オメガストライカーズ二次創作「何が何でも一番になる。」
omest.jp で投稿していた、大人の決断を迫られるジュリエットのちょっと暗めな話です。ジュリエットがゲーム中に言う、「必ず一番になる!」ってどれくらい一番になりたいんだろうという発想をこじらせて生まれたちょっとダークな800字短編です。
シャワーで練習の汗を流しながらその日の出来事について考える静かな時間も、私は好き。でも、それは今日以外の話かな。 私は知ってしまった。私たちをプロリーグに運んでくれた有力者の秘密を。あの人は地元の企業や自治体、ファンから援助された資金を、自分の欲望のために費やしてる。 もちろん、許せることじゃない。だってそのお金は、お店に来てくれるお客さんや応援してくれる人たちが、一生懸命働いて私たちに出してくれているお金だから。 アマチュアリーグで試合をする私たちの実力を認めてくれたこと、そしてずっと昔からの私の夢を叶えてくれたことには、感謝してる。憧れのエステルの隣でプレイできることは、本当に幸せ。 なのに、どうして……。このことがバレたら、きっとFROSTFIREはプロリーグに出られなくなっちゃう。エステルとも離れ離れになるかもしれない。それは絶対に嫌だ。私はエステルを証明したい。みんなまたエステルのことを好き勝手言って……それでもアリーナで見返す機会は無いなんて、とても悔しい。 でも……悪いことを見て見ぬふりして試合をすることに、プロとしての意味はあるの?スタジアムに足を運んできた人たちの声援に、私は一体どう応えればいいの?私はオーナーに口止め料を掴まされて、ファンへの裏切りに加担するの? ―――ううん、それでも。これは、私の良心で勝手なことをしていい問題じゃない。入院しているおばあちゃんの治療費には、プロの収入が必要。 このことを知っているのは私だけ。私さえ黙っていれば、エステルやドゥブがこんなことで悩まなくて済む。みんなプロリーグで試合ができて、エステルの側にいられて、お金もあって、おばあちゃんも助けられる。私も周りの人たちも、幸せな道。 ああ、私は自分がこんなに卑怯な人間だったなんて思わなかった。これは家族の病気と仲間のことを言い訳に、楽な道を選ぶことを正当化しているんだ。 そうだとしても、私は掴んだこのチャンスを逃さない。 何が何でも一番になる。それが私の夢。最後まで走り切って見せるって、あの時そう決めたから。