「大丈夫」という言葉は時に残酷
個人的な体験から「大丈夫」という言葉の残酷さを感じた。
新明解国語辞典で「大丈夫」を引いてみると「危険や損失、失敗を招くおそれがない状態」を表す。
だが質問で使われる「大丈夫？」には危険が潜んでいると私は思う。
こだまでしょうか、いいえ「大丈夫」です。知らんけど。
「大丈夫？」って聞くと「大丈夫」って返す。こだまでしょうか。
金子みすゞじゃないけれど、この質疑応答は出来レースというか、答えがほぼ決まっている気がする。知らんけど。
例えば、つらい状況にある人がいるとする。そんな人に「大丈夫？」と声をかけると、相手に心配をかけまいと無理をして「大丈夫」と答える人が多いのではないだろうか。
実際、私もしんどい時に「大丈夫」という答えを強要されたことがあるのだ。
大丈夫の強要
以前、習い事をしていた。ある時、そのサークル内での発表会があった。しかし、私は発表会を欠席しようと思っていた。
その頃のわたしははパワハラを受け、意味のない残業を課せられていて身も心もボロボロだったのだ。
しかし、サークルの新人の年配女性が「会場がわからなくて一人でたどり着けるか不安だわあ」と言い出した。
他のメンバーは準備があり、早めに会場入りする予定。
つまり、私しか彼女を案内する人間がいない。しかたがないので辛い心と身体を引きずって参加した。
慣れない彼女に逐一説明したり、準備をしたりと、本当にボロボロだった私は、発表会後、打ち上げ会場で大泣きをして倒れた。
その後「お騒がせしました」と謝ると、会場に案内した新人女性はこういったのだ。
「私が、案内してっていったから無理されたんですよね？ごめんなさい…。」
「大丈夫ですか？」
そこで
「はいそうですよ、あなたのせいです。」
「他にもいろいろ面倒をかけられてしんどかったです。」
と、言えるだろうか？
私は作り笑顔で「大丈夫です。あなたのせいじゃありませんから」と、言うほかなかった。
だって、彼女の言葉には「私のせいじゃないですよね？」と言う意味が込められていたから。
「大丈夫（だよね）？」の残酷さ
私が聞かれて辛い「大丈夫？」は、相手自身が安心したくて使っている時で、それが非常に多い。
こちらがしんどい状態の時、相手が「大丈夫？」と言われ「大丈夫」と答えるとそこで会話は終了。
「大丈夫っていってるし、私には責任無いよね。」
「一応、気を使ったといたからいいだろ。」
自己満足と安心感のためだけに聞いてくる「大丈夫（だよね）？」は時に残酷だ。
そして、優しい人ほど「大丈夫」を使ってしまうのかもしれない。（私は優しくなんてない。ただの小心者だが）
そんなわけで私は、「大丈夫？」に代わる言葉を探している。
相手が無理をしないで、素直に「しんどい」と答えられる言葉を。