HEARTLAND 〜 何をみても何かを思い出す #1
Heart Beatがリリースされて40年が経った。
小さなカサノバ
ひとりで そっと起きあがって
彼女の夢を いつまでも
ながめていたあと
訳もなく にじんでくる
涙をぬぐい
車のエンジン・キーに ゆっくり
手をのばしたのさ
# Heart Beat
# 佐野元春with THE HEARTLAND
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はじめて彼女の姿をみかけたのは20年前、
共同住宅の吹き抜けがある共有通路だった。
彼女は赤ん坊を抱いて泣いていた。
そのとき彼女にはもうひとつの新しい命が宿っていた。
一緒に食事をすることになるのは自然な流れなのだろう、
家族同士の付き合いはハートランドの乾杯で始まった。
同じ頃に家庭をもち、同じ場所に住み、
同じ時期に新しい命を授かり育てるなかで
お互いに励ましあう存在となり、彼女と妻は戦友になった。
# HEARTLAND # baccarat # harcourt
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地方の女子高に通っていた彼女は
卒業と同時に最高学府に入学し、学内の彼と恋におちた。
学生をしながら子供を産んだ彼女は
卒業と同時に家庭に入り、その彼と幼すぎる息子との新しい生活がはじまった。
"天から授かった才能"という言葉がとても似合っていた彼女。
彼女は子育てをしながら
外の大きな世界を夢見てマスターになった。
彼女は他の人より少しだけ遅れたけど
社会人として立派なデビューを果たした。
多様性がある世界を育むために、
自分の人生をなぞるかのように、
そんな女性の道標になることを目指して。
彼が家族が、そして周囲にいる誰もが
彼女はまぎれもなく生まれついての
スーパー・ナチュラル・ウーマン
# スーパー・ナチュラル・ウーマン
# 佐野元春 & THE COYOTE BAND
だと思っていた...
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彼女と再会したとき、彼女は他の世界に旅立っていた。
あのとき抱かれてた赤ん坊は大人になり、彼女のそばにいた。
彼女にお別れを伝える少し前に、妻あてにメッセージが入った。
「いつか彼に伝えて欲しい、と頼まれている」と。
送り主は共通の戦友であり、隣の列に並んでいた女性だった。
“ 彼女が本当に見たかった夢は、
自分のありのままの姿を彼に受け止めてもらうこと。“
# 小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド
つづく