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逆噴射小説大賞2024ライナーノーツ

 『逆噴射小説大賞』という、最大800字までの「小説の冒頭」を対象とした賞があります。わたしもこれまで過去二年か三年に渡って投稿してきました。それで、はじめて「どういう考えでこの作品を書いたのか」ということを書き留めておこうと思いました。これは個人的な備忘録に近いですが、「わたしも逆噴射小説大賞に応募してみたい」という人の一助になったならよいと思い、ここに書いておくことにします。

 まず、賞の応募要項を張っておきます。

 賞の規定上、800文字以内に収めねばならないのは当然です。その上で、一次・二次選考をクリアし、あわよくば一等を勝ち取るにはどうしたらよいのか。わたしは乏しい経験の中から役立ちそうなものを拾い集め、足りない頭をひねって考えました。その結果、以下のように考えをまとめるに至りました。

  •  真っ先に読み手の心をつかむ場面を入れる

  •  800字以内で起承転結の転まで書く

  •  最後に「続きはどうなるの?」と思わせるような“引き”を入れる

 過去の経験や、他の参加者の意見などから、この賞においては「800字以内で作品の何たるかを説明しきる必要がある」とわかっていました。この物語の売りは何なのか、ということです。そしてまた、800字の冒頭で読者の心をしっかりつかまなければなりません。
 そこでまず、いちばん最初に読者をぐっとひきつける「つかみ」になるべき場面が必要だと考えました。物語の基本的な音調をはっきりと示し、かつ適度にショッキングで鮮烈なイメージを与える必要があると思ったのです。
 次に、800文字内である程度物語を動かす必要がありました。物語の何たるかを伝えるには動きが必要です。そこで、基本に立ち返り、起承転結の構造を使うことにしました。しかし、書いているのは「物語の冒頭」ですから、完璧に終わらせてしまってはいけません。なので「転まで」とすることにしました。
 そして最後に、「このお話はこの先どうなるの? 続きが読みたい!」と思わせるようなフックを配置します。ここから先、いよいよ物語が本格的に動き出すぞ……という予感を与えたい、というわけです。
 この三つを意識して、あとは何かいいアイデアはないかな……と考えているうちに最終日が迫りました。どうしようと焦っているうちに、ふっとあるアイデアが浮かびました。

「自分でも知らないうちに、腹の中に価値のあるものを仕込まれた男がさらわれて拷問されている」

 よしこれでいけるぞと思って書き始めました。ここで気をつけたのはやはり文字制限です。できる限り言葉を切り詰めようと思いました。そこで余分な描写をなるべく削ぎ落とし、体言止めを多用することで文字を節約しました。
 わたしは犯罪小説が好きなので、その方向でいくことにしました。物語の基本音調は「とにかく主人公が危機に見舞われつづけること」だと考え、その出だしとしていきなり、捕らえられて拷問されているシーンを入れることにしました。そして、主人公があわや殺されかけるというところで劇的に救出されるのだが、救い主も善人にはほど遠く、そして主人公は自分がたいへんなトラブルに巻き込まれたことに気づく……というところまで描くことにしました。
 最後の「引き」はどうしようかと考えた結果、主人公の次なる行動へのフックを配置することにしました。主人公をのっぴきならない隘路にひきずりこんだ人物を提示し、その人物に何としても接触しなければならない……という目標を示したかったのです。
 これらの要素を800字以内におさめるのは意外とたいへんでしたが、先に挙げた工夫によって、おかげでどうにか規定の字数以内で必要な要素をすべて書ききることができました。

 自分としてはできる限りのことをしましたが、あとで読み返してみると「こうしたらもっとよかったな」と思う部分が目についてきます。個人的には、主人公をかっさらった女に荒事をさせるシーンを入れたほうがよかったなと思い、少し後悔しました。女のキャラクターをもっとはっきり描いたほうがよかったということです。
 しかしそれ以外はおおむねうまく書けたと思っています。すでに応募期間は終了し、現時点(2024年11月2日)では審査が進められている段階です。どうなるかは審査員と神のみぞ知るところです。個人的には一次・二次審査をクリアしたいですが、応募者が過去最多であり、錚々たる実力者が揃っていますから厳しい戦いとなるでしょう。
 それでも自分なりに最善を尽くしたつもりですし、自分の考えがよい方向に作用してくれたら嬉しいと思っています。

 これでライナーノーツを終わります。読んでくださってありがとうございました。

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