【広告表現規制】広告担当者は"健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について"を読んでほしい
【注意】筆者の樋爪康之(@yasuyuki_ad)は、法律にたずさわる職業経験がありません。あくまで広告代理店の一担当者が書いた記事である点をご了承頂ければ幸いです(気になる点等ありましたらご指摘頂ければと存じます)
■健康食品の虚偽・誇大広告は社会問題
以下画像は、消費者庁が定期的に行っている「インターネット監視業務」によって指摘を受けている違反の恐れがある表示・広告の一覧です。健康食品で認められる効能効果の範囲を超えているとして、事業者に対して改善要請を行っています。
健康食品において、以下表示・広告の何が問題なのか、みなさんお分かりでしょうか?もしわからない方はこの記事をきっかけに理解を深めて頂ければ幸いです。
■広義の健康食品の定義とは
(広義の)健康食品には、機能性の表示・広告が認められてる「①②③保健機能食品」と、そうではない「④食品(狭義の健康食品)」を含みます。
消費者庁作成の関連資料に目を通すと、(広義の)健康食品とは「広く健康保持増進効果等を表示する食品」として定義されています。
健康保持増進効果等とは、健康状態の改善又は健康状態の維持の効果を表示・広告するものであり、具体的には「A.疾病の治療・予防を目的とする効果」「B.身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効果」「C.特定の保健の用途に適する旨の効果」「D.栄養成分の効果」など様々な健康効果を期待するものです。
但し、これらの健康保持増進効果等をすべて表示・広告することが認められるわけではありません。上記のうち「A.疾病の治療・予防を目的とする効果」「B.身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効果」は健康食品で認められる範囲を飛び越えて医薬品の範疇となってしまい違反となってしまいます。ちなみにC.D.は保健機能食品として定められた範囲で表示が可能です。以降で詳しく触れたいと思います。
■健康食品は医薬品ではない
健康食品はあくまで食品です。医薬品ではありません。
従って医薬品の効能効果の範疇となる「疾病の治療・予防を目的とする効果」「身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効果」は健康食品で表示・広告することが認められていません。
「疾病が治療できる」「疲労回復する」「免疫機能が向上する」「強精強壮の効果がある」など医薬品で認められる効能効果を、健康食品で表示・広告することは禁止されています。仮にそのような表示を行った場合、実際の効果の有無に関係なく、健康食品であっても法令上は医薬品扱いとなり、その結果「未承認医薬品の広告禁止」として薬機法上の違反となります。
しかし、疾病の治療や予防ではなく「体脂肪を減らすのを助ける(サポートする)」といった程度であれば国に認められる範囲で表示・広告が認められるものもあります。それが保健機能食品です。では、実際にどのような表示・広告が認められているのでしょうか。次で詳しく見てみましょう。
■保健機能食品とは
保健機能食品は、保健機能食品制度によって、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たすことで定められた範囲で「機能性」を表示・広告が可能です。それが保健機能食品です。保健機能食品には「①特定保健用食品」「②機能性表示食品」「③栄養機能食品」の3区分を含みます。それぞれの概要と広告表現のルールを順に説明していきます。
■①特定保健用食品とは
特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示をする食品です。個別に有効性及び安全性等に関する国の審査を受け、特定の保健の目的が期待できる旨の表示を許可又は承認された食品です。(健康増進法第43条第1項)以下マークが目印です。
認定を受けた商品一覧のエクセルがダウンロード可能です。自分の目で確かめてみるとイメージしやすいでしょう。以下画像の下にリンクを載せておきます。ちなみに承認済み商品は1000品目以上あります。
■②機能性表示食品とは
機能性関与成分によって特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除
く)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて表示・広告可能な食品です。届け出済み商品は以下サイトにて検索可能です。こちらも実際に検索して、自分の目で確かめてみるとイメージしやすいでしょう。以下画像の下にリンクを載せておきます。届け出済み商品は4000品目以上あります。
■③栄養機能食品とは
特定の栄養成分を含むものとして国が定める基準に従い当該栄養成分の機能を表示・広告可能な食品です。脂肪酸1種類、ミネラル6種類、ビタミン13種類が対象となります。逆に言えばこれらあわせて20種類のみです。
以下画像は表示可能な栄養機能表示の一覧になります。
■④食品(狭義の健康食品)とは
(狭義の)健康食品は、あくまで食品です。そのため「食品」においては、表示可能な効能効果の範囲が大きく制限されます。医薬品や保健機能食品で認められていた効能効果の表現はNGです。
記事の冒頭で紹介した消費者庁の「インターネット監視業務」で違反の恐れがある表示・広告の画像を見ると今なら何が問題なのかある程度ご理解頂けたのではないでしょうか?そのほとんどが食品の範囲を超えて「医薬品」かのような効能効果を表示・広告しています。この後は、さらにスムーズに理解できるように事例やTipsをご紹介します。
■健康食品の広告と3つの法令と表現規制
「体重が減らなくて困っている」そんな悩みを持つ方は世の中に沢山います。しかし、本当に食べるだけ、飲むだけで簡単に痩せることがありえるのでしょうか?
痩せるためには消費エネルギーが摂取エネルギーを上回る必要があります。健康食品を摂るだけでただちに痩せることはありえません。よく考えれば分かることですが、飛びつきたくなる消費者が多いのもまた事実です。
著しく事実に相違する、誤解させる表示・広告は、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害してしまいます。そのような誇大広告を防ぐために、消費者が安心して良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べるように、健康食品の広告に関しては3つの法令で規制されています。3つの法令の概要を端的に表したスライドを共有します。
■健康食品で問題となる7つのケース
ここでは具体的に(狭義の)健康食品の表示・広告で問題となる代表的な7つのケースをご紹介します。
■①医師又は歯科医師の診断、治療等によることなく疾病を治癒できるかのような表示
■②健康食品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、短期間で容易に著しい痩身効果が得られるかのような表示
■③最上級又はこれに類する表現を用いている場合
■④体験談の使用方法が不適切な表示
■⑤体験結果やグラフの使用方法が不適切な表示
■⑥行政機関等の認証等に関する不適切な表示
■⑦価格等の取引条件について誤認させる表示
上記は代表的な7つのケースとなりますが、これだけでは理解としては不十分です。例えばチラシの表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が著しく事実に相違する、又は著しく誤解を招くかどうかも含めて、健康食品に関しては適正な表示になっているか、総合的に判断されます。
更に詳しく知りたい方は以下PDFのP12~P24ページの問題となる表示例 、P25~P35の違反事例をご確認ください。
■おわりに
要点を押さえつつも、網羅性よりは理解のし易さを優先して、今回は健康食品の広告担当者が押さえるべき情報をまとめてみました。しかし、情報量の多さから、すべてを本記事だけでは網羅することが難しいため、一部割愛しています。詳しくは以下PDFを読んで頂けると幸いです。
本記事を読んだ上で、こちらの留意事項に目を通すことで、理解に躓きやすい部分をカバーできるように意識して執筆しております。
■Tips①広告表現早見表(お茶の場合)
以下表を見ると(狭義の)健康食品は、いわゆる食品に該当するため香り、風味、色味、といったものを表示・広告できるのに対して、「医薬品」は疾病の治療や予防に、「保健機能食品」は国の定めた範囲での健康維持を表示・広告することが可能です。
保健機能食品は消費者庁に許可された範囲で「体脂肪を減らすのを助ける」といったことまで踏み込んで表示・広告が可能です。ただし、あくまで「助ける」という三文字が重要なポイントとなってきます。
といった適正な範囲を超える表現や、事実と著しく相違する、誤解を招く、印象を与える表現は認められません。
■Tips②「体脂肪」関連に絞った広告表現の例
個人的に気になったので保健機能食品の中でも「体脂肪」に係る表示可能な例と機能性、関与成分をまとめてみました。参考までに掲載しておきます。※便宜上「表示可能な例」は正式な表記を一部短縮して記載しています。
■Tips③健康食品と広告の表現規制
健康食品の広告の表現規制に関しては、主に3つの法律が関わっています。
健康食品の表示(広告も含む)の表現規制に関する条項がどこに記載されているのか?参考までに各法律の該当する主な条項を切り出してみました。
■Tips④「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」とは
消費者庁は、健康食品の広告その他の表示において、どのようなものが虚偽誇大表示等として問題となるおそれがあるかを明らかにするため、具体的な表示例や、違反事例等を用いて「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」を取りまとめたものになります。
■Tips⑤効能効果の範囲を超えると厳しい処罰も
健康食品の表示に違反があった際に、罪に問われるのは事業主に限りません。違反した場合は、広告代理店含めて厳しい処罰もありえるでしょう。
景品表示法においては対象者が「事業者」に限られているのに対し、薬機法、健康増進法においては対象者が「何人も」となる点に注意しましょう。違反した場合は、たとえ「知らなくても」処罰の対象になってしまいます。
前例として、広告代理店の従業員が、医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告禁止)として逮捕されたケースもあります。「知らなかった」ということがないように、本記事をきっかけに理解を深めて頂き、消費者が自ら合理的な意思決定が行えるように適正な広告表現を行うことを肝に銘じておきたいです。
■参考文献
■シリーズ記事紹介(広告担当者向け)
「病院」「クリニック」等の広告担当者の方に
「医薬品」「化粧品」「健康食品」等の広告担当者の方に
あらゆる商品やサービスの広告担当者の方に
「健康食品」等の広告担当者の方に