、お客様からすると経験を積んだベテランに来てほしいというのが正直な気持ちかもしれません。でも誰が行っても同じようにできる、というのは会社の姿勢としてとても大切なことだと思いました。

設立直後からの進化するマニュアル

クリンネスト2級認定講座では5つのハウスキーピングメソッドを学びます。受講された方から「これからのお掃除がガラッと変わりそう」と言われることの多い1つが、「汚れの5段階」。この内容は、初期の作業マニュアルにすでに入っていたそうです。

クリンネスト2級認定講座ハウスキーピングメソッド「汚れの5段階」より

少し前に澤理事長(NPO法人ハウスキーピング協会)とお話しした時に、「汚れの5段階」はマニュアルの最初の頃からあったとお聞きしたのですが

「そうです。(クリンネストの講座は)昔のマニュアルが元にありますね。
例えばマニュアルの「汚れの5段階」。これがないと、新しい人はいつまでも汚れを落とそうとするのでそこで何分も時間が経ってしまいますね。」

以前ミニメイドで仕事をしていた時に先輩から「これは水拭きでいいのよ」「ここは洗剤よ」なんて教えてもらいました。

「本当そうですね。全部同じ作業で全工程をしなきゃならないかというと、違うわけですよね。汚れに応じて違ってくるので。プロのお掃除は汚れの見極めができるかどうかで時間も仕上がりも変わってきますね。

さらにマニュアルには動線の流れや手順などがあります。それを教育することで統一化を計っていくんですよね。例えば窓ガラスを1枚するとだいたい何分だよとか、どこをするとだいたい何分と基準があると、自分がどのくらい時間がかかっているか、遅いのか早いのかわかるようになります。」

私の時もお客様ごと、お部屋ごとに何分と全部決まっていました。

「そう、それなんです。それがうちのやり方だったんですよね。なるべく誰がやっても同じになれるように。…まあそう言っても、なかなかならないんですけどね」

マニュアルは90年代くらいからつくられて、何人もの方で構築され、道具や洗剤の検証なども重ねてさらに進化していったそうです。それが「クリンネスト資格認定講座」のベースになっています。

ミニメイドで特に大事にされていることって何ですか?

「お客様も大事、そしてスタッフさん(※MEエムイーと呼ぶ:ミニメイドエンジニアの略)も大事っていうところがあります。それぞれにちゃんと寄り添ってお話を聴く、お客様には約束を守る、現場のMEさんにはヒアリングをする、ここはすごく大事にしてきたと思うんですよね。新人MEさんの話を聞いても、こんなに従業員を大切にしているところは初めてです、って言ってくれるのよね。

さらにもっと大事にしなくてはいけないのは、自分が長年働いてきたミニメイドを、絶対に自分が信頼すること。誇りを持つこと。そうしないとお客様のところに行って、説明をする時にも自信を持って説明できないですね。やっぱりお客様を大事にし、スタッフも大事にし、そしてよいサービスを提供しているっていう自信や誇りがあるから、お客様に自信をもって説明ができているんだなと思います」

クリンネストの講座をしていると、他で家事代行の仕事をしている方ともお会いする機会がありますが、そのあたりの心構えというか自信が違うと感じます

「私も他の会社の方とお話しすると、自分の会社の悪口を言ったりだとか、そういうことを聞くことがありますけど、聞いていて思うのが、誰でも仕事をしている上で、いいことばっかりじゃないですよね。でも、うちの会社が提供していることは、どこと比べても一番だな、と本当にそう思ってそう言えること、それって大事ですよね。そう思うんです。」

ミニメイドらしさとは?

ミニメイドらしさって一言で何だとお考えですか?

「以前にもこういう機会があって聞かれた時に私はたいてい「一歩先のことができるのがミニメイドなんです」って言っていました。一歩先というのがすごく大事で、本当にちょっとでいいんですよ。時間の中でやる範囲というのは決まってますけど、例えばベランダを見たらそこに何か落ちている、スリッパが逆になっている、それを見つけた時に直せる人、放っておかないで直せる人っていう、そこがすごく大事な部分だと。その一歩先が見えて、できるのがミニメイドらしさなんです、ということを、聞かれるとそう答えています。

それからやっぱり業界の中で一番現場のスタッフを大事にしているのがミニメイドらしさなんだろう、というのがありますね。こんなに大事にしている会社ってないですよ。」

ただ言われたことをやるだけではなくて、一歩先までできる、ということはどんな仕事においても大事なことだと思います。仕事を通して自分も成長する、そんなことも感じました。

ミニメイド・サービスの直営店は、約400人位のスタッフがいるなかで、働く方専用のホームページもあり、様々な報告や相談ができるツールも用意されているそうです。わからないこともわかるようにして、どうすればいいのかというところまで考えられているそうです。

狩野好子(かのうよしこ)プロフィール
1989年(平成元年)4月に現場のスタッフとして週3日パート勤務で入社。その後勤務が徐々に増え、直営店の店長として、さらにミニメイド・サービスの各部署での勤務を経て、現在は営業部営業課としてお客様の獲得や初回のお掃除の同行、提携先の企業への訪問などを担当されています。

編集後記
今回、ミニメイド・サービス㈱で長年勤務されている方から、お話しを伺い、改めて「クリンネスト資格認定講座」が数多くのお掃除の現場で培われたものだということを実感しました。

次回は狩野好子さんインタビュー【後編】をお届けします。

取材/執筆 奥田明子(クリンネスト2級認定講師・整理収納コンサルタント・元ミニメイド・サービス(株)加盟店勤務)
監修 白井 佳子(クリンネスト事務局代表)