アメリカ旅7
アメリカ旅7
次の日ゆきさんが作ってくれた日本食の朝ごはんを食べた後、恩返しのためにまた薪割りをすることにした。
3時間ぐらいひたすらやって、3ヶ月分ぐらいの薪を作ったらしくて、すごい喜ばれた。
昼からはてっちゃん自慢のデッドのマークが入ったハーレーに乗せてもらって、ホピの居住区をいろいろ紹介してくれた。
セカンドメサ(岩の台地)からファーストメサに行く途中は渡り廊下みたいになってて、細い道の両サイドは高い崖。
見える景色はやっぱりなんにもない、ひたすらだだっ広い荒野が地平線まで続いてる。反対側も地平線まで荒野。
見える世界がほんまにシンプルで、頭ん中まで洗われた気がした。
途中でホピ族の人が、自分たちの伝統のものを外人(ほとんどがアメリカ人)向けに販売してるお土産屋さんみたいなところに寄ってくれた。
ホピの名産品は、二枚の銀を重ねて作ったシルバーアクセサリーと、カチナ(精霊)の人形カチナドールと、トウモロコシの原種の白、青、赤のトウモロコシを乾燥させたのを麻紐でくくったやつと、伝統の籠と、伝統のツボと、ココペリが持ってる笛が有名で、
その店にあるものはクオリティがめちゃくちゃ高くて、素人目にもいいもんがいっぱい置いてあった。
カチナドールは100種類以上のものがあって、それぞれホピにとって大切な役割をもってて、仏教でゆうところの仏像みたいな感じで扱われてるらしい。
おれは店に入った瞬間から、誰かに見られてる気がして、でもてっちゃんとおれと店の人しか店におらんから不思議な感覚になった。
店の中のものに感動していろいろ見てたときに、ちょっとスピリチュアルが過ぎる感じで恥ずかしいけど、壁にかけられてる200体以上のカチナドールの中の1柱と目が合ってそのカチナドールとおれ以外誰もおらん空間に飛んだような感覚になった。
ずっと待ってた。
なんとなくそう言われたような気がして手に取ったらお店の人がそのカチナの説明をしてくれた。
そのカチナはロングヘアーカチナってゆって、雲間から降りる一筋の太陽の光のカチナで、カチナの中でも珍しく個別の役割を持ってて、全く正反対のものを統合する、もしくは間に立って架け橋になるみたいな意味を持ってるって教えてくれた。
そのカチナを見てから他のものが目に入らんくなった。
お店の人とてっちゃんからそのカチナを持って行くってゆうのがどんな意味があるかちゃんと考えてから決めたほうがいいって言われたけど、自分の名前に晃って字が入ってるシンクロとか、役割のこと、なによりびびっと来た直感に従って連れていく事に決めた。
店を出た後、てっちゃんの知り合いのホピの家族の家で伝統料理をごちそうになったり、オライビ以外のホピの村もいろいろ案内してもらって、ホピ観光を満喫した。
夕方まで遊んでてっちゃんの家に戻ってきた。
もっとカチナのことが知りたくなって、またいろいろ教えてもらった。
てっちゃんによると、カチナは第4番めの今の世界が始まる前から、ホピの住んでるメサ(岩の台地)におったらしくて、ホピがここに住み始めたときからいろんな知恵を授けてくれる存在らしい。
そのカチナに感謝して、月に一回カチナのための儀式が行われる。
一年のうちの半分はカチナは自分たちの世界にいて、もう半分の時期にメサに降りてきて、ホピの人と一緒に過ごす。
5月から10月のハーベストシーズンにある儀式はホピ以外の人も参加することもあるらしくて、6.7.8月はお祭りみたいになるらしい。
11月から4月はカチナが帰ってくるカチナシーズンで、その時期にある儀式は秘儀ってゆってホピの人しか参加できひんし、中にはホピの中でも少数の選ばれた人だけでしかやれへん儀式もある。
カチナシーズンのホピの中の雰囲気は葬式みたいに暗いらしくて、みんなカチナを敬って大きい声で話したり、騒いだりとかは絶対に禁止で、外人は来るだけで常識がないってみなされるらしい。
今回の10月の儀式はこれからカチナを迎える準備のものらしくて、普通は部外者が参加できるようなもんじゃないらしい。
儀式は土の中に穴を掘って出来た空間のキバって呼ばれる聖地で行われる。
オールドオライビにあるキバは数千年前からある1番最初のキバで、特に神聖やと思われててめったに使われることがない。
今回は10年ぶりぐらいにそのキバで儀式をするらしくて、オライビの人たちは何週間も前から緊張してて、ピリピリしまくってるらしい。
おれは2週間後のその儀式に参加して欲しいって何回か言われたことをてっちゃんに話したら、てっちゃんは驚いた顔の後に、なんか複雑そうな顔になって、今回はやめといたほうがいいかもしれんって言ってきた。
てっちゃんは理由を説明してくれた。
おれがお世話になったホピおっちゃんの家は代々優秀なチーフ(村のトップ)を輩出してきた名家で、スピリチュアルな力が強いから、今回はホピおっちゃんの家が仕切ってキバをやるらしくて、
これから2週間の間に、あの家に今まで散り散りになってた家族が集まって準備をはじめるから、そんなところになんも知らん人がおったら迷惑になるし、他のオライビの人も確実に警戒するし、下手したら殺されるか、とんでもないことになるかもしらんから今回は儀式を諦めてあげて欲しいってことやった。
そんなこと聞いたら余計に興味出たからすごい迷った。
スピリチュアルな力が強いおっちゃんがいいって言うんやから、ええんちゃうかなって思ったり、でもその家族は興味本位の部外者のおれがおってどう思うんやろとか、他の村の人の殺しの話しとか、てっちゃんの立場とかでいろいろほんまに悩んだ。
頭の中会議で、好奇心のワクワクは参加したい。精神は全体的に漠然とした違和感があるからやめとけ。直感はこれ以上ホピに深入りするとしても今がタイミングじゃない。
悩みに悩んだ末、今回は儀式の参加を断ることにした。
てっちゃんは複雑そうやったけど、かわりにいい人を紹介するよって言ってくれた。
その人は隣のニューメキシコのタオスって街の近くのメサに住んでる曹洞宗の禅のお坊さんで、大麻とかLSDとかの精神ドラッグを取り入れて修行してたヒッピー坊主72歳で、昔はダライ・ラマとかとおんなじ舞台でお経をあげたりしてたすごい人らしくて、その人を訪ねてみるといいよって言ってくれた。
目的地が決まったから、早速次の日に出発することにした。
その日は早く寝ることにしといて、てっちゃんのために夜コソコソとホピの詩(ポエム良さをひたすら伝えられて影響うけた。)を作って、明日のプレゼントにすることにした。
次の日朝一でてっちゃん家と別れて、プレゼントを渡した。
その後オールドオライビのホピおっちゃんに別れの挨拶にいった。
ホピおっちゃんはなんでだ!家族にも紹介したかったのにーって引き止めてくれたけど、おれが今度また来るからって言ったら悲しそうやったけど納得してくれた。
もうちょっとレベルアップしてからまた来ようって心に誓って、ホピを後にした。