夕暮れ時の二色刷り
どういうこと?
という夫の一言。
心の中でムフフ、とつぶやく。自分だけが知る景色。一番好きな色。誰もが同じく時を共有するけれど、あの一瞬だけは私のもの。と同時に、どれだけ素晴らしかったか、どんなに心が揺れたか、本当に美しかったのに、というのを人に伝えたくてたまらない。
冬の夕暮れ、あの時をマジックアワーとやらともいうらしい。けれど私はなんというか知らない。一つのグラスに入る二色でできたカクテルのように、決して交わらない二色が、正確な一線で静かに均衡を保っている。昼と夜が同時に起こる、世界を二色刷りしているような感じさえする。
本当に美しいものというのは、自然の中にある。空を彩る色は崇高だ。
でも、夕暮れという誰もが同様に共有できる一瞬の、時折の、刹那的ともいえる感動を共有するために、人は人類として誕生したころからずっと、何か他のメディウムを通して後世に残してきた。
見ただけでは得られないもっと大きなエネルギーに変わる。だから人の活動は、文化は、芸術は面白いのだろうと思う。だから、人の作る作品とは、とても尊いものなのだ。
一人で納得しながら、そんなことを考えているうちに息子の要求が始まって答えているうちに寝落ちして、次の日になってしまった。
一日経って、あの時の感動をきれいさっぱり忘れている自分がいて、でも、きっとまた今日も同じ夕暮れを見たらまた色褪せない感動がよみがえってくるはず。
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